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終わらない旅路へ――くまいさんの歩みを振り返る

はじめに

 ほんじつ12月27日は、ピーター・パンの日。『ピーター・パン』は元々、イギリス・スコットランドの作家ジェームス・マシュー・バリーによる戯曲(『Peter Pan; or, the Boy Who Wouldn't Grow Up』)だったのですが、その初演が1904年12月27日だったことが「ピーター・パンの日」の由来です。小説としても出版され、『ピーター・パンとウェンディ』(Peter Pan and Wendy、1911年)は岩波少年文庫などでも読むことができます(ピーター・パンがバリーの小説に初めて出てくるのは、1902年の小説『小さい白い鳥』)。
 本作はディズニー映画(1953年)でよく知られるとおり、冒険好きで無鉄砲な少年ピーター・パンと、彼に出会った少女ウェンディ・モイラー・アンジェラ・ダーリングなどの仲間たちが繰り広げる冒険譚です。誰もが知る、ネバーランドを舞台に、空を駆け回り、凶悪な海賊のフック船長と戦う物語。その初演を記念した日に紹介するのは、新たな世界を駆け巡る冒険へピーター・パンのように羽ばたくことを決意したVtuberさんにまつわるユニットのお話です。
 
 2023年11月14日、にじさんじ公式Twitter(現X)において、相羽ういはさんのライバー卒業についてのお知らせが掲載されました。

 にじさんじ所属ライバー・相羽ういはさんは、ユニット「ぶるーず」を構成するひとりで。見る者に癒しを与える愛嬌と、5時間以上リングフィット・アドベンチャーを続けるほどのパワフルさを併せ持ち、上のお知らせにもあるとおり、ダンス等のパフォーマンスにも真摯に取り組んできたライバーさんです。彼女のニュースはネットの海を広く駆け巡り、関連ワードもトレンド入りしていました。
 この相羽ういはさんが親しくしていたにじさんじ所属ライバーさんのひとりが健屋花那さんであり、この2人によるユニットが、「くまいさん」でした。この記事を通して、この2人がこの世界で活き活きと輝いていた証・記録を残し、記憶を将来へ紡ぎたいというのが、筆者の願いです。


「くまいさん」とは?

名前の由来

 くまいさんは、先に紹介したとおり、にじさんじ所属ライバー相羽ういはさんと健屋花那さんによるユニット名。その名の由来は、「熊と胃」だから。

熊が私で、胃がすこやさん。 二人合わせて #くまいさん

相羽ういはさんチャンネル内「メランコリック」歌ってみた動画の概要欄より。


「熊」はういはさんと一緒にいる熊のぬいぐるみ「うい郎」、「胃」は健屋さんの胃のキャラクターである「すとまっくん」をイメージすれば良いでしょうか。

「熊井さん」と思いきや「熊胃酸」なのですね。

「くまいさん」としての初めての配信

 健屋さんとういはさんにはコラボで共に配信したり、健屋さんの「歌ってみた」にういはさんが参加したりするという機会が何度かありましたが、「くまいさん」として初めて配信を行なったのは、2020年6月4日のことでした。

【#くまいさん】「しゅこやしゃ~~ん!2.0でお写真撮影会しましょ~~~♡」「!?」【健屋花那/相羽ういは/にじさんじ】(2020年6月4日)

 にじさんじのライバーさんの身体は、時に可動域表情バリエーションなどの幅がブラッシュアップされる機会があります。同じタイミングで「2.0」へのブラッシュアップが発表・実装された2人。上に挙げた配信は、それを記念し、雑談を交えながら様々なシチュエーションを想定して撮影会を開きました。筆者はこのたびに配信を観返したのですが、尊すぎて今はお砂糖になりながらこの記事を書いています。

エネルギーを与えてくれる歌

 お二人は、数多くの歌動画を公開しています。「くまいさん」として初めての歌動画は、「ハッピーシンセサイザ」でした。公開は2020年6月4日。先に挙げたくまいさんの撮影会配信の際に告知され、同日に公開されました。歌詞にある「 自分に素直になればいい」という言葉に偽りなく、堂々とその輝きを見せつけるこの動画は数多くの人々の心を掴み、2023年12月26日現在、270万回の再生回数を超える人気を誇っています。2022年の年末に開催されたにじさんじユニット歌謡祭 2022では、Day2にあたる12月30日に出演。ハッピーシンセサイザを披露し、Twitterでもトレンド入りをかっ攫いました。
 「ハッピーシンセサイザ」以降も、くまいさんのお2人は素敵な歌動画を公開し続けています。

【相羽ういは/健屋花那】ゆるふわ樹海ガール歌ってみた #くまいさん【にじさんじ】(2021年6月12日)

【相羽ういは/健屋花那】メランコリック@Junky #くまいさん 歌ってみた【にじさんじ】(2020年10月11日公開)

いずれも、どこまでも元気な曲調で、聴く人の気持ちまで明るくしてくれるような歌声が印象的です。しかし、中には下のような儚げな曲も。

【相羽ういは/健屋花那】femme fatale 「鼓動」 歌ってみた #くまいさん【にじさんじ】(2022年6月4日公開)

このように、くまいさんの歌ってみた動画は数多くありますが、共通しているのは歌い手の「好き」と「かわいい」が詰まっているところだと筆者は思います。心荒んだ時身体が癒しを求めている時、くまいさんの「かわいい」はあなたをきっと温かく包みこんでくれるでしょう。

くまいさんはこれからも最強のカワイイを追求していきます

https://twitter.com/sukosuko_sukoya/status/1403677897995423745?t=3-EcdpjXlh0N8hY_CkXjYA&s=19
(健屋さんのツイートより。2023年12月26日閲覧。)


