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ビデオグラファー奮闘記 #3 『心の声を引き出す場づくりを研究してみた話』

▼第一回勉強会の様子はこちら!

▼第二回の勉強会はこちら!

第二回目では、感動を生むログラインの紡ぎ方や、そのログラインを生むための参加者の動機の醸成などを学びました。

第三回はどんな勉強会になったのでしょうか?

◆Chapter 1◆
インタビュー「以外」で、心の声を引き出す

ペンギンさん:今回僕が分析したのは、野村ホールディングス My Personal Best|みんなの自己ベストです。

この作品では、年齢も性別もバラバラな参加者が、同じ目標を掲げる仲間たちと共に自己ベスト更新を目指していくという内容なのですが、その中で参加者たちのチームの一体感がとても印象的です。水泳は個人競技なので、きっと「チーム」にしなくても企画として成立したと思います。でも、ただ「自己ベストを更新する」だけではなく、メンバー同士で励まし合う姿や、喜び合う姿があったからこそ、より感動したのかなと。
その一体感を高めるために、意図してチームで過ごす時間を作るなど、丁寧な「場づくり」をしているのだろうなと想像しました。
例えば、本番1ヶ月前に参加者が集まるシーンがあるのですが、仲間の想いを聞き、自分の気持ちをシェアする場をあえて作ることで、「仲間と一緒に達成したい」という気持ちが大きくなったと思います。

引用:https://youtu.be/8v0ubIN5xqo 1:10〜

同じく、全体練習の場を設けたのも同じ理由で、それぞれが練習している姿を初めて見て、「これは一人だけの挑戦じゃないんだ、負けていられない」という感情が芽生えたと思います。
参加者の感情をより最大化させるために、こういった場づくりを意図的に行うことはとても大切だなと思いました。

ツナマヨさん:個人のチャレンジをチームでのチャレンジにすることで彼らの感情をより高めているってことですね。
映像を見て思ったのですが、それぞれの想いってインタビューで語らせてしまいがちですけど、この映像みたいにミーティングの場で仲間たちに向けて語ってもらうことでよりリアルな想いを引き出せている気がするんですよね。これもチームでのチャレンジにした理由の一つなのかなと思ったのですが、どう思いますか?

ヨモギさん:確かに、僕もインタビューで話している映像ってどこか作られたような感覚があって長くは見ていられないです。でもこのミーティングのように、リアルな場を作れば参加者同士が主体的に話してくれて、作られた感じは払拭できますよね。お互いの関係性や会話のリアクションが見えたりと、より映像に入り込めると思いました。この「チームの一体感をつくるための場づくり」は「本音の言葉を引き出すための場づくり」でもあったのかもしれないですね!

▲ペンギンさんはこのカットで泣いたそう。 
引用:https://youtu.be/8v0ubIN5xqo 5:40〜

◆Chapter 2◆
逆算して場づくりを考える

ツナマヨさん:僕が分析した作品も場づくりで注目したいポイントがあったので、発表させてください!
僕が分析したのは土屋鞄『土屋鞄のランドセル Concept Movie』です。

この作品では、一年生になる子どもたちにランドセルが届けられる様子を映しているのですが、子どもたちが喜ぶ自然なリアクションが素晴らしくて、どうやったらこんなに良い反応を引き出せるのだろうと気になり分析してみました。
恐らくこの作品も事前の場づくりの準備が徹底されていて、その結果が子どもたちの自然な反応につながっているのだと思います。

▲何が届いたのかドキドキしている様子
引用:https://youtu.be/1lmimTKl0lU 0:34〜

例えば、
・事前に子どもたちがお気に入りのランドセルを選んでいること
・いつランドセルが届くかは子どもたちには秘密にしていること

などが映像から推測できますが、もし親が選んだランドセルで届く日も事前に知らされていたら、開封前のドキドキした表情や届いた時の喜びはここまでなかったかもしれません。
『自分たちのお気に入りのランドセルが突然届いた』という場を意図的に作ることがこの映像の場合ポイントなんじゃないかと。

この作品の監督は柘植泰人さんですが、カメラマンとディレクター2人?もしくはカメラマン1人しかその空間にいなかったんじゃないかなと思います。(他のスタッフは外で待機)全てのカットが、低い位置(子どもの目の高さ)からのワイドレンズで撮られています。レンズを変えながら意図的に何かを撮ろうとするのではなく、ランドセルが届く前からひたすら観察するように撮影を続けることで、スタッフは空気と化していたんじゃないかなと思います。その方が子どもたちの表情が自然になりやすいはずだと。

こうやって一つずつ場づくりの視点で見ていくと、この子たちの反応は偶発的に生まれたものではなくて、最大限の場づくりの準備の上で生まれているんだなと感じました。

▲ランドセルが届いて嬉しそうな様子
引用:https://youtu.be/1lmimTKl0lU 0:49〜

ヨモギさん:そもそも僕は小学生の時、ランドセルが届いて嬉しかった思い出がないので、僕のような子どももいることを考えると、『ランドセルが届く瞬間を喜んでくれる可能性が高い』出演者のキャスティングから場づくりが始まっているような気がします。きっと、普段からよくリアクションする子や、小学校に上がることをとても楽しみにしている子を中心に選んでいそうですよね。

ツナマヨさん:まさにキャスティングもある意味場づくりですよね。子どもが出演者だと予想外の行動をしたり、気分が変わったり、きっと思うように撮影できないことの方が多いと思うんです。その中で当日の撮影でどういう展開になっても大丈夫なようにしておく事前準備が相当されていたんだろうなと。

撮影前に、よく事前に撮りたいシーンをアクションプランとしてまとめますが、アクションプランを作るだけではなく、どうすればそのシーンを自然に引き起こすことができるのか、キャスティングも声かけも、段取りも全て逆算して場づくりの準備をすることが大切だなと思いました。

▲ランドセルをおばあちゃん家まで見せに行く子も
引用:https://youtu.be/1lmimTKl0lU 1:13〜

ヨモギさん:ドキュメンタリー作品には少なからず場づくりの工夫がされていると思うので分析してテクニックの幅を広げていきたいですね!

ペンギンさん:今度の撮影では、僕も現場演出の段階から丁寧に設計してみたいと思います!

今回も様々な仮説を議論をしながら深めていきました。議論が回を重ねるごとにどんどん盛り上がっていきます!

人の心や温かさの本質は時代が変化しても変わりません。
だからこそ、名作は受け継がれ、時代を越えても多くの人の心を動かします。
名作を分析すること、それは成長への近道です。

第4回の記事もお楽しみに!


▼Happilm公式YouTubeもぜひご覧ください!


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