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多国籍団地と人生最高のベトナム料理(ヴィエ、タンハー)

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海水浴に行きたくなるような猛暑の日、小田急江ノ島線が東海道新幹線と交差する高座渋谷駅に行ってきた。

目的はベトナムを中心とした在留外国人が多く暮らす”いちょう団地”と本格ベトナム料理。

ネット上で調べると記事がいくつも出てくる。どうやら絶品らしい。

いちょう団地は、日本の90年代以降のヒップホップを描いた漫画『少年インザフッド(SITE/扶桑社)』(超面白い)の舞台モデルにもなっている。東京から少し足を伸ばしただけで異国文化に触れられるなんて考えただけで心が躍る。

高座渋谷駅を降りた風景は特に他の駅と変わりなかった。

都会でもなければ、ど田舎でもない。期待していた異国情緒は全く感じられなかった。

いちょう団地を目指して少し歩くと、途端に田んぼが増えてきた。田舎を歩いていると突然田んぼが増えてくるのはよくあることだ。街が終わり、田んぼ+建造物の一帯となる。夏が似合う長閑で良い街だ。

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巨大な給水塔を目印に近づいていくと、小さな川を取り囲むように団地が立ち並んでいた。すれ違う人達の趣が変わってくる。日本人に見える人はおらずアジア旅行に来たようだ。

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団地の横の道を通ると水が上から落ちてきた(!)。

落ちてきたと言うより、ドボドボと水が落ち続けている。図太い放物線を辿り見上げると、お爺さんがジョウロで5階ほどの部屋から水を捨てていた。目的は分からないが、ジョウロを持っているということは自然を愛する心があるということだ。洗礼を浴びたが、水を浴びないようにそそくさと通り抜けた。

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↑いちょう団地名物、6言語看板。山手線は日英中韓の4言語。そういえば韓国語はないな。

猛暑の中、南国であるベトナムに思いを馳せながら歩いていると、目的地の一つ、バインミーヴィエに到着。

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スナックなどが立ち並んでいるが、ベトナム料理屋が2つ入っている。

14時頃だったので店内に客はいなかったのだが、ベトナム人の女性が暖かく迎えてくれた。

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魚のすり身のバインミー(500円)を注文。

自家製のフランスパンが美味い。具自体はそこまで主張してこないが、パクチーとソースと素朴にまとまっていてこれで良いと思わせてくる。ベトナムはフランスの植民地だったことから、このような東西折衷の料理が生まれたらしい。異国料理には侵略の歴史がつきものだ。知っていくことが大事ですね。

2つ目の目的地。タンハー。入りにくい外観にまごまごしていたら、原付に乗った外国のお姉さんが「その入り口で合っているから入れ」と減速しながら教えてくれた。

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店の中に入ると中は広く、団地で暮らしているだろうベトナム系の家族連れや、観光で来ていそうな日本人で賑わっていた。

まず頼んだのは初めて見る2つ。

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バンクォン

蒸し春巻きです。豚の挽肉とキクラゲとシャキシャキ食感のイモが入っています。甘いナンプラーのタレにつけて食べます(メニューより)。

生春巻きでも揚げ春巻きでもなく、蒸し春巻き。包んでいる米粉の皮がトロトロで、完全に初体験の料理だった。際限なく食べられそうだった。他の店で見たことないのでまた食べたい。


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ボーラロット

牛挽肉の葉っぱ巻き(ラロットという葉っぱ)変わった香りがする葉っぱですシーズニングソース(正油)を付けて食べてください。

肉っぽさと葉っぱの香り・くせの相性が良く、酒のツマミに最適だと感じた。ベトナムではこれを道端でガンガン焼いているらしい。いつか訪れて食べてみたいものだ。


そして最後に牛肉のフォー

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フォーなんて知っていると思って食べたのだが、滅茶苦茶美味い!塩気の効いたスープに別皿の野菜を入れてモリモリと食べ進めていくのはとても幸福だった。テーブルの上には調味料がたくさんあって味変を楽しんだが結局どれも美味い。人生でこれを超えるフォーに出会えるだろうか。もう現地に行くしかないと思わせる衝撃的な美味しさだった。

ベトナム名物のバロット(孵化していない雛鳥が入った卵)もメニューにあったので頼んだが品切れだった。確かに在庫をたくさん抱えて売れるものでもないかもしれないが、初めて食べてみたかったので残念。次の機会を狙います。

兎に角、タンハーは大満足だった。コロナが収束した暁には、もっと多人数で行って色々な料理を食べてみたい。

1軒目の店を出る時に、レジ奥にポスターが見えた。「”多国籍団地”のゆく年くる年」。

調べたところNHKのドキュメント72時間という番組で今年の2月に放送されたらしい。帰ってから観てみたところ、団地内の生活を垣間見ることができる良い回だった。

ベトナム・カンボジア・中国など、住民の2割が外国にルーツを持つという、国内屈指の“多国籍団地”が舞台。彼らは異国での年末年始をどのように過ごすのか。正月用の食材を買うカンボジア出身の2人組。近隣への新年のあいさつを欠かさないラオス出身の夫婦。ベトナム出身の両親を持つ女の子は、団地で優しさを学んだという。新型コロナの影響で、いつになく静かな年越し。団地で共生する人たちの声に、3日間、耳を傾ける。(NHKオンデマンド)

コロナ禍の2020/12/30-2021/1/1のいちょう団地に密着しており、日本人と移民の人たちが暮らしている様子が身近に感じられた。新しく団地に引っ越してきて、掃除やらしながら移民の人たちに声を掛けられるのを待っているお爺さんが良かった。人は人と生きていくんですねえ。NHKオンデマンドで110円で観られるので是非。

今までよりも移民に関する映像を観たり、本を読むようになった。やはり生で体験すると対象への具体的な想像力が湧く。本当は生で見なくても敬意を持って尊重すべきですね。今年は中止になってしまったが、いちょう団地では毎年お祭りをやっているらしい。機会を狙って必ず遊びに行きたい。 

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