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サッカーの勢力図、少し変わった? それとも...(W杯雑感)

W杯カタール大会、決勝トーナメントに入って、ますます盛り上がっているのでしょうか? わたしはほぼ全試合を見ています(Abema)。1日に2〜4試合あるので、早朝、昼食時、夜と2または3回にわけて、なんとか都合をつけながらの観戦です。仕事や日々の雑用その他は、試合の合間を縫ってこなしています。

2010年の南アフリカ大会の時から、2014、2018年とほぼ全試合見てきたのですが、今回はどうしようかと思い、とりあえず、各グループの初戦だけはチームの特徴やコンディションを知るためにも、一通り見て、そのあとは選んで見ようと思っていました。

が、見始めると、やはり次の試合も気になって見てしまうことがつづいています。そしてそれを見ると、 次も見ないわけにいかなくなる。というのも、今回、グループステージのリーグ戦はどこも勝ち点で競っていて、最終試合を見ないことには、どのチームが決勝トーナメントに進めるか予想が難しかったから。

ドイツ、ベルギーといった当然グループリーグを勝ち抜けると思われていた強豪チームが、不安定な試合ぶりで落ちてしまったり、モロッコ、日本などのトーナメントに進めるか未知数だったチームが1位通過したり、サウジアラビアがアルゼンチンに、日本がドイツとスペインに、オーストラリアがデンマークに勝利という予想外の結果、第3戦では勝ち抜けが決まっていたフランスがチュニジアに、ポルトガルが韓国に負ける、など大小のサプライズがありました。

一般にヨーロッパと南米のチームには強豪が多く、ベスト16に残るのはこの2大陸が優勢とされています。アジア、アフリカは少し部が悪い。2010年、2014年、2018年と直近の3大会を見てみると、決勝トーナメントに進んだ16チームの割合は:

2010年 南アフリカ大会
欧州     6 (地域予選通過13ヵ国)
南米     5 (5)
北中米    2 (3)
アジア    2 (4)
アフリカ   1 (6:開催国南アフリカを含む)
オセアニア   0   (1)

2014年 ブラジル大会
欧州     6 (13)
南米     5 (6:開催国ブラジルを含む)
北中米    3 (4)
アジア    0 (4)
アフリカ   2 (5)
オセアニア   0 (0)

2018年 ロシア大会
欧州     10 (14:開催国ロシアを含む)
南米      4 (5)
北中米     1 (3)
アジア     1 (5)
アフリカ    0 (5)
オセアニア   0 (0)

今大会を見てみると、
欧州      8 (13)
南米      2 (4)
北中米     1 (4)
アジア     3 (6:開催国カタールを含む)
アフリカ    2 (5)
オセアニア   0 (0)

と、アジア、アフリカ両方で5と、近年で最高の成績をあげています。南米は2強のブラジル、アルゼンチンのみ通過で、やや意外な結果。南米のエクアドルはアフリカのセネガルに、ウルグアイは韓国に競り負けての敗退でした。それぞれグループステージ最終戦での敗退決定です。

大会の開かれているカタールは、アジア予選が行われる場所でもあり、またアフリカ諸国にとっては(特に北アフリカは)地理的に、心理的に主宰地と近い感じがあるのか。そのような条件が試合結果に影響することがあるのかわかりませんが。

日本人からすると地元開催という感覚はほぼないですが、WikipediaのカタールW杯の英語ページを見ると、「アラブ地域およびイスラム圏で初めての、そして日韓大会以来、アジアで2回目のW杯」と説明がありました。たしかに日本とカタールは、同じAFC(アジアサッカー連盟)の所属になります。

さて、アジア、アフリカの5ヵ国が決勝トーナメントに進みはしましたが、ベスト8に進んだのはモロッコのみでした。モロッコはアラブ地域でイスラム圏。その意味で、地元感覚がより強かったのかもしれません。スペインを破っての初のベスト8入りです。南米は2ヵ国が、ヨーロッパは5ヵ国が同様に先に進んでいます。

