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八首抄

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#覇王樹社

八首抄 令和6年7月号

八首抄 令和6年7月号

佐田公子選

コンゴにて採掘されし鉱石に含まれていた人間の業藤田直樹

ストリートビューに生家を訪えば更地になりてフェンスに囲まる大野雅子

大谷を見てのち国会シュワシュワと炭酸水の泡の消えゆく奥井満由美

ヒロシマに生まれ平和の申し子の総理を歌おう何と歌おう永田賢之助

知らぬ間に武器売る国の民となる令和六年三月重し田村ふみ子

老いぬれど色濃き唇の客引きに諸行無常の響を聞きたり石谷流花

お昼

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八首抄 令和6年8月号

八首抄 令和6年8月号

青山良子選

命より国が大事と言ふ原理ひまはりの花横向きに咲く臼井良夫

労られかばわれながら晩年の生きる日常わがものならず児玉南海子

もう一度若葉になれるものならばさやけきそよぎつくれるものを北岡礼子

花の色白へと褪せゆくバンマツリ生あるものの道筋として小笠原朝子

リビングの照明LEDに変えてより寿命のかけっこ私と灯り奥井満由美

全世界は腰で出来てゐるといふ思索に陥るぎつくり腰の夜佐田公

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八首抄 令和6年9月号

八首抄 令和6年9月号

井手彩朕子選

遠雷とわれの鼓動が響きあう記憶の底のひとつを揺らし児玉南海子

それぞれの今日に向かえる戦士らを改札ギュッと集めて放つ三上眞知子

わが背丈越えて繁れるプチトマトどうにもかうにも反抗期めく岩本ちずる

ぽっとんとポストに落とし帰り道助詞の間違い一つに気づく藤峰タケ子

今ならば彼の日の夫の呟きにもっと寄り添い共に泣けたに田中昭子

何気なくかけた言葉に「わかってる!」矢が放たれる娘

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八首抄 令和6年4月号

八首抄 令和6年4月号

成田ヱツ子選

図書室で探しておりました 優しい肩だと言われる時を(森崎理加)

この年の平安祈れる元日に揺さぶり揺らす生命体地球(山口美加代)

母の齢共に越えたる姉と吾二人ぼっちになってしまった(児玉南海子)

胃も腸もあるじのわれと同い年粥をすすればうべなひてをり(高田香澄)

熱熱の豚汁鍋を自転車で友持ちくるる冷えしるきタ(田中昭子)あの日から何万回も伸ばす手に触れる手は無く空掴

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八首抄  令和5年6月号

八首抄 令和5年6月号

渡辺 茂子 選
ひとひらの雲のゆくえに我が心預けておりぬ梅の香のなか
奥井 満由美

彩の絹莢二莢さみどりの口に弾けてああ春憐
毛呂 幸

ゆっくりと桜の下を歩きたり待っているよと蕾にエール
浦山 増二

尾根からの水を含みし雪片が時間差つけて春を呼び込む
藤田 直樹

早春の梅のさ枝に蕾着く音符のごとく春を奏でる
伊関 正太郎

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八首抄  令和5年5月号

八首抄 令和5年5月号

橋本 俊明 選
AIの機能搭載したようなピカピカオデコの美誠ちゃんが好き
高橋美香子

光さす天窓のある台所 菜を刻む音 母の 後姿
高田 好

パソコンのゲームにはパッパと反応す異次元めける孫の指先
成田 ヱツ子

年々に義理を欠くことの増しゆくと時世に合はす戸閉りもする
渡辺 千歳

道ならぬ道と知りつつ知ればこそむべわが園にかをる柏木
石谷 流花

寒き朝枝に刺したるみかん喰む鵯のせはしき陽

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八首抄  令和5年4月号

八首抄 令和5年4月号

水谷 和枝 選
友の弾くギターに合わせ歌いたり心を開き空に向かいて
藤田 直樹

蕭々として走りゆく雪原の風は帰りの道を知らない
臼井 良夫

カルテにて誕生日と知る看護師の祝ひの言葉にこころはなやぐ
斎藤 叡子

寒卵わりて小鉢にうつし見る囲いの中で終えし鶏
才藤 榮子

子にはこの親には親の思いあり飛行機雲の続く初空
高橋 美香子

原点を探すがごとくゆっくりと私はコーヒーいつもブラック
田中

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八首抄  令和5年3月号

八首抄 令和5年3月号

臼井 良夫 選
わが影を見ながら歩く夕刻に存在の無き悲しみを知る
藤田 直樹

道の上より見ればわが家の瓦の屋根が輝り返しをり
川口 六朗

暮れなずむ稜線続く房総のローマと同じ色の夕焼け
高橋 美香子

どの人も眼は美しと思ひつつマスクの顔に対きて物言ふ
広瀬 美智子

放浪の人もやうやく老いづきて残るいのちをわが傍におく
高田 香澄

天空の薄き空気を思いつつまぶたに描くマチュピチュ遺跡
建部

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八首抄  令和5年2月号

八首抄 令和5年2月号

広瀬 美智子 選
お墓には行けないけれどこの庭のさまざまな菊をすべてあなたに
高田 香澄

今年もまた着たら捨てよう繰り返し黒きセーターはクッションになる
篠原 和子

天空よりぶら下がるごと動かざるブランコに降る落ち葉しきりに
山北 悦子

おふくろと呼ばれる友はゆっくりとふり向く時におふくろの顔
児玉 南海子

運休の内陸線の駅舎あり玩具箱からこぼれたように
永田 賢之助

スメタナの祖国

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八首抄  令和5年1月号

八首抄 令和5年1月号

高貝 次郎 選
今日の君取り分け話が合うようで崩したる脚組みかえしたり
財前 順士

湯にひたるあなたの背は若いねと言葉に出して言へばよかつた
高田 香澄

十四号台風明けの庭に立ち「木守柿」とふ言葉にあそぶ
井手 彩朕子

尖塔のクルスは秋の光受け世のなべてもを清めむとする
佐田 公子

姉からの電話も消えて十五年空の青さを今日も見上げる
臼井 良夫

地蔵堂に群がる蟻の動きとはカオスに似たる秩

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