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「結婚式で流す映像、作ってくれない?」

仕事か趣味に関わらず映像制作をする人なら
人生で必ず1度は遭遇するのがこのフレーズ。

「結婚式で流す映像、作ってくれない?」

いわゆるブライダルビデオですね。
映像制作が身近になり、結婚式に映像を使うのは当たり前の時代。まだ作ったことがない人も、映像を作れる人には、いつか必ず作る機会がやってきます。自分はブライダルビデオづくりが本業ではないのにも関わらず、これまでに100本以上の作品を作る機会に恵まれました。

せっかく頼んでくれたのだから、できる限り良い作品を作ってあげたいですよね。
良い映像ができれば、新郎新婦に喜んでもらえます。そうすれば、自分自身も絶対に嬉しくなること間違いなしなので、どうしたらより良いブライダルビデオが作れるのか、考え方のポイントを整理してみたいと思います。

1.お祝いの気持ちを持つ。


心からお祝いしたい、喜ばせたい、その気持ちが大前提**。

それは、すべての原動力です。

僕にとって初めてのブライダルビデオは大学時代、兄に向けて作った映像でした。
身内なので当然、お祝いの気持ちを持って作れましたが、社会人になり映像制作会社に勤めると自動的にプロと思われてしまい身内を飛び越えて依頼が急増します。

正直、気が進まない依頼も最初はたくさんありました。友人とはいえ、中学の卒業ぶりに連絡がきて、そもそも結婚式に呼ばれるような間柄じゃないのに突然依頼されるわけだから困るのも当然です。「プロだから簡単でしょ?安く作ってよ」みたいに言われてしまい返答に困ってしまうことも。

友人の友人だったり、色々な繋がりの先にいる面識のない方など、お祝いの気持ちはそもそも持ちようがない無関係の人からの依頼もたくさんありました。

お祝いの気持ちがないまま作ってしまうと、中身が薄っぺらく表面的なものづくりになってしまうので、心に残る良い作品には決してならないはず。

もちろん関係性上、断れない依頼もあるとは思います。そんな時は、誰のために作るのか目的意識をはっきりさせましょう。

新郎新婦は友人ではないけど、依頼をしてきた人とは仲良しであれば、まずはその人に喜んでもらうことを目的とするもよいし、実際に新郎新婦にお会いして、
感情移入を試みることもかなり有効
です。

面倒だ、なんで自分が!と、いやいや作り続けるのだけは辞めたほうがいいです。

ちなみに、初めて会った目の前の人に共感できるか、感情移入できるかは、ブライダルビデオに限らず、ドキュメンタリー系の映像制作において大切な姿勢だと思っています。

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2.何をしたら一番喜んでくれるか?

話題になったドラマの名シーンのパロディにしよう、YouTubeの感動作品を真似してみよう、最初からそんな風に安易に考えるのはもったいないことです。

同じバックグラウンドを持つ新郎新婦は存在しません。みんな違って、素敵な人生を歩んでいるわけで、その人だからこその歴史やストーリーがあります。

何をしてあげたら新郎新婦が一番喜ぶのか?を徹底的に考えてみましょう。

これは相手についてよく知っていて、お祝いしたい!という気持ちがないと難しいプロセスでもあります。場合によっては、新郎新婦や周囲の友人にヒアリングを行うことも必要です。あまり難しく考えすぎないことも大事。

例えば、

「麻里子の教室」「響子先生への家族授業」
新婦は教師、毎日いる教室を舞台にしたサプライズを仕掛けたら、驚きが増して喜んでくれるのではないか?
「千恵美のおかげ」
新婦は助産師、取り上げた赤ちゃんが大きくなってお母さんとともに現れたら嬉しいのではないか?
「克己 12年越しの挑戦」
新郎にヒアリングをしてみた結果、なかなか伝えられていなかった剣道を通じた親への感謝があったので、それをカタチにしたらどうか。

といったように、入り口はシンプルでよいのです。

職業は?どんな思い出がある?自分や周囲にとってどんな存在?家族は?故郷は?趣味は?特技は?悩みは?どんな性格?ヒントはたくさんあります。

その人が喜ぶ顔を妄想しながら、アイデアを広げていきましょう。

結果のビジョンを妄想することで、そこに引き寄せられるパワーが生まれるということが脳科学からも証明されていますしね!