ベスト16の試合では、グループE(日本、ドイツ、スペイン、コスタリカ)のみが、グループ1位、2位ともに次に進めませんでした。それ以外のグループは1位通過のチームが、ベスト8入りしています(グループFは1、2位ともに通過)。ということで、グループリーグでのサプライズはあったものの、トーナメントでは結局のところ、ほぼ順当な結果と見ることができるのでしょうか。

グループF(モロッコ、クロアチア、ベルギー、カナダ)は、1位のモロッコ、2位のクロアチア、ともにベスト8入りしています。まずモロッコが1位通過というのが驚きです(前回大会はグループリーグ最下位、その前の4大会は出場なし)。FIFAランキング2位のベルギーがグループ落ちしてしまったのは、ベルギーの調子が良くないせいだと思っていましたが、結果を見ると、厳しいグループだったのかもしれません。

逆に日本の入っていたグループEは、「死のグループ」と言われていましたが、結果だけ見ると、ドイツは2大会連続のグループリーグ落ち、スペインは2大会連続のベスト16落ち、と直近の成績は良いとは言えません。前回大会、勝負どころとなった相手も強豪国ではなく、ドイツは韓国に、スペインはロシアに負けての敗退でした。

今回のモロッコの躍進もそうですが、サッカーにおける勢力図が少し変わってきたのか、という見方もできると思います。ヨーロッパの、あるいは南米の強豪国だけが優位にたてるとは限らないといった。

W杯の特徴として、ひとつは短期決戦ということがあり、これは通常のクラブレベルでのリーグ戦とは大きく違います。また世界最高レベルと言われるUEFAチャンピオンズリーグのような大会も、ホーム&アウェーの試合が基本で、仮に思わぬことが起きて失敗しても、修正が可能です。一定期間を見据えたマネージメントが可能ということです。しかしW杯は、約1ヶ月の間にすべてが決まる一発勝負的な側面が強いので、番狂わせが起きたり、奇跡のような幸運が巡ってくることもしばしばあります。

2002年の日韓大会のとき、W杯の面白さを見つけたわたしは、あるサッカー通の人から「欧州リーグの方がずっと面白いよ」と言われて、よく意味がわかりませんでした。その後、欧州リーグの面白さにも触れて、その違いがわかるようになりました。W杯は突発的なことや地の利など、結果にばらつきが出やすいということでしょうか。それはそれで面白いのですが。

とはいえW杯における強豪国は、ヨーロッパと南米に集中しています。優勝が複数回あるのは、イタリアやブラジル、ドイツ(西ドイツ含む)などですが、そのイタリアは2大会連続で予選落ち、今回は出場していません。ナショナルチームの力量は、強豪国といっても波があるように見えます。

これを書いている時点(12月8日)では、ベスト8の結果は見えてないですが、仮にモロッコがポルトガルに勝利して、ベスト4まで進んだとしても、その躍進が次回以降の大会にそのまま繋がるわけではないのがW杯だと思います。強豪国になった、あるいは強豪国と肩を並べたとまでは言えないということです。

これまでにベスト8、ベスト4に進んだナショナルチームは、アジア、アフリカにもあります。アフリカでは、カメルーン(1990年)、セネガル(2002年)、ガーナ(2010年)がベスト8に進み、今回モロッコが加わりました。そしてアジアでは日韓大会のとき(2002年)、韓国がベスト4になっています。1966年のイングランド大会では、16チーム制ではありましたが、北朝鮮がベスト8になっています。しかしだからと言って、その後、これらの国が安定的にW杯で戦えてきたかといえば、そうではありません。また強豪国になったわけでもありません。

W杯というのはそのようなもの、という風に思っていた方がいいのかもしれません。その時々の状況によって、地理的条件によって、さまざまな変化があり、ときにビックリするようなことも起きて、当のチームやサポーターはそれに一喜一憂するものだ、と。

次回のアメリカ・カナダ・メキシコ共同開催の大会から、W杯の参加国は48ヵ国に増えるそうです(現在は32ヵ国)。アジアの枠組は現在の4.5から8.5ヵ国にまで増えるとか。アフリカも現在の5から9.5になるようで、また0.5だったオセアニアも1.5と必ず出場国がでるという、ちょっと想像のできない大会になりそうです。

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