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【観劇】椎名桔平主演「オリエント急行殺人事件」

 2020年12月はじめ、シアターコクーンへ舞台「オリエント急行殺人事件」を観にいってきました。椎名桔平さんのお芝居は常々観たい!と思っていたので念願叶いました。

 

★あまりにも有名な物語

 あまりにも有名な長編推理小説「オリエント急行殺人事件」はベストセラー作家アガサクリスティが1934年に発表した物語で登場人物の名探偵エルキュール・ポアロとともに今もなお愛されているミステリー作品です。その後も映画やドラマなど映像化され、今回の舞台では2017年のケン・ルドウィック版の舞台脚本を2019年公演に続いて河原雅彦さんが演出、主演のエルキュールポアロを椎名桔平さんが演じられました。

 物語はシリアでの事件を解決した名探偵ポアロが英国で起きた事件の依頼を受けイスタンブール発の超豪華寝台列車「オリエント急行」で英国へ向かうも途中で雪崩に巻き込まれ立ち往生してしまった中で、客の一人のアメリカ人実業家・ラチェットが鍵のかかった寝室で殺され、鉄道会社から捜査を頼まれたポアロが乗客全員への捜査を開始、全員に完璧なアリバイがあったが、やがてポアロによってアリバイが崩され謎が解き明かされた時、思わぬ結末がポアロを待っていた…というものでした。

 

★やっぱり…イケメン! 

 舞台は椎名ポアロの一人語りに続いて、列車の側面のセットの前で乗客たちの賑やかなおしゃべりが聞こえたかと思うと、タイトルがセットに投影されBGMに載せて登場人物たちが映画の名シーンのようにポーズをとる…というオープニングでした。こんなお洒落なオープニング、、ちょっとそれだけでココロが掴まれました笑。各人のポーズはもちろん、それぞれのキャラクターを現わしており、これから始まる物語にここへおいでと手を引かれたようでしたね。つまりこれまで観た舞台の中でも記憶にない素晴らしいオープニングでした!

 ポアロの映像、といえば私はやはりNHKで放送された「名探偵ポワロ」(ポワロ、なんですね)のデイビット・スーシェが演じた、少し背が低くて小太りのイメージが強いので背の高い椎名版ポアロはどうだろう、と思っていたのですがどこからどう見てもポアロでした。英国紳士の振る舞いが似合うのはもちろん、三枚目半の仕草も良く、あ、でもやはり「イケメン」が付くポアロでしたね笑。

 

★新鮮さと安定感を魅せる俳優陣 

 他のキャストに、医大生でもあるアンドレ二伯爵夫人に松井玲奈さん、
鉄道会社重役のブークに松尾諭さん、ラチチェットの秘書ヘクター・マックイーンに室龍太さん、家庭教師のメアリー・デブナムに本仮屋ユイカさん、
貿易商のサミュエル・ラチェットと軍人アーバスノット大佐の二役に粟根まことさん、宣教師グレタ・オルソンに宍戸美和公さん、オリエント急行の車掌ミシェルに中村まことさん、傍若無人な態度の旅行者ヘレン・ハバードにマルシアさん、そして貴族で乗客たちの中で鍵を握るドラゴミロフ公爵夫人に高橋惠子さんが演じられました。

 今回の舞台で魅かれたのがマルシアさんと松井玲奈さんでした。子を思うがゆえにその人生の歯車を自ら壊し、強く切ない母親として女性としての「狂気なさま」を見事に演じられていて後半ではマルシアさんが語るセリフ一言一言が胸に刺さりました。さらに松井玲奈さんの愛される女性としての「輝き」とすべての乗客たちの「希望」としての存在感も素晴らしかった。松井さんはこの舞台で本当に大きな経験をされたのではないでしょうか。それから松尾諭さん。椎名ポアロとの掛け合いも楽しく、実はBSのドラマ「レモンハート」でファンになっていたのでお芝居が見られてよかったです。


★正義を知るまでポアロは泣かない 

 物語の終盤、事件が解決するに連れて乗客たちの告白は涙となりやがて人間の愛情と愚かさ、悲しみと祈りが客席へ葬られます。乗客たちの願いを叶えることとなったポアロ。ポアロは自身の決断が正しかったのか、ポアロが信じてきた「正義」とは何か、という問いはその後の彼の人生で繰り返されることとなります。

 「正義」は立場や環境、そして経験によってカタチを変えます。乗客たちが泣いても椎名さんのポアロは泣いていませんでした。ポアロは答えをみつけるまで泣かないのかもしれませんね。泣かない椎名さん(もしかしたら泣いた回もあったかも?ですが)に泣けました。


 コロナ禍で窮屈な日々はまだ続きます。世界中でそれぞれの「正義」があり、ときに誰かを攻めたりするのは自分の正義が正しいと思うためなのかも知れません。ポアロが今、この時代に生きていたら、このたくさんの正義についてどう語ったのでしょう。観劇後はそんなことも考えていました。

 ちなみに河原雅彦さんの演出舞台は那覇市で見た「万獣こわい」以来。私は今回の舞台が好きです…。


#舞台感想

 









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