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#映画

肌蹴る光線「すべてが許される」

肌蹴る光線のオンライン上映にて、ミア・ハンセン=ラヴ監督作「すべてが許される」を観た。肌蹴る光線とは、「上映機会の少ない傑作映画を発掘し、広めることを目的とした上映シリーズ」で、毎回とても面白い作品を上映している。その第1シーズン最後の作品が「すべてが許される」だ。

前回上映された「コジョーの埋葬」はとても素晴らしく、こちらにも感想を書いたが(『映画「コジョーの埋葬」を観て』)、「すべてが許され

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映画「コジョーの埋葬」を観て

映画「コジョーの埋葬」を観て

視線を感じるというのは、まだ科学的に証明されていない現象だ。五感とは別の何かで人の視線を感じる。そうして振り向く。そういう瞬間が日常にある。あの視線を一体私たちはどうやって感じているのだろう。

「コジョーの埋葬」という映画を見た。そこには正にそんな視線が飛び交っていた。温度や風と同じように、目に見えないところに確かなリアリティを感ずることがある。この映画の中に描かれる視線は何度も、目に見えている

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海獣の子供と白いスニーカー

海獣の子供と白いスニーカー

夢の中で考え事をしていて、体が重くって空を飛べないことを悩んでいた。昔は空が飛べたのになと思っている気持ちは本当で、だからとてもかなしかった。

こないだ映画「海獣の子供」を観た。主人公の少女は冒頭、海沿いの塀を駆ける。勢いのままに跳びあがると少女は言う「私は空を飛ぶ。」そう言いながら駆ける少女の足には真っ白なスニーカーが輝いている。夏休み。駆け足で向かった部活。ハンドボール部の練習で少女は喧嘩を

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光の方へ

「わたしは光をにぎっている」という映画を観た。

映画を見終わってから喫煙所に向かった。新宿武蔵野館。ここの喫煙所はとてもきれいで、椅子まで用意されている。

ぼくが入った後からもう一人入ってきて、隣の椅子に座る。ぼくはポケットからライターを出そうとするが、手には何も触れない。ライターを忘れてしまったらしく、その人に火を借りてタバコを吸った。オイルライターのやわらかい火が心地いい。その人がぼくに話

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JOKERという喜劇

JOKERを観てきました。ネタバレするので、気にならない人は読んでください。正直ネタバレどうこうっていう映画ではないので、気にしなくてもいいと思います。そもそもネタバレでつまらなくなる映画は最初からつまらない映画だと思いますし、シックスセンスはネタバレされても面白い映画だと思うからです。

笑いとは裏切りだ。前提を覆したところに笑いがある。前提とは何か。それは場によって異なる。たとえばそれが世間の

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