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『介護って難しいと思ってたけど実際やってみたらめちゃくちゃやりがいのある仕事だった』

介護を受ける人の人生や価値観は様々。だから、誰にとっても「絶対的にいい介護」など存在しない。
介護職もしかり。「絶対的にいい介護職」の定義を定めるのは非常に難しい。社員それぞれの欠点も含め、その特性を活かすのが、介護現場のマネジメントに求められる姿勢。

今回読んだ本は『介護って難しいと思ってたけど実際やってみたらめちゃくちゃやりがいのある仕事だった』(人生のかけらプロジェクト実行委員会)
https://3eee.co.jp/pj/

読書のきっかけ

社長から、「社員に薦めようかと考えているのだけど、読んで意見を聞かせてほしい」と依頼された。

何について書いてある本?

利用者に対する情熱やまっすぐな志は誰にも負けないものの、技術知識が追いつかず、葛藤する若手介護職員の成長を描いた小説。
心身機能の向上だけでなく、高齢者の「人生のかけら」を拾い集める新規プロジェクトに、技術知識偏重の年下先輩社員ととも参画することになった主人公。二人が先輩や上司に導かれ、考えの相違、葛藤を乗り越えて、利用者の「人生のかけら」とともに介護の本質を拾い集めながら成長していく。

ハイライト

年齢も性別も身体機能もそれぞれ違うけど、でも、みなさん平等な存在。平等に大切な利用者様たちなの。でもあなたがやっていることは綿貫さんのため”だけ”にしかなっていない。それは、あなたの独りよがりでしかない。(介護主任が主人公の若手介護職にかけたことば)

介護リーダーやマネージャーが、個別性の高いことをしようとする介護職に対し言いがちな言葉。情熱があっても経験の浅い介護職員は、この言葉を受け、自分が介護職になったときの想いが非現実的で甘いものだったと知ることになる。そして、だんだんと作業としての介護をこなす介護職員へと変わっていく。
では、このように声をかけるリーダーが悪いのかと言えば、それは違う。リーダーも先輩から同じように言われて適応してきたのだ。つまりこの言葉は事業所、法人の風土から生まれている。
事業所の価値観が浸透していなければ、「介護職員同士お互いに負担をかけない」「余計なことをしない」という風土に収束するのが一般的。情熱的な職員が安心してその能力を発揮させるには、マネジメントによる後ろ盾が必要だ。
本書ではこのあと、技術知識を重視したデイサービスでは不十分だと感じた経営者たちが「人生のかけら」プロジェクトを企画し、組織ぐるみで風土の刷新を図っていく。


利用者の意志をしっかりと尊重したうえで自立を促すことこそが、本来あるべき介護の姿なのだ。

「利用者本位」は、すべての介護サービス事業者が順守すべき介護保険制度の基本理念である。
しかし、他の介護事業者との差別化を図るため、各事業所が「うちの介護は~」という提供側の特徴を前面に打ち出すことで、利用者本位の原則が後回しになってしまうケースがある。
特に自立支援という言葉は、その傾向が顕著だ。
「なんでも自分でできるようになる」「ADLの向上」「リハビリによる身体機能の改善」は客観的な評価がしやすく、わかりやすい。よって”本人以外”の介護専門職や利用者家族への受けがいい。
しかし、事業者のいう「自立支援」が本人の意思に基づいて行われているのか、つまり本人の望む生き方に寄り添っているのかという点は見落とされていることがあるので要注意である。
「良い介護」かどうかは、事業者が決めるのではなく、介護を受ける本人が決めることである。利用者主体の原則は忘れないようにしたい。


制限のなかでできることだけやるのは、専門家じゃない。私たちは、利用者様の生きがいをみんなで共有し、利用者様と伴走しながらそれを実現できるスペシャリストでありたい!関わるすべての利用者様には、いい人生だったと思ってもらいたい。今こそみんなで立ち上がろう!

事業所の存在目的を全社員が理解し、じぶんの目標と重ねることができたら、会社にとっても社員にとっても理想的である。
そのために、リーダーは組織の目標を羅針盤(コンパス)とし、社員に発信し続けることが大切だ。
私は自施設の存在目的を定めるために社員との対話を繰り返した。その結果として、「その人が望む生き方を追求できるように支える生活の場」と定義していた。


この本をどう活かす?

本書は、「良い介護に必要なのは技術か情熱か」という問いに対し、主人公たちの体験や葛藤から「両方必要」だと気づき、成長していく物語である。
私はマネジャーの視点でこう読んだ。
対立する意見の社員が協働がうまくいくと1+1が2を超える。
マネジャーの役割は、大方針を伝え続けること、対話が成立するようにファシリテートすること、成長のための機会を与えることである。
一般的なマネジメントの成功物語では、派手なリーダーシップや決め手となるキラーフレーズが注目されがちだが、決して目立つことのない地味で根気強いかかわりが最も重要だと認識した。

こういう人におすすめ

私はマネジメントの視点で読んだが、本書のメインターゲットはこれから就職を考える高校~大学生、そして入社3年未満の介護職員だろう。
学生であれば介護の仕事の魅力を感じるだろうし、若手介護職員であれば、入社当初の想いを思い出すきっかけになる作品だと思う。


めでたしめでたし

立崎直樹

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