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介護保険法の「目的」を知っていますか?

介護保険法を読んだことがありますか?

私も、報酬にかかわる部分や人員配置基準に関しては調べたことがあっても、総則を読んだのはこの事業にかかわるようになってから数年後のことでした。

今回は、意外と読まれていない介護保険法第一章”総則”を分かりやすく嚙み砕きながら読んでいきます。法律の難しい文章は頭に入らないという方にも理解してもらえると思います。


介護保険法 第一章 総則

目的

第一条 この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。

ほとんどの法律の第一章第一条ではその法律の「目的」を明示しています。要するに、この法律は何のために存在するかを最初に定義するわけです。

では、介護保険法は何のためにあるのでしょう。

まず対象が定義されています。

”加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり(中略)~者等について”

「要介護状態」だけなら、赤ちゃんも、障がい児者も含まれるかもしれません。しかし介護保険法の対象となるのは、加齢に伴って要介護状態になった人です。

☆日本語には「等」という素晴らしい言葉があります。この一文字を付けることによって、その範囲を拡大解釈できるようにしてあります。日常の仕事でも「等」は”あいまいさ”を出す便利な用語として重宝されています。

尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう

出ました、尊厳!このnoteでも何度か触れていますが、わざわざ尊厳の保持を謳っているところがポイントです。私たちは日常生活していて、自信の尊厳が脅かされる思いをすることはほぼありません。しかし、わざわざ法律の条文に書くということは、要介護状態の人の尊厳は傷つけられやすいという裏返しであるように感じます。個人的には、わざわざ法律に明記しなくても誰もが当たり前に尊厳を保持されている状態になれば理想だと考えています。

そして後半では、「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう」とあります。

ここが介護保険法の目的の中でも肝となる部分です。

要介護状態にある人をいたわりましょうでもなければ、みんなで手助けして困っている人を支えましょうでもありません。あくまで本人の持っている能力を活用して、なるべく自立した日常生活を営めるようにすることが目的なのです。

介護保険サービスを提供するすべての事業者とそこで働くすべての人は、この目的に向かったサービスを提供しなければなりません。


私たちは本人の持っている能力を本当にわかっているでしょうか?

本人や家族に言われるがまま、または介護職員のやさしさによって、できることまで手助けして持っている力を発揮できないようにしていませんか?

介護サービスの目標の先には自立した日常生活を描けていますか?

その人にとっての自立した日常生活とは、具体的にどのような生活でしょうか?


以前に比べて「手厚い介護」「隅々まで行き届いたサービス」よりも「自立支援」を標榜する事業所や施設が増えてきました。しかし、その実態はどうでしょう?

いま一度介護保険法の目的に立ち返り、法律にのっとったサービスを提供できるよう見直してみるのもいいかもしれません。


立崎直樹




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