議事録を見直したら、社員の自主性が上がった
貴重なミーティング
シフト勤務が中心の介護事業所では、全員が揃ってミーティングする機会があまりありません。特に入所施設では24時間常に誰かが”仕事中”、だから全員が一堂に会することは皆無です。
シフトの組み合わせによっては、ミーティングどころか、しばらく顔を見ない人もいます。
ちょっとしたことなら、仕事中にスタッフ同志、直接顔を合わせてコミュニケーションをとることで、問題を解決できますが、全体に関わるようなケアの見直しや業務改善は、なかなか難しい。
個人の独断で決められないことや、みんなで検討したいことも先延ばしになりがち。
それらの課題や相談事項を話し合い、より良いケア、よりよい仕事にするための時間が会議・ミーティングです。
実は私も以前スタッフの減少に伴って仕事を見直した際に、ミーティングを極限まで減らしたところ、さらに退職者が増えてしまったという苦い経験をしました。
その時のことは、いつか書きましょう。
今日お伝えするのは、議事録について。
介護医療現場における議事録の目的
あなたの職場では、ミーティングをした際に、議事録を作成していますか?
何のための議事録ですか?
議事録は会議の主旨によって、いくつかの目的に分かれます。
①証拠、記録として
②会議参加者が振り返るため
③会議に参加できなかった関係者へ伝えるため
一般的には、議事録の目的は①②になることが多いでしょう。
介護医療現場では、関係者であってもシフトの都合などの理由で、会議に出たくても(出てほしくても)出られない人がいるため、③の目的が重要になります。
また、リーダーミーティング、〇〇長会議など、リーダーが部門を代表してミーティングに参加し、その結果をチームへ報告、連絡するという場合もあります。
〈目的①②〉は会議に参加した人が理解できれば十分なのに対して、〈目的③〉は会議に参加できなかった関係者が、内容を正しく理解して、次の行動を起こすための議事録です。
したがって、介護事業所における議事録の役割は一般企業に比べて重要度が高いといえます。
しかし、議事録を軽視している人が意外とたくさんいます。少なくともリーダーには、議事録の目的と重要性を理解してほしいと思います。
意味のない会議に参加して、ストレスを感じた経験は誰にでもあると思います。
しかし、会議でどんなに良い議論ができたとしても、その内容が必要な人に正しく伝わらず、行動に結びつかないとしたら、残念ながらその会議も意味のないものになってしまします。
マネジメントの役割は、メンバーに対し相手が理解できるまで丁寧に説明し、チームの方針に沿った行動を促すことです。会議の内容を伝え、行動を促す手段としての議事録はマネジメントにおいて大きな役割を果たします。
議事録は会議の生産性を上げる
基本的な議事録の書き方については、検索するといくらでも出てきます。細かいことは、それぞれ調べて学んでください。
・5W1Hに沿って書く
・結論を明確にする
・懸案事項を期限と担当者も含めて明確に書く
これらのルールに則った議事録作成を意識した会議では、会議そのものの生産性が上がります。
ただ皆んなで長時間おしゃべりをして、結局何も決まらないという会議に、あなたも参加したことありませんか?
おしゃべり会議では、結論や懸案事項がはっきりしない。もしくは、参加者によって結論だと認識するポイントが異なり、それぞれが違う結論を持ち帰るという現象がしばしば発生します。
議事録作成を意識して、ファシリテーター(進行役)や議事録作成担当者が、会議の終わりに、「今回の結論は○○で、懸案事項は⬜︎⬜︎ですね」と全体に確認することで、参加者全員の認識が統一されます。
議事録に残すためには、結論と懸案事項を意識して議論を進めることになるため、結果的におしゃべり会議から脱却することができます。
おしゃべりも大切
ここまで読んで、「たまには愚痴をこぼすことも大切です!!」って思った人もいることでしょう。
僕も同感です。
愚痴とは言わないまでも、スタッフ同士が心を開いておしゃべりするって、とっても大事です。
おしゃべりによって、仲間との信頼関係を築いたり、自分の心を軽くしたりできるため、仕事へのモチベーションが回復します。
ただし、おしゃべりと会議は目的が違うので、その辺は整理した方がいいと思います。今回の集まりの目的が、おしゃべりなのか何かを決めるための会議なのかは、召集の段階ではっきりしておくことをお勧めします。
今回の記事でテーマにしているのはもちろん、「何かを決めるための会議」の議事録です。
さて、そろそれろ本題に戻りましょう。
議事録を書いてみよう
今回取り扱っているのは、会議に参加できなかった関係者も、内容を正しく理解して、次の行動を起こすための議事録です。
たとえば、こんな議事録があったとします。
「入室する際は、ノックを3回する。全員に周知し即日開始」
もしあなたがこの会議を欠席し、後でこの議事録を読んだ時、何を感じますか?
