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【観劇】シス・カンパニー「23階の笑い」

 2020年の12月、世田谷パブリックシアターへ、三谷幸喜さん演出・上演台本の舞台「23階の笑い」を観てきました。三谷さん色の濃い舞台はドキドキ感とワチャワチャ感、そして様々な圧力へ抗う人間たちの笑いと悲しみの表現でいっぱいでした。けれど、けれど、ちょっと辛口になる今回のレビュー…賛同される方が少ないかもなのですが…。


★三谷幸喜さんと原作者ニール・サイモン 

原作のアメリカ合衆国の劇作家・脚本家のニール・サイモンはその作風が大衆に支持され、2018年に91歳で亡くなってもなお、その作品の人気は劣ることなく世界で上演され続けています。そして今回の演出を手がけた三谷幸喜さんもまた日本で様々な年代から支持されており、三谷さんの劇団「東京サンシャイン・ボーイズ」の名前もニール・サイモンの戯曲「サンシャイン・ボーイズ」に由来しているとされ、三谷さんのニールへの想いも特別なものだとわかります。

 

★その物語と贅沢なキャスティングに浸って

『23階の笑い』は、1993年に初演以降人気のある戯曲。物語はマッカーシズムに揺れた1953年の話で当時の溢れる政治・人種など様々な問題を背にテレビの世界は激しい視聴率戦争の中にあり渦中にあるのは生放送のバラエティショーでした。ニューヨーク五番街と六番街の間、57丁目通りにある高層ビルの23階の一室で人気テレビ番組を持つ人気コメディアン、マックス・プリンスと個性的な放送作家たちも視聴率獲得のため日々、コントのネタ作りに励んでいました。しかし時に政治ネタを入れ毒舌ある笑いを大切にし番組の個性を守ろうとする彼らの笑いと手法を大衆受けを好むテレビ局上層部は気に入らず、番組予算削減やさらにはネタにまで厳しい要求をしてきます。マックスと仲間たちは反抗し立ち向かってゆく…というものでした。

 

 配役は冠番組「ザ・マックス・プリンス・ショー」を持つスターコメディアン・マックス・プリンスを小手伸也さん、仲間である7名の放送作家たちとして、マックスに憧れる新入りライター・ルーカスに瀬戸康史さん、目立ちたがりのミルトに吉原光夫さん、ロシア出身のヴァルに山崎一さん、ハリウッド進出を目指すブライアンに鈴木浩介さん、マックスから信頼されるベテランのケニーに浅野和之さん、病気不安症気味のアイラに梶原善さん、紅一点のキャロルに松岡茉優さん、さらに秘書のヘレンに青木さやかさんが演じられました。

 「個性的」な彼ら。冒頭は新人のルーカス、瀬戸さんの少しおとなしい説明を兼ねた台詞とどこか愛くるしい仕種で静かに始まりましたが、やがて23階のオフィスへやってくる先の説明どおりの仲間たちがやって来て賑やかに会話をしてゆきます。テンポの良い会話を投げ合い、騙し合い、意地悪を言ったり、可愛いいたずらをしたと思えば、小手さんのマックスのオーバーリアクションがさらに客先の笑いを誘います。まるで大きなショッピングモールかゲーセンにある「ガチャガチャ」を回しいるように次から次とたくさんの「個性」がステージに転がります。アメリカンな表情とステージングを客席の皆さんは楽しく受けとっておられたようでした。私も声を出して笑ってしまった場面もありました。

 

★しかし

しかし

 しかし私は幕が開いて20分くらいすぎた頃から物語に入り込めず、すべてのキャストが揃ってそれぞれを主張しあう場面ですでにお腹いっぱいになってしまいました。出演されたみなさんが演技のプロ中のプロ、別の表現をすれば、舞台の全員が戦隊ヒーロー、ヒロインで主役。それぞれのキャラクターが目立つのにすぐに忘れてしまうんです。主役が入れ替わるようなスピードにも追いつけなかったのかも。

 冒頭のガチャガチャの中身がみんな当たりなので、たくさん当たると大切にしなくなるのに近い感覚もありました。個性がぶつかりすぎて、アメリカンジョークもお腹いっぱい。小手さんは汗を見せながら身体すべてを使ってコメディアン・マックスを表現されていて、素晴らしかったのですが、ステージングの一から十までハイペース。全力で走っておられるように見えて←そういう演出だと思うのですが、あの力配分では、、心臓とか呼吸器系とか、後々響くんじゃなかろかと客席から心配しながら観させていただいていました。

 

つまり私は前半途中からラストを待たずにすっかり冷めていました。ストーリーに入り込めなかったのです。すみません…(/ _ ; )


★「舞台」は遠くに

 素晴らしい脚本、演出、そして俳優たち。この「23階の笑い」の舞台には間違いなくすべてそろっていました。でも。どうして私は心揺れることがなかったのか。

 今、これを書いていて感じることは舞台は足りない何かがあって成立するのかもしれないということ。それはキャストなのか、脚本の少し足りない台詞なのか、舞台セット?もしかしたらギャラ笑?かもしれませんが、完全な条件が揃ったら、その舞台は完全から遠いところにあるのかもしれません。

 でも!三谷さん大好きですよ!大河も楽しみです!


 



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