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ビデオグラファー奮闘記 #2 『感動するログラインをひとつ見つけた気がする話』

この記事は、人を感動させる映像を作りたいフリーランスのビデオグラファーたちが、共に学び、成長していく様子を綴ったものです。
定期的に配信していますので、ぜひご覧ください!

▼第一回勉強会の様子はこちら!

第一回目では、映像を正しく分析するための基礎として「企画ではなく演出の感動ファクター(感動を起こす要素)を見ること」「細部の演出(木)ではなく、全体の構成(森)を見ること」などを学びました。

今回も若手ビデオグラファーとメンターのモクモクさんによって「感動する映像分析」について様々な議論が行われたようです。

◆Chapter 1◆
主観的な視点を取り入れる

今回の発表は新メンバーのヨモギさんから。

ヨモギさん:僕が分析したのは、KIRIN のどごし〈生〉 のどごし 夢のドリーム 「カンフー」篇のメイキングです。

ツナマヨさん:うわあ、これ最高ですね。泣きました。

ヨモギさん:この作品で感動ファクターだと感じたのは、物語が「監督の主観的な語り」であることです。物語のことをよくログラインと呼ばれていますが、その作り方がすごく画期的なんです。今回のようなドキュメンタリーでタイトルを入れる場合「〜がありました」など起きた事実を客観的に表すのが一般的です。しかし、この作品では監督の主観的な語りを挿入することで物語が紡がれていっているんですよね。第三者の視点がそのまま視聴者の視点とリンクするからこそ感情移入しやすいのだろうと思います。
また、語りがナレーションではなくテキストベースでテンポ良く進むことも、より内容が入ってくる理由の一つだと思いました。

引用:https://youtu.be/7Wq9_84drKk 9:55〜
引用:https://youtu.be/7Wq9_84drKk 5:30〜

モクモクさん:そういえば、「なぜ君は総理大臣になれないのか」などのドキュメンタリー映画を手がける大島新監督も、「作品に出るくらいの気持ちで作品の中に『自分の存在』を出していった方がいい」と言っていたなぁ。主人公を一番近くで見ている人の視点や感情は一番リアルだし、生っぽいからより伝わるんだろうね。

ヨモギさん:確かに、この演出を取り入れることで作品自体の熱量やリアリティが上がる気がしますよね!
僕たちがドキュメンタリー依頼を受ける時、「主人公は決まっているけどログラインが決まっていない場合って意外と多いと思うんです。ログラインを作る力ってビデオグラファーにとって重要な能力だなといつも感じます。撮影しながらも、目の前で起こる出来事に対して、自分自身がどう感じるのか?何に感動するのか?にしっかりと向き合って主観的な視点を作品に取り入れてみたいと思いました!感動を生むログラインの紡ぎ方はもっと色々ありそうなので他にも研究してみます!

◆Chapter 2◆
自分より、誰かのために

ツナマヨさん:作品を見て少し気になったのですが、今回の作品って、「ジャッキー・チェンと共演する」というメインテーマの他に、後輩とのエピソードにも重きを置いた構成になっていますよね。「ジャッキー・チェンと共演する」夢の実現だけに絞っても十分に映像として成立する気がしたのですが、なぜ後輩とのエピソードも構成に入れたんですかね?

▲ヨモギさんの分析

ヨモギさん:僕の仮説ですが、後輩とのエピソードはより視聴者の共感を高める役割をしているのではないかと思っています。「自分の憧れの人に会える」という喜びや感動はもちろん共感できますが、誰もが体験することではないと思います。だから共感レベルとしては薄いんじゃないかなと。

モクモクさん:「自分のために」よりも「誰かのために」という動機の方が共感されやすいんじゃないかな。だから「後輩の夢を叶えるために」という物語は「自分の夢」のための物語より感動できるんだと思う。

身近な誰かが困っていたとか、大好きなあの子のためにとか、自分を育ててくれた家族のためにとか、 そういう身近な人のために行動する時って誰しも強いモチベーションが湧くんじゃない?人間は一人で生きているわけじゃないので、自分自身のために、というエゴはありつつも「身近な誰かの幸せを願う」「自分よりも身近な相手を優先する」気持ちは誰しも持ち得る普遍的な心情な気がするんだよね。「後輩のために」という物語は、心のどこかに隠れていた視聴者のそういう気持ちを呼び起こしてくれたんじゃないかな。

ツナマヨさん:なるほど。誰かのために頑張っている姿の方が感動できるのは自分が視聴者として想像してみてもすごく分かります。それに面識のない誰かよりも、目の前にいる人を相手にする方が圧倒的に頑張れるし共感できますよね。後輩の存在こそ物語全体の感動度合いを大きくしていると腑に落ちました。身近な誰かのためにという想いは感動するログラインの鍵になりそうですね!

モクモクさん:ただ、あまり「感動」をロジックで捉えすぎないようにしたい。取材する過程でロジックだけで出演者と接していたら失礼極まりない。僕たちはあくまでも生身の人間を相手にするわけだし、その人はフィクションではない本物の人生を生きているわけだからね。

ヨモギさん:あくまでもロジックは構成を練ったり演出を考えたりする事前作業や編集中に留めたいと思います。出演者には誠意を持って、人と人との関係の中で関わっていきたいですよね!

ヨモギさん:それと取材の重要性も感じました。「後輩と一緒に出演したい」という主人公の想いは、メインテーマから派生したものなので取材しなければ分からなかったと思うんです。ディレクターが後輩への想いを見つけられたことで、この作品の質が変わったわけですから。

モクモクさん:撮影過程のインタビューで見つけるパターンもあるけれど、当選者をセレクトする過程で既に後輩への想いを見つけていたからこそ、この方が選ばれているパターンな気もする。出演者を決める段階で、どんなヒアリングをするか?はとても大事なんだ。

ヨモギさん:撮影過程だけでなく、事前の取材やヒアリング時から物語を紡ぐ必要があるわけですね!次回の取材、やる気が出てきました!

議論を中心に学びを深めていったメンバーたち。プレゼンの内容や分析の視点もどんどん深くなっているようです。
次回はどんな議論が生まれるでしょうか?

人の心や温かさの本質は時代が変化しても変わりません。
だからこそ、名作は受け継がれ、時代を越えても多くの人の心を動かします。
名作を分析すること、それは成長への近道です。

第3回の記事もお楽しみに!


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