どんなに信じたって裏切られることはない
主砲 VS 守護神
9回裏 2点差リードながらも1アウト満塁のピンチ。前の打席でホームランを放っているヨバーンがゆっくりとバットのグリップを確かめながら、バッターボックスに向かいます。
同時に3塁側ベンチからは、監督が足早に出てきました。審判に投手の交代を告げたようです。
もちろんマウンドに上がったのは、チームの絶対的守護神フーゲン。今シーズンは24セーブ、防御率1・08と抜群の安定感を誇っています。
主審の「プレイ!」の声が、球場内に響き渡り、フーゲンがセットポジションから1球目を投じます。
次の瞬間、観客のいないレフトスタンドのプラスチックのシートからゴン!と鈍い音が響きました。
ボールの音が響いてから0.5秒。1塁側のベンチから歓声と共に選手が飛び出してきました。
サヨナラ逆転満塁ホームラン!!
ファンの感想
勝利チームのファン
「さすがヨバーン。彼ならあの場面で試合を決めてくれると信じていたよ!」
敗戦チームのファン
「フーゲンなら必ず抑えてくれると信じてたのに…裏切られた。」
信じてたんじゃない、〇〇してたんだ
私たちは、「人を信じることは難しい」と哲学めいたことを言うわりに、意外と気軽に「信じてた」を使っています。
そして、けっこう頻繁に「信じてたのに裏切られ」ます。
裏切られる経験を重ねると、人を信じることが難しくなります。また裏切られるんじゃないかと思うから。
先ほどの野球ファンはが信じていたのは何だったのでしょう。
・ホームランを打つと信じている
・ビシッと抑えると信じている
共に、自分(ファン)が望む結果を信じています。「人」を信じているのではなく、「結果」や「行動」を信じているわけです。
どんなに信じようとも、結果や相手の行動は思い通りにはなりません。
私たちは、結果や行動を”信じている”のではなく、”期待している”のです。
それなのに、「信じてた」とか「裏切られた」とか感じてしまう。
「信じる」と「期待する」は似て非なるもの。はっきりと区別しよう
神様を信じてる?
神様、仏様など、見えないものを信じている場合はどうでしょう。
・ホームランを打てたのは、神様のおかげ
・打たれたのは、成長するために神様が与えてくださった試練
信じている人は、このように考えます。
決して、
・神様を信じてたのに、打たれるなんて!神様に裏切られた!
とは言わないはずです。
神様は「いつでも私のためにはからってくださる」と”信じている”人は、望まない結果や他人の行動によって、神様に”裏切られた”と感じることはないのです。
ただし、お正月だけ神社に行って、五円玉ひとつで、たくさんのお願い事をする人の中には神様に裏切られたと思う人もいるかもしれません。
なぜなら、
神様なら、ピッチャーに打たれない球を投げさせてくれる(もしくはバッターに打たせないような妖気を送ってくれる⁉︎)と”期待している”から。
この人は、神様を”信じている”のではなく、神様の見えざる力に”期待している”のです。
信じている人の態度
選手のことを”信じている”人は、のぞみ通りの結果が出なかったときに、どんな態度を示すでしょう。
・ヨバーンでも打てなかったのなら仕方がない。今回はピッチャーが一枚上だった。
・フーゲンが打たれるなら、誰が投げても結果は同じだったはず。そんな時もあるさ。
ただし、この場合の”信じている”も厳密には、過去の実績から選手を”信頼している”わけで、もし負けが続いて信頼度が落ちた場合には、もう信じられないとなる人が大半です。だから、神様を信じる場合とは意味が異なります。
信じても裏切られない
私たちの日常でも「上司・同僚・部下を信じていたのに裏切られた。」と感じることは多々あります。
これも多くの場合は、”期待してた”けど期待通りに相手が動かなかった、結果が出なかった場合に発生する感情です。
言い換えると
「相手が自分の思い通りに動いてくれなかったからムカツク〜」と同じ。
「裏切られた」と言えば自分は被害者になり、周りから優しくしてもらえます。
一方、「相手が自分の思い通りにしないからムカツク」って言うと、ものすごく印象が悪いです。
でも、本当はこの二つは全く同じ意味。
”信じる”とは、相手に何かを期待するのではなく、自分が勝手に信じる行為。
(信じるか信じないかはあなた次第です)ってことで一人で完結します。
相手の行動や結果は関係ないので、誰かに裏切られることもありません。
”期待する”は、相手の行動や結果に依存します。自分ではコントロールできないことに対して、自分の感情を揺さぶられることもあります。期待を裏切られることも頻繁にあります。
人に対する期待は裏切られることもある。
人を信じると、自分の心に平安が訪れる。
あなたが僕の期待している通りに行動しなくても、僕にとってあなたは大切な存在なんだと信じているよ。
こんなふうに思える人が周りにいたら、幸せだな。
立崎直樹
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