歌って踊れるアイドルユニット

 相羽ういはさんといえば、日々の努力により培われたパワフルな身体を駆使しての、アイドルの名に恥じぬダンス。そして健屋さんも精力的にダンスに取り組んでおり、2人の「歌って踊ってみた」というべき動画はその可愛さは勿論、素晴らしいパフォーマンスも楽しむことができるコンテンツです。くまいさん初の歌ってみた動画となった「ハッピーシンセサイザ」。2021年8月28日に公開されたのは、その「踊ってみた」バージョンでした。

【相羽ういは/健屋花那】ハッピーシンセサイザ*リメイク版 【踊ってみた/歌ってみた/にじさんじ】(2021年8月28日公開)

ういはさんが3Dの身体で活動できるようになってから投稿されたこの動画では、身体いっぱいにエネルギッシュなパフォーマンスを披露する2人を楽しむことができます。筆者もずっとくまいさんのダンスを観るのが夢でしたが、それが叶った時は胸が熱かったです。

仲良しの記録──Vlogを例として

 2人は配信外でも様々な逸話があるほどの仲良し。2022年のにじさんじフェスでは、健屋さんの「お気に入りの香水」として、ういはさんから貰った香水が展示されました。
 そんな2人は、東北地方旅行にも行っており、その旅行の様子は2023年4月に公開されたVlog(読み:ブイログ。「ビデオログ」の略で、「ブログ」の動画版、というイメージ。)に記録されています。

Ver.1では山形県尾花沢市にある銀山温泉編、Ver.2では宮城県仙台市にある作並温泉編となっています。銀山温泉は1983年に放映され、社会現象にもなったNHKの連続テレビ小説『おしん』の舞台として知られます。また、その温泉街の美しさも見どころで、「『千と千尋の神隠し』の世界観を彷彿とさせる!」という人もいるようです。
 作並温泉も、奈良時代に禁を破ってまで民衆へ仏教を広めた僧である行基が発見し(721年)、源頼朝奥州合戦(1189年)の際にその疲れを癒やした、という伝説が残る、歴史ある温泉です。
 このVlogは、幸せそうなくまいさんのお2人に癒やされるだけではなく、この2つの温泉街の魅力を感じ、旅行気分を味わうこともできる動画です。

相羽ういはさん、新たな旅路へ

 そして、本稿冒頭にて紹介したとおり、相羽ういはさんが、2023年の末日を以てにじさんじを卒業することが伝えられました。残り僅かとなった「くまいさん」としての時間の中で、2人は我々にとびきりのクリスマスプレゼントを用意してくださりました。

ジャーニー×ジャーニー

 2023年12月、にじさんじフェス2023では、23日、24日の2日にわたって「にじさんじDJフェス2023」が開催されました。健屋さんもDJとして23日DJフェスに出演。ここで健屋さんはサプライザーとしての本領を発揮します。このフェスにて流れたのが、「くまいさん」の新たなオリジナル楽曲ジャーニー×ジャーニー」だったのです。
 健屋さんは24日のにじさんじフェス2023公式メイン放送でもこの新曲のリリースを告知(Day2放送7:54:00頃)。
 日が明けて2023年12月25日、ついにジャーニー×ジャーニーのミュージックビデオが公開されたのです。

【オリジナルMV】ジャーニー×ジャーニー【くまいさん-相羽ういは×健屋花那-/にじさんじ】

作詞・作曲・編曲は、Catch a Fire等の楽曲で電音部のプロジェクトにも参加しているケンモチヒデフミ氏。配信外も含めたくまいさんのエピソードを聞き、歌詞に盛り込んで作り上げられた曲です。七色に輝くようなサウンド。前へ前へと突き動かされるようにポジティブな、そして「毎日が大航海」「夢の世界へと続いてる意味不明なドア」のように冒険心を擽られる歌詞。そしてくまいさんの可愛い歌声振付。「手を取り合って進む未来」という歌詞のように、これからもずっと幸せな冒険が待っていることを感じさせる曲です。


ジャーニー×ジャーニーグッズ

 ジャーニー×ジャーニーがYouTubeにて公開されたのと同日、同曲をイメージしたグッズが販売開始されました。その愛しさ溢れるあたたかなイラストは、ういはさん健屋さんによる描きおろしです。2023年12月25日~2023年12月31日までの限定販売

最後のお披露目の舞台で

 この楽曲のビジュアルやミュージックビデオにてういはさんが着ている衣装は、同日12月25日にお披露目された3D新衣装。この動画でくまいさんダンスのパフォーマンスを披露(配信内29:09秒頃)。後半には他の出演者さん達とゲームで遊び、お披露目の舞台を盛り上げました。

おわりに

 ここまで、くまいさんの活動について、概論的な内容ではありますが纏めて参りました。さらに詳しくは、にじさんじの非公式wikiでも確認することができます。
 幾度となく人々に感動や癒しを与えてきたくまいさん。2人の曲「ジャーニー×ジャーニー」の歌詞のとおり、これから新たな冒険へと飛翔するういはさんにとって、「終わりがない遊園地」、「掘っても掘ってもお湯が湧き出る温泉地」のような、素晴らしい景色の待つ物語が、旅路が続いていくことを願って、この記事を閉じる挨拶とさせて頂きます。

それらの冒険談をお話ししていたら、英語からラテン語、ラテン語から英語をひく辞典くらい、大きな本になってしまうでしょう。

J・M・バリ作、厨川 圭子 訳(2016)『ピーター・パン [電子書籍版]』(岩波書店)、p. 140 

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