ちなみに約10年前、SOUR「日々の音色」という分割画面で展開される素晴らしいMVが公開されましたが、同じことをブライダルビデオでやりたいといったオーダーが増え、実際に僕も真似して何度か作成したことがあります。 確かに面白い表現だし、友人がたくさん出てきたら新郎新婦は驚いて喜んでくれるでしょう。
でも、本当にそれだけで良いのか、ここから生まれる新郎新婦の喜びは本質的なものなのか、一過性のものではないのか、自分に問いかけてほしいのです。
派手な技術や表現の奇抜さだけに走る自己満足に陥らないように気をつけましょう。


3.撮影を楽しむ。

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撮影を楽しみましょう!

喜ぶ顔を妄想しながら出来上がった企画の撮影が楽しくないはずがありません。
逆に楽しさを感じられないのなら、よい企画じゃないのかもしれない。

「うまくいかなかったら、どうしよう」誰しもが思う不安です。でも、安心してください。うまくいかない方が面白いんです。

ドキュメンタリーの場合、誰もが予想しない出来事が起きたほうが、人の心を動かす強い映像になったりします。

筋書き通りの映像だけじゃなく、時に人間らしく、泥臭くてカッコ悪い、でもなんか暖かい、そんな様子は文章だけで考えた想定からは生まれづらいもの。事実は小説より奇なりという言葉もありますよね。感情移入して、かつ楽しみながら撮影できれば、そんな瞬間でもバッチリ撮影できるはず。

僕は撮影中によく笑いがこらえられなかったり泣いたりします。楽しみすぎて終始ニヤニヤしながら撮影していたことがあって「カメラの奥でニヤけている顔がキモい」と言われたこともあります。それだけ楽しんでいたってことです。褒め言葉ですよ。

4.上映を想像しながら編集する。

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(↑2014年、結婚式当日の朝にようやく完成して喜んでいる様子)

膨大な素材、まとまらない編集、完パケDVDは2週間前に送れという会場からの督促、、、不安や焦りが芽生えますよね。僕は残念なことに2週間前に完パケを送れたためしがありません。(全国の会場の皆様、本当に申し訳ありません)

そんな時は、披露宴で上映している様子を想像しながら編集をします。この映像を見て新郎新婦はどんな反応をするだろうか、このシーンで笑うだろうか、泣くだろうか、もしくは無反応かもしれない。。。

考えれば考えるほど、編集も悩むと思いますが、同時にワクワクドキドキもするはず。その気持ちが、編集という最後の砦を乗り越える活力となります。

どんなに良い素材でも、編集次第で最高の作品にも最低の作品にもなります。
撮影が失敗していても、編集で大逆転勝利することだって可能。

実は、編集が映像の本質です。だから、絶対に編集のプロセスをおざなりにしないでください。

ここまできたら結婚式当日は、参列者の誰よりも緊張しています。
それこそ、想いを込めて作った証。新郎新婦以上に緊張しているんじゃないかと思うくらい、僕はいつも心臓バクバクです。 トラブルなく無事に上映が終了し、
喜んでくれた新郎新婦を目の当たりにできたら、「映像制作ってなんて素敵なことだろう!」と帰り道にウキウキすること間違い無しです。スキップしたくなるはず!

5.まとめ

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ブライダルビデオづくりを頼まれたら、

お祝いしたい!という気持ちを持って、何をしたら一番喜んでもらえるかを考えて楽しみながら撮影と編集をする。

シンプルですね。難しい話ではありません。

このプロセスを経て出来上がった映像であれば、技術がなくても、派手な企画じゃなくても、間違いなく、新郎新婦を幸せにできるでしょう。

実は、映像制作をする人ならば、ブライダルビデオを1度は作ってみてほしいと強く思っています。 依頼がないのなら、自ら手を挙げて作ってみてほしい。アドバイザーをしている AOI Pro.ビデオグラファーチームにもいつも言っていることです。その想いの理由は別で書きたいと思います。

素晴らしいブライダルビデオが、世界にもっともっとに増えますように。

友人に向けて作ったブライダルビデオの多くは、YouTubeのチャンネルで公開していますのでこちらもお時間あるときにぜひ見てみてください。

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Takehiro Oishi
映像ディレクター/ ビデオグラファーをしています。
仕事ではドキュメンタリー広告が中心。ライフワークは子どもの成長記録映像やブライダルビデオづくり。

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