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『幸せに満たされる練習』 思いやりを深める

著者は浄土宗光琳寺の副住職、井上広法(いのうえこうぼう)さんです。

住職なのですが、佛教大学で浄土学を先行した後、別の大学で臨床心理学も専攻されたというとても勉強熱心なお坊さんです。


幸せは自分で作れる

仏教の教え、心理学そして科学の共通の結論は「幸せは自分でつくれる」

だから「幸せになる練習」をすれば、誰でも幸せを感じられるようになる、というのが本書のメッセージです。


僕がよく言っている「しあわせであるための介護」にも通じているなぁと思い、嬉しくなりました。


本では、幸せを作るステップとして、簡単な順に5つの練習を紹介しています。

1・心を「今」ここに寄せる

2・「ありのまま」を見る

3・「思いやり」を深める

4・「自分らしさ」を生かす

5・「感謝」を育てる


思いやりで自分の心を満たす

今回の記事では、3「思いやり」を深める を取り上げます。

互いを思いやり、優しさや感謝が交わされるとき、心のつながりがより深まり、ホルモンの分泌により幸福感に満たされることが科学的にもわかっています。

相手からの優しさを受け取ったとき、相手からの思いやりを感じたときに、幸せを感じた経験は誰しもあると思います。

さらに、与えられたときだけでなく、自分が相手を思いやったり、相手に感謝を送ったりしたときにも、幸せを感じますよね?

本にはこう書いてあります。

仏教や心理学から見れば、人にやさしくされるよりも、相手にやさしさを差し出すほうが、幸せを得られる

相手や周囲の人に関心を向け、相手がどんな気持ちでいるのか、何を望んでいるのかを察知する力=共感力を高めて、相手にやさしさを差し出すことで、相手も幸せ、自分も幸せという幸せのループができると書いてあります。

相手の幸せを願ったり、苦悩を取り除けないかと思いを寄せたりして、さらにそれを行動として示すことで、自分の心も幸せで満たされるそうです。


思いを寄せることは、目の前にその人がいなくてもできますが、行動を伴うとなると、やはり目の前にその人がいた方がやりやすくなります。

その点、介護のしごとは、いつも目の前に共感を寄せる相手がいる上に、直接の行動によって、相手へ思いやりや感謝を届けることができるので、幸せを感じやすいしごとといえます。

相手のお宅に訪問するとき、これからケアを始めるとき、「さぁ、今日も幸せのループをつくるぞ」と思ってみるのもいいですね。

ただし、見返りは期待しないこと。

自分はやさしさを送ったのに、相手に感謝されなかった。これでは幸せを感じることはできません。幸せは相手から与えられたときに得られるのではなく、自らが与えたときにすでに感じられるものなのです。

この感覚を掴むために、”練習”が必要なんですね。この章では、相手に共感する練習が紹介されています。


練習:自分にとって大切な人を思い浮かべ、その人の気持ちや現状に共感します。相手の表情や存在をリアルに感じましょう。(中略)最後に、「あの人」に対する思いと愛情を感じましょう。

もっと詳しく知りたい方は、ぜひ本を手にとってください。


自利利他

この章では、もう一つ重要な概念が紹介されています。仏教でいう自利利他の精神です。

自利とは、自らの修行により得た利益(りやく)を自分のものとして受け取ることです。利他とは、自己の利益だけにとどめず、他の人々の救済にも利益を与え尽くすことです。この自利と利他を完全に両立させることが、仏教では理想とされています。まず、自分自身にしっかりと慈悲の心をもたらしてから、他者への慈悲を表現できるという意味でもあります。

特に解説はいらないと思いますが、他人を思いやる前に、まず自分を思いやりましょう。ということです。


介護や医療のしごとをしている人の中には、この順番が逆になっている人が多い気がします。自分のことを大切にできない人が、本当の意味で相手を大切にすることはできません。


たとえば時間がなくてご飯を食べられずすごくお腹がすいているときに、自分よりもっとお腹をすかせている人から差し出されたパンは食べられません。「まず、あなたが食べてください」となりますよね。

それでも無理に勧められたとして、そのとき食べたパンは美味しいでしょうか。幸せを感じられるでしょうか。もちろん感謝の気持ちは持つでしょうが、それ以上に相手に対する罪悪感を抱えることになります。これでは心が満たされません。


まずは自分の心を満たしましょう。自分をおもいやり、やさしくしましょう。


その練習として、本では「一人3役の議論」が紹介されています。


自分の抱えている問題に対して、①厳しく批判する自分 ②批判される自分(言い訳をする自分)で議論をします。

最後に③慈悲の自分が登場して、①の自分②の自分に対し「両者の言い分はわかったから、まあ落ち着きなさい」と両者に優しく諭していきます。③の自分こそ、自分の中にある「思いやり」です。この練習によって自分の中にも思いやりが”ある”ことを実感できます。


今回は幸せになる練習より、「思いやり」について紹介しました。


人は相手を思いやることで自分の心を満たすことができる。介護のしごとは、相手への思いやりを届ける機会が多く、幸せを感じる機会が多い職業である。

自分の心が満たされていないときには、相手に慈悲を送ることはできない。相手に思いやりをとどける前に、自分を思いやり大切にしよう。


幸せに満たされる練習によって、幸せな介護職が増えたら、幸せなお年寄りが増えます。

まずはこの記事を読んでくれたあなたが、しあわせでありますように。


ありがとうございました。


立崎直樹



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