イグBFC4の感想41〜45

イグBFC4も決勝戦が終わり、ついに優勝が決まりましたね。
ですが、まだまだ感想マラソンは続きます。

41.棒立ち

 これは本当にイグですか? 読後、ズシッときますね。
 自分の子ども時代を思い出しました。とくに目立つ男子たちはこういうこと言い合っていたなと。幼さゆえの無遠慮さ。友だち同士で貶し合う。でも楽しそうに一緒に遊んでる。大人にはない危うい関係性。
 同じ側だと思っていた譲二に、コンプレックスである名前に触れられたことで、主人公も譲二のほくろを四角い棒人間に描いてしまう。
 子どもの頃の印象深いことは大人になっても覚えているものです。でも、だんだんそれも記憶が曖昧になってくる。懐かしさが勝って、記憶も美化されていく。きっと若い人にはそこまで響かないかもしれない。けど、私にはズシッとくるものがありました。

 
42.セカンドチャンス

 これは壮絶なお話……! 読後にまず思ったのは子どもが無事でよかった、というもの。犯罪に手を染めた親に、孤立した場所で育てられることがはたして子どもの幸せかどうかはわからないけど……。
 子どもが小説を書けなくなっても、この主人公に親としての愛情はあるということがわかる。それだけが救い。
 この親子が心穏やかに幸せな日々を過ごせる日がくることを願わずにいられないです。


43.夢-Converter's Folk Tale

 この作品についてはXでも感想を書いています。なぜかというとイグナイトファングマンの中の人の作品だからです。つまり特別枠です。

 すでに書いていますが、最初に読んだときは主人公を少年だと思っていました。なぜなら「ボク」と言い、喋り方も繊細な少年のように感じたからです。
 けど、読み終わってから百合タグがついていることに気づきました。主人公はボクっ娘だったのです。 
 少年だとすると、たしかに違和感はあったのです。『図書室に初めて入った男の子たちを一目惚れさせ』という部分で、同年代の少年たちを「男の子たち」と言うのがひっかかっていました。
 だから、読んでいる間も「主人公の性別はもしかしたら女の子かもしれない」と半信半疑で、ラストまで読んで「女の子だったらいいのに」という期待を胸にタグを見たら「百合」となっていたのです。百合好き歓喜の瞬間です。
 ボクっ娘なので私の勝手なイメージで『ショートカットの女の子』を思い浮かべてしまっていましたが、自作解説を読むと『眼鏡かけて三つ編みで暗い表情をしていてそばかす』とあるじゃないですか。それを想像して読み直すとさらにめちゃくちゃイイです。良さが更新されました。
 この作品のアホな部分、あまねの機械破壊体質と主人公の超人的な能力ですよね。主人公が当たり前のことのように淡々と語るけど内容がぶっ飛んでる、というハチャメチャさが面白かったです。ツッコミがいないままボケが続いていくような。だから読んでいる間、私は心のなかでツッコミ続けました。
 けど、楽しい時間は突如おわります。あまねの爆死という形で。あまりにも突然で本当に驚きましたし、悲しかったです。
 ボクは淡々と語り続けますが、原稿用紙を墓石に押しつけて作文しようとするって、かなりの重さですよね。ボクのあまねへの想いがストレートに伝わってきます。そして、夢。せつなさを加速させてのラストです。
 途中まではアホだったのに、ラストが強く印象に残るので、読後はせつなくていい話だったと感じました。本当に不思議な心地です。サクラクロニクルさんの作品はやはり、このせつなさがとても魅力的だなと感じました。
 良い百合をありがとうございました。
 


44.高野浩平とカリブの海賊

 面白いなと読みすすめていたら、突如カリブの海賊の話が始まり、そのまま終わったので感情の持っていきどころに困りました。
 この放り投げた感じがイグなのでしょうか。うーん、高野浩平の話がもっと読みたかったです。できるなら、カリブの海賊の話のあとにまた高野浩平の話へと戻してほしかったなと思いました。まったく関係のないカリブの海賊の話に飛ぶことの面白さはたしかにありますが、主人公と藤田りんごと高野浩平の話が楽しかっただけに、そちらの続きが気になります。


45.こんな僕にも彼にょができました!

 彼にょの正体がなんなのか、最初は謎でした。伝わってくる彼にょの思いが不思議で、そしてとても素敵ですね。私はこの彼にょの口調がとても好きです。
 興味津々で読みすすめて『チロチロと細長い舌を動かし』という部分でヘビだと気づきました。
 主人公は友だちも彼女もできず、仕事にもやりがいを持てず、孤独で寂しい自由を感じている。『せめて世界ともう少し繋がることができたら』という切実な気持ちが伝わってきて胸が痛くなりました。
 そこから突然世界が変わる部分がものすごく良かったです。空を飛んでいた飛行機に手を伸ばすの摘むことができる、しかも小魚のように生を感じる。この不思議な空間が頭の中でも鮮明に浮かび上がりました。
 彼にょの力によるものなのでしょうか。ラストの『人間よ、お前の生などほんの一瞬だ』というセリフも好きですねぇ。ほんの一瞬だとしても、この彼にょは主人公と一緒にいることを選んだのだから。

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