・入室の時は3回ノックするルールを作ったんだなぁ
・みんなにも3回ノックだよって伝えよう
では、なぜノック3回になったのでしょう。
議事録だけでは理解できないので、想像するしかありません。
・ノック3回はスタッフであるという合図!?
・2回はトイレの時のノックだから、3回がマナー!?
実際の会議では、こんな話し合いがありました。
・先日、新人介護職員のAさんが入居者Bさんの部屋に入った際、大声を出され部屋から追い出された。
・そういえばAさんは、Cさんの部屋でも同じようなことがあった。
・後からBさんに聞いたところ、急に部屋に人が入ってきたのでびっくりしたと話していた。
・Cさんは、「自分が着替えをしている時に、コンコンってノックが聞こえたかと思ったら、すぐに扉が開いてAさんが入ってきたから、”出て行って”と言った」と。
・BさんもCさんも、人が部屋に入ってくるという心の準備ができないうちに、Aさんが入ってきたから驚いたようだ。
・ケアを受け入れてもらうには、「出会いの準備」が大切と、『ユマニチュード入門』に書いてあった。
・私たちも出会いの準備を意識しよう。出会いの準備をしましょうと呼びかけだけでは習慣にならないので、慌ただしい時でも確実に実践できる行動ルールを作ろう。
・ゆっくり大きめに3回ノックして、返事があるなど中にいる人の受け入れる準備ができたタイミングを見計らってから、入室することにしよう。全員に周知して今日から早速開始。
あなたならどのように議事録にまとめますか?
話し言葉を全て文字起こしするのは、時間も手間もかかりすぎるので、要旨を簡潔にまとめてみてください。(時間があれば、実際にやってみてください。この記事を読む効果が4倍アップします!)
どうでしょう?
普段、慣れていない方にとっては、意外と頭を使いますよね?
難しいと感じた方もいると思います。
この議論で一番大切なことは、「出会いの準備の間をとること」です。
そのための手段がノック3回なのです。
<議事録の例>
結論:ケアを受け入れてもらうためには、入居者が私たちが入室することを受け入れる心の準備時間が必要。ケアのための訪問時には、ゆっくり大きく3回ノックして返事を待ってから入室する。
議事内容:入居者が職員の入室を拒否するという課題について検討した。
拒否した人に聞いたところ、「急に職員が入ってきたことに驚いた」と話していた。『ユマニチュード入門』にある”出会いの準備”が不足していたと推察する。
出会いの準備とは、私たちとの出会い(ケア)を受け入れるために、入居者が心の準備をする時間。
出会いの準備を習慣化できるように、「3回ノックしてから入室する」ことを全員のルールとして即日開始する。
懸案事項:出会いの準備を実践することで、ケアの受け入れが変化したか1ヶ月後にリーダーが検証する。
議事録なのに、会議で話してないこと書いてる!とツッコミました?
会議の参加者は「出会いの準備」という言葉に対する共通認識を持っていたので、会議中にはその定義を確認しませんでしたが、参加しなかった職員の中には、その意味がわからない人もいると想定して、議事録には「出会いの準備とは〜」という一行を付け加え、より正確に理解できるようにしました。
繰り返しになりますが、介護業所内の議事録で最も大切な目的は、正確な言質ではなく、会議に参加できなかった関係者も、内容を正しく理解して、次の行動を起こすことです。
議事録の添削
リーダーや管理者になると、誰かが書いた議事録をチェックすることが多いかもしれません。
チェックする際の視点も、会議に参加できなかった関係者が、内容を正しく理解して、次の行動を起こせるかです。
文章を書くのが苦手なのに、頑張って書いてくれた議事録に、手を入れることをためらう気持ちは痛いほど分かります。
僕だって、できることなら「ありがとう」だけ伝えて、何も手を加えずに返したい。
しかし、議事録の添削も立派な人材育成の機会です。粗探しではなく、スタッフの成長を心から願って丁寧に添削します。
ただし自分自身で満足できるレベルの議事録を作成できるようになるまでは、自ら議事録作成を買ってでることをお勧めします。
議事録作成は一番の若手が担当する雑用ではなく、ファシリテーター同様に重要な役割なのです。
なぜなら、議事録は会議の成果のアウトプットだから。
議事録の書き方によって、その後のチームの行動、そして成果は大きく変わりました。だから、僕は意味のある会議かどうかは議事録の出来しだいというぐらいの気構えで、読んだ人が理解しやすい議事録作成・添削を目指しています。
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立崎直樹
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