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H a p p a n o U p d a t e s - No.224

新しいコンテンツが今月一つ、来月一つスタートします。来月開始のエストニアの短編小説集は、去年の後半からプランしてきたもので、エストニア文学センターの協力で翻訳・出版が実現しました。あまり日本語化されていない東欧系の作品を、というアイディアによるものです。
上のタイトル写真はミクロネシアのヤムイモの葉に住む葉っぱの坑夫(leaf miner)の暮らしぶり。

森で、子ジカたちと(1)
ウィリアム・J・ロング著『School of the Woods』より 
Mark Moschell:写真 だいこくかずえ:訳

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子ジカたちが知っておくべきこと I
ウィリアム・ロングの新しいストーリーです。「子ジカたちが知っておくべきこと I、II」「夜の森に鳴き声がひびく I、II、III」の全5回となります。上の写真でわかるように、オジロジカは尻尾の裏側に真っ白な毛が生えています。ロングはこれを、子ジカたちが母親に従うための「白旗」と呼んでいます。追っ手から急いで逃げなければならないときなど、暗い森の中で、この白旗が灯台の明かりのような役目を果たすようです。

ロングはある日、森の中で偶然、太陽の光が降りそそぐ美しい模様を見つけます。その美しさをよく見ようと近づくと、、、地面に当たる光の模様に見えたものは、生まれたばかりの2匹の子ジカでした。(想像するに、子ジカの斑点模様というのは、身を守るためのカモフラージュだったのですね)

予告 メヒス・ヘインサー ​[エストニア] 短編小説集

来月(3月末)から10回にわたって、エストニアの新世代作家として知られるメヒス・ヘインサーの小説を連載します。エストニア文学は日本語にほとんど訳されていないので、作家もあまり知られていません。そもそもエストニアという国自体、日本では未知の国。最近になって「電子国家」として知られるようになりましたが。政治的には旧東欧に入り、地理的には(そして言語的にも)北欧の一部とも言われているようです。

メヒス・ヘインサーの作品は、リアルと幻想が入り交じる「超現実」的な事象を描くことが多いのですが、それはサイエンス・フィクションのように未来への視点や新たな世界観を示すのではなく、人間性への深い問いから発しているように見えます。異常なもの、現実世界から排除される存在に対して、違う角度からの見方を表しているのかもしれません。(下の写真は作家、メヒス・ヘインサー)

メヒス・ヘインサー

今月のピックアップ | Choice of the Month
英語社会で口をつぐむ
チャンネ・リー 
Photo by Simon Pearson (CC BY-NC 2.0)
だいこくかずえ:訳

チャンネ・リー

旧サイトから毎月一つ、作品を選んで紹介しています。チャンネ・リーは韓国系アメリカ人作家。新潮クレスト・ブックスの日系の元軍医を主人公にした『最後の場所で』は、とても良い小説です。葉っぱの坑夫で取り上げたこのエッセイは、アメリカにリー一家が移住してきた頃の、母親の英語社会での悲惨な葛藤の体験を、子どもだったリーが回想する形で書かれています。因みに母親は、韓国の大学を卒業した英語が読める「インテリ」でした。
English version: Mute in an English-Only World by Chang-Rae Lee

□ 最近思ったこと、考えたこと(happano journal)
02.05/21 料理は犯罪、、、刑務所の秘密レシピ
02.19/21 外国人に日本の言葉を説明してわかったこと

シンガポールのフードライター&リサーチャー、Sheere Ngさんの本(写真集)は衝撃でした。30年、40年前の話とはいえ、刑務所内で収監者たちが、究極の工夫をこらして秘密の料理をしていたとは、、、
もう一つのトピックは、「空気をよむ」が英語の表現「read the room」とはちょっと違う、と気づいたことを考察したもの。

トップの写真:leafminer(葉っぱの坑夫)by Scot Nelson (PD)
Web Press 葉っぱの坑夫/エディター大黒和恵/editor@happano.org



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