エドガー・ソーテル物語 ディヴィッド・ロブレスキー
Am 10. August
EDGAR SAWTELLE
David Wroblewski
この物語は、毒に始まり、毒に終わる。
犬好きのための現代版ハムレット。
ブラボーッ!!!
何度読んでも感動に打ち震えるよッ!
自立する736ページの分厚いこいつ、ただもんじゃねえ。
読んでる間、ぼくはずっとソーテル少年だった!
ある日、父が死んだ。
雨の中に現れた父の亡霊は、手で語る、
「おれを忘れるな。」
「HーAーCー□ーIをさがせ。」
そう、父は殺された、叔父のクロードに。
けれども息子のエドガーは逡巡するよね、ハムレットみたいにね。
「神の業のように見える手段があるとしたら、それはもう人間業ではない。それ以上のものだ。そのようなものがあったら、この世界は恐ろしいことになってしまう。そのようなものがないからこそ、われわれは平和に暮らすことができるのだ。」
名もないじーさんはそう言ったさ。
偶然とはなんだ?進化とはなんだ?
理想の犬ってなんだ?
「犬が自分で飼い主を選べれば間違いないんだが」
「次の犬」を作り出すため、ずぶの素人からブリーダーになり、独自のソーテル犬を作り出したジョン爺さん。
そんな爺さんの作った世界を継ぎ、理想の犬の血統を研究する父と、訓練士の母、そして声を持たない息子エドガー。
シャベルコトガデキナイ
人間として必要なコミュニュケーション能力に欠陥を持つ遺伝子。
ブリーダーとしては捨てておけないよね。
エドガーが仔犬ならば、よからぬものは抹殺されるべきなんだよね。
けれども彼は現代社会の人間様だから、そんなことで殺処分されないんだよね。
よりよい遺伝子のためのよりよい組み合わせ。
ブリーディングによって生み出された、よりよい犬達。
「よりよい」は何がよりよいのか。
「柔軟な判断力を犬に持たせるべきか否かという問題そのものについては…人間のために働く犬にとってはほとんど役に立たないだろう。」
イヌは人間様のイエスマンなのかい?
イヌから見たよりよい人間ってなんだろう?
クロードおじさんはエドガーから見たら憎っくい野郎だけれど、イヌから見たらどうだろう?
だって、このクロードおじさん、天性の才能でイヌの扱いが非常にうまいんだ。イヌに好かれるんだよね。
エドガーのそばにいつだって寄り添うアーモンディン。
憎っくきクロードの足元に、愛しいアーモンディンが寝そべっている、まるで絵画のように美しく。
エドガーは激怒した。
あいつがお父さんを殺した!
お母さんを奪った!
アーモンディンを手懐けた!
それでもどうにもできず反抗少年化し、イヌども連れて裏森に逃げ込むエドガー。
家出、盗人、サバイバル、少年は成長するよね。
それでわかっちゃったんだよね。
「次の犬」っていうのがなんなのか。
ひょっとしたら声を持たない「次の人間」が、自分の意思を持つ「次の犬」を見つけ出したのかもね。
「もう二度と命令なんかしない。エセイは迷子になったりしないだろう。走りたいように走らせてやればいい。」
イヌと人間のあり方を問うてくるね。
「結局、よりよい犬を作るためには、わたしたちがよりよい人間にならなければならない。」
ひとりになったアーモンディンは、探してる、
「わたしのあの子をみなかった?わたしの大切なもの。わたしの魂を。」