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何度でも読み返したいnote5

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何度でも読み返したいnoteの備忘録です。更新は終了しました(2024.6.10)。
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#ビール

世界にひとつの距離

年に数回、家族が全員集合する。 地方移住して田舎で暮らす七十代の両親の家に、私たち四十路越えの子どもらが集まり、わいわい過ごす数日間。私もきょうだいもそれぞれ仕事や予定があるので、到着するタイミングや滞在日数をぴったり同じにするのはなかなか難しい。別々に来て、別々に帰っていく、でもできるだけ長く重なるように来る、その暗黙の感じが私はけっこう好きだ。 そんな帰省スタイルが、今年の夏は少し違った。急な出張できょうだいの予定が変わったことで、途中で合流し、同じ日の同じ電車で帰れる

ぶらり、ごくり、ひとり。

台風接近による大雨が通り過ぎ、ぴっかりと晴れた日曜日。 洗濯しまくろうと早めに起き出したものの、あまりにきれいな空を見て気が変わった。よし、今日にしよう。 前からやりたかった計画を実行するには、絶好の日和だ。 洗濯機を一回だけまわし、その間に出かける準備。冷蔵庫から缶ビールを取り出し、輪ゴムで保冷剤をくくりつけてリュックに入れた。 九時前には自宅を出発。最初の目的地、隣町のパン屋さんへ向かって歩きだした。 朝の空気は涼やかで、日射しの割にはまだそこまで暑くない。公園沿いの緑

母の隣りは

五月の連休、帰省した実家の庭先でビールを飲んでいたら、母が家から出てきた。育てている花や野菜の様子を見て、水をやって、それから私のいるベンチに腰掛けた。少し横にずれて、並んで座る。 あの花はお隣の○○さんが株分けしてくれたものだとか、来月に入ったらオクラの苗を植えるのだとか、楽しそうに話している。移住したら家庭菜園をやりたいって言ってたもんね、夢が叶ってよかったねえ、なんて思いながら、私はふと気がついた。あれ、私いま、緊張していない。母と二人で居るのに。 そういえば前回遊