不安定な夜は夢の続きさ

aikoがtwitterにあげた「ホワイトピーチ」という曲があまりに素晴らしい。タイトルはその歌詞からの引用だ。

岡村隆史のANNにて、岡村が家の中で発見した期限切れの桃缶を開封する壮大!な企画に、リモート立会人として参加したaiko。開封後に岡村がホワイトピーチって、シングル出してや、という無茶ぶりに答えて、放送終了後twitterにあげられた曲。(番組終わってわずか39分!)

聞き取った歌詞を引用してみる。

風邪引いてない? 聞けないまま時は過ぎる 楽しくて嬉しくて
あなたがいないと無理だとか そんな簡単に言っちゃいけないけど
少し色が変わった心の中 あなたはどんな風に見てたの
不安定な夜は夢の続きさ
あなたのやさしい笑顔に何でもっと早く気づけなかったんだろう
強く刺さった缶のギザギザがとても痛いよ

すごすぎないか。ずっと気づかずに放置されていた桃缶、開けてみると白桃とはとても言えない色に変わっていた。ただそれだけのことから、「少し色が変わった心の中」「あなたのやさしい笑顔に何でもっと早く気づけなかったんだろう」「強く刺さった缶のギザギザがとても痛いよ」なんて物語を紡げること!

「あなたのやさしい笑顔に」だって!今会えない人を思い浮かべる。そう、今の状況がまた織り込まれている。「風邪引いてない?聞けないまま時は過ぎる楽しくて嬉しくて」「あなたがいないと無理だとかそんな簡単に言っちゃいけないけど」それは今、とても切実な言葉だ。しかし同時にそれは恋のいじらしさや、人間関係の難しさや、そういう普遍的な言葉にもなっている。透徹したまなざしはただその物事だけで完結したりはしないのだ。aikoの歌詞のすばらしさが確かにそこにある。そしてそれらの言葉を「不安定な夜は 夢の続きさ」という歌詞で繋ぎとめる美しさ。色々な人が様々なシチュエーションで経験したであろう、或いは経験しているであろう「不安定な夜」を、「夢の続き」といううっとりするような素敵な言葉に置き換えることの素晴らしさ。切実で確かで柔軟な言葉。「あんたはどんな風に見ていたの」という言葉は普遍的なラブソングであると同時に、ラジオへの愛をも語っている。

そしてそれらの言葉を織り上げる切ないメロディの豊かさ。いわゆるaiko節がそこかしこに光っていて、絶対的にそれはaikoの曲なのだ。こんな曲を一時間弱で作ってしまうaikoはやっぱりすごい。

「不安定な夜は 夢の続きさ」と深夜3時39分に歌われて救われた人もきっといただろう。大切な言葉がまた増えた。

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