見出し画像

穏やかな死者たち 

WHEN THINGS GET DARK: STORIES INSPIRED BY SHIRLEY JACKSON
edited by Ellen Datlow



「人間は人間にとてもよく似ているが人間ではないものを恐れるようにできている。」



弔いの鳥 M・リッカート
所有者直販物件 エリザベス・ハンド
深い森の中でーそこでは光が違う ショーニン・マグワイア
百マイルと一マイル カルメン・マリア・マチャード
穏やかな死者たち カッサンドラ・コー
生き物のようなもの ジョン・ランガン
冥銭 カレン・ヒューラー
鬼女 ベンジャミン・パーシィ
ご自由にお持ちください ジョイス・キャロル・オーツ
パリへの旅 リチャード・キャドリー
パーティー ポール・トレンブレイ
精錬所への道 スティーヴン・グレアム・ジョーンズ
柵の出入り口 ジェフリー・フォード
苦悩の梨 ジェマ・ファイルズ
晩餐 ジョシュ・マラーマン
遅かれ早かれあなたの奥さんは…… ジュヌヴィエーヴ・ヴァレンタイン
抜き足差し足 レアード・バロン
スキンダーのヴェール ケリー・リンク


アンソロジーは出会いの場、ヨクモワルクモだ。

シャーリー・ジャクソンを知っているかい?
不気味な日常を描くアメリカのホラー作家で、「ずっとお城で暮らしてる」をぼくはいたく気に入ってた。
いくつか映画化もされてるけど、映画になると彼女独特の「日常の不安と恐怖」っていう謎の気味悪さが感じられなくて、よくある残念なホラーになってしまうような気がして、ぼく的には「ホラーは文字で観る」派だ。
独りっきりで己の頭の中だけに描かれるものの方がより静かで、より恐ろしいのだよ。

そんな日常ホラーの女王を崇拝するエレンさんが選んだいろんな作家の18の短編集だ。

ぼくはね、やっぱジェフリー・フォードとケリー・リンクが好きだな。
ケリー・リンクはトリに相応しく感じたもんだ。
ケリーさんのは「プリティーモンスター」も面白かったけど、なんだろうね、このゆるい不気味観、キャワユイ恐怖。

ホラー。。。ホラーと言っても色々でさ。
言わずもがな、ぼくはエログロが全然ダメだ。
ゆえにその作家の世界観っつーか、ホラー観?が合わないと高い確率でトラウマになるっつうギリギリチョイスで読んでるさ。

ちなみにこの中でトラウマもんは「苦悩の梨」。
これさ、読み出して数秒でイヤな予感ブンブンだったけど、シャーリー的だってとこを信じて読み進めたよ、でもね、だめだった、最後まで読めなかった。。。なんだろう、この、キモチワルサ。少女的キモチワルサ?
以前、小川洋子の「薬指の標本」を読んだ時、同じようにトラウマになった、それと、村田沙耶香の「生命式」。
ぼくが女性作家を警戒するのは嫌な目にあったゆえだ、コワイんだ。
もちろんぼくは女の子は大好きだけれど、この手の病んだ美意識(?)がどうにもわからない。
何がこうもゾッとさせるのか、いまだにはっきりわからないから余計怖い。
ある意味こんなにトラウマ的ショックを与えるってすげえなって思うのだけど、二度とお近づきにはなりたくない作家なんだ。


さてと、ぼくの大好きなジェフリー・フォードの「柵の出入り口」はほんといい。このちょっと馬鹿げた雰囲気の少年漫画的なノリっていうか。

語り手の「少年」が観察するお隣にお住まいのバアサン、そのバアサンが見る度若返るかと思っていたら、なんか、マッチョじゃね?っていうかもはやガイじゃね?

そんなタフガイ化した元バアサン、ギャングの殺し屋になるんだけど、まったく歳をとる気配がない、そんな殺しまくるだけの永遠の毎日にもううんざりなバアサン、ある日、少年に出会う。

「彼は素っ裸だった。その体は長い金色の毛に被われていた。耳は人間の耳ではなく犬の耳で、先が尖っていた。こんなに悲しげな犬の顔は、見たことがないと思った。」

すっかり殺し屋化してたバアサン、ジイサン死んで以来の「守るべき者」に出会ったんだね。
悲しいことにこのハイブリット少年は、長生きできない。

「守るべき者」を失った元殺し屋は生きがいをなくし、だんだんと枯れ、ジイサン化しつつサルバドール・ダリそっくりの顔になったという!

「絶対的な力は、絶対的に腐敗する。」

ユーモア臭モンモンなのに、なかなかどうしてノスタルジックな美しい物語。ヒトは漏れなく「死」を迎える。永遠の若さの虚しさよ、だ。



さあ、このアンソロジーでぼくが出会った「気になるアイツ」は「抜き足差し足」のレアード・バロンだ。
このおじさん絶対ただもんじゃないよ、顔写真見てみ?しかもさ、アラスカ生まれで、作家になる前は犬橇レーサーだったって、この人自身が漫画みたいだよ?スゲー気になる。

「イーニー。ミーニー。マイニー。モー。」

スゲーコワイ!!!

パパ、パパはいったい何者なの!?
何かのトラウマを抱えたと思われる男が少年時代を振り返る回想物語。
家族の楽しい思い出、のはず?あれ、なんか変だ、パパが。。。お兄ちゃんが。。。狩られるッッッ!!!
記憶はボヤ〜としたけれど、彼の趣味だったニコンは見とった!

レアードさんのホラー観がドンピシャだったもんだから調べたらさ、彼さ、ラヴクラフト本書いてるよ!
うん、もう買うた、届くのを楽しみに待つ。



「むかしむかし、死神が住んでいる家がありました。さしもの死神も寝泊まりする家は必要なのです。」


「WEST EAST HOME IS THE BEAST」
East west, home's best!


この記事が参加している募集

#読書感想文

191,671件