【手術日当日】
手術は、同室の市川さんが1週間前に行っていたのを見て学習済みだった。
と言うことで、怖さはなかった。
市川さんは、「怖かった」と言っていた。
僕は、市川さんのおかげで落ち着いていた。
昨夜の夕食から絶食。
点滴で過ごす。
朝の点滴が終わった頃に術着に着替えさせられた。
10時頃に麻酔科の先生が来て体調だのいろいろ話をしに来た。
手術は、午後1時から3時までの予定とのことだった。
朝食時もそうだったが昼食の配膳時の匂いで腹が空く。
食べられないと思うと余計に腹の虫が騒ぐ。
美味しくないと分かっていても食べたくなる。
これが本能と言うものなのか・・・
腹の虫と格闘している間に、手術の時間がやって来た。
手術は、1時からなのに呼ばれたのは1時を過ぎていた。
激痛に耐え、ストレッチャーに移動し手術室に向かう。
手術室に入ると手術台に移される。
大きな時計が見えた。学校にあるようなアナログの時計だ。
時刻は、1時15分を回っていた。
先程の麻酔科の先生とオペ看らしき人が3名ぐらいと、1人だけ胸元を開いたワイシャツにネックレスに白衣、濃い目のアイメイクでキツそうな感じの30代後半の美魔女が仕切っていた。
彼女は、医師なのか?ナースなのか?
なんて考えてるうちに、麻酔科の先生が説明に入った。
その後。マスクを口元に「気持ちをゆったりとさせてゆっくり呼吸をして。10数えて・・・」
吸った瞬間、吸ってはいけないものを吸ったように感じた。
起こされて気がついた。
まだ、手術台の上だった。
時計を見ると5時を過ぎていた。
手術の予定時間から2時間もオーバーしていた。
手術が難航したらしい。
出血が酷く、輸血をしたと聞いた。
手術室に迎えに来たのは、あの脇阪だった。
夜勤は、こいつか・・・
朦朧とする頭の中で思った。
つづく
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