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新刊 & 12月の半額セール案内

今回は二つのお知らせ『オオカミの生き方』の出版と、年末年始のアマゾンKindleの半額セールについて、それに加えて葉っぱの坑夫のここまでの出版の仕方(方法論)について書いてみようと思います。

まず新刊についてですが、アメリカの作家、ウィリアム・ロングの作品をオンデマンド・ブック(POD)とKindle(& Kobo)で出版します。これは"Mother Nature: A Study of Animal Life and Death" (1923)の中の「The Way of a Wolf」を訳したもので、著者のロングがオオカミを追って原野を旅し、ドキュメントしたストーリー集です。(まもなく販売開始)←発売になりました(2021.1)

ウィリアム・ロングはGPSもSUV車もなかった約100年前に、アメリカの最北東部を徒歩やカヌーで探索し、野生動物を長い期間にわたって観察した人です。野生動物についての著書が20冊近くあり、多くは子どもたち(younger readers)のために書かれたとも言われています。実際、学校の図書館にも所蔵されていたようです。

この作品は、葉っぱの坑夫のサイトで2020 年3月から 10 月まで7回にわたって連載したもので、今回の出版にあたって修正、加筆し、さらに自然写真家の大竹英洋さんの「まえがき」を加えました。大竹さんは、1999年からアメリカ北中部を主なフィールドとして、たくさんの野生動物の写真を撮ってきました。「オオカミに出会いたい」という思いがその出発点だったと聞いています。まえがきには、大竹さん自身のオオカミとの出会いの体験談や、ロングのやってきたことへの評価や考察が語られています。

今のところ、本はアマゾンのみでの販売です。ウェブサイトのコンテンツも変わらずお読みいただけます。

年末のアマゾンのKindle本セールは、今日(12月18日)から来年1月4日まで開かれます。葉っぱの坑夫からは、Kindleになっている全作品で参加、すべて定価の半額で販売します。カテゴリーで「Kindleストア」を選び、「葉っぱの坑夫」で検索すると14冊の本が表示されます。葉っぱの坑夫のKindle本は、定価(税抜)が500円と300円の2種類のみです。この期間は250円(275円)と150円(165円)で販売されます。(この原稿を書いている時点で、『ニューヨーク、アパアト暮らし』のみ半額表示になっていませんが、アマゾンに対処を申請しているので間もなく165円と表示されるはずです)

この中には、大竹英洋さんのPODで2004年に出版した『動物の森 1999 - 2001』のKindle本も含まれています。こちらはノースウッズの森で出会った動物たちを、シャープなフレーミングで綴ったショート・ショート・エッセイ集。(トップのタイトルフォトの右端の本)ちなみにこの本のPOD版はこんな表紙です。*デザイン:Agasuke(大好きな表紙の一つ)

動物の森PODカバー

ここからは葉っぱの坑夫の出版のはじまりを紹介します。パッケージによる本の出版は、ニューヨークの詩人ポール・メナの俳句集『ニューヨーク、アパアト暮らし』が最初でした。サイトで公開されたのも、オンデマンドの本になったのも、この作品が最初。その後、Kindle本になり、デザインを一新した紙の本も出ました。そしてミズーリ州の詩人の月やカラスや水晶をうたった俳句集『スッテプ・イントゥ・スカイ』(こちらはオンデマンド本のみ)が出て、2012年にパラグアイの作家によるスペイン語の俳句集『一枡のなかで踊れば』を出版と、3つの外国語による俳句集が揃ったのです。*ブックデザインは葉っぱの坑夫の本を初期の頃からデザインをしてくれている宮川隆さんの手によるもの。

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葉っぱの坑夫の本は、英語から日本語に訳したものが多いのですが、書き手の出身地を見れば、とてもバラエティに富んでいます。ベトナム、スーダン(南スーダン)、ガーナ、ジャマイカ、そして南米諸国からはブラジル、コロンビア、アルゼンチン、チリなどなど。そういった国々の若手作家の中に、今という時代だからこそのユニークな個性が揃っていました。

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白バック 800X1200

こんな風にして2000年のスタート以来、30冊近いパッケージの本を出版してきました。この中にはカラーのオフセット印刷で作ったアートブックや、インクジェットプリンターによる手製のzineもあります。またスイスのインディペンデント出版社との共同出版もありました。*下の本はNievesとつくったミヤギユカリの絵による『AKAZUKIN』(デザイン:服部一成、2008年)と『rabbit and turtle』(デザイン:有山達也、2005年)。

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葉っぱの坑夫はウェブで公開する作品を、スタート時から出版(本)と考えてきました。パッケージの本を作るようになってからも、その考えは変わりません。葉っぱの坑夫のスタート時にメンバーだったカナダ人のジェフ・ブラウアーに、サイトに作品を掲載することを英語で何と言ったらいい?と聞いたら、「publish」と返されました。そうか、パブリッシュか。メディアが何であれ、公開して発表することは出版なんだと納得したのです。

葉っぱの坑夫の本は、現在はほとんどがアマゾン経由での販売になっています。以前は日本各地のインディペンデントな書店や少し大きめのチェーン書店などで、またときにイギリスやスペインの小さな本屋さんなどにも卸していました。海外の出版社や書店と取引できたのは、インターネットとPayPalがあったからです。国際郵便為替も当初は使っていましたが、民営化後は手数料が銀行並みになり、使いにくいものになってしまいました。

ウェブ・パブリッシャーと言っているくらいなので、葉っぱの坑夫はインターネットありきの活動です。というかインターネットが個人レベルでも使えるようになり、海外との交流で友人もでき、といった状況の中で生まれたものなのです。葉っぱの坑夫はhappano.orgとアドレスがなっているように、非営利活動です。これはシカゴの非営利の詩の出版社スモール・ガーリック・プレスの影響を受けてのこと、主宰者のマレク・ルーゴウスキーさんからは、スタート時にたくさんのことを教わりました。

スモール・ガーリック・プレスは、オンデマンド印刷による少部数の詩の本(チャップブックと彼らは呼んでいました)を出版していました。オンデマンド印刷?それはナニ???という感じでした。葉っぱの坑夫もぜひそれをやりたい、ウェブの作品をパッケージにもしたいと、印刷所を探したところ、京都にオンデマンド印刷を熱心にやっている印刷会社があるのを発見。最初に出版した詩や英語俳句の本など数冊は、すべてそこで制作しました。

糸ごよみ 籠女

*上の画像は、京都の印刷所で作った初期のオンデマンド印刷本。『糸ごよみ』(デザイン:宮川隆、2002年)『籠女』(デザイン:宮川隆、2004年)。オンデマンド印刷の特徴を生かして、表紙を2種類作っていた。当時はモノクロ印刷のみだった。初版発行部数500部。『糸ごよみ』は重版している。どちらもアメリカインディアンを題材にしていて、『糸ごよみ』は詩によるストーリー、『籠女』は童話集。

このつづきは次回「葉っぱの坑夫の本のつくり方」で書きます。


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