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どうすれば問題を見つけられるようになるのか

きっかけ

普段データ分析を行っていると、

「現象と問題の切り分けが出来ない」
「本当の分析のゴールってなんだっけ」
「分析の途中で別の問題に気づいてしまう」
「考慮すべき事柄が多過ぎて訳がわからなくなる」

といった問題によくぶつかります。解くべき問いに辿り着いた後は少しSQLを書けば分析が終わるものの、それに至るまでに時間をかけ過ぎたり、そもそもそこまでたどり着けず、本質的な所に時間をかけられないなぁとモヤモヤしていました。
そこで、本質的な問いに素早く辿り着けるようになるため、先人の知恵を借りようと思います。

本の紹介

「ライト、ついてますか - 問題発見の人間学」という本はその名の通り「問題発見とは何か?」という点にフォーカスした本です。初版は1987年!!と古く、今風に言うと「Fast思考/Slow思考」におけるSlow思考や「Problen Solving/Critical Thinking」におけるCritical Thinkingに近いのかもしれません。


本質的な問いに辿り着く方法を議論するために、まず「問題」とは何なのかを整理します
そこで、「問題」に対する本書の回答を見てみましょう。

問題とは、望まれた事柄と認識された事柄の間の相違である

本読みながらのざっくり要約です。

例えば室内にいるとして、自分がちょうど良い室温だと感じればそこに問題はない。部屋が寒いと認識することで、そこに相違が生じる。
事柄に対する感受性を高めることで、問題を発見できるようになる。室温を気にしなければ発生しなかった問題が、部屋が寒いと認識することで明らかになる。
逆のことも言える。これくらいの寒さなら我慢できると感受性を下げることで、認識と欲求の差がなくなり、特に何も行動を起こすことなく問題を無くすことが出来る。
部屋が寒いという認識によって問題が発生し、室温を上げたいという欲求が生まれた。しかし実際の室温は25°だったとする。この場合、「室温が低いため寒い」という問題は幻になる。しかし、それは問題が無かったことになるわけではない。客観的な事実がどうであれ、認識と欲求に相違がある以上、問題は問題として残り続ける。例えば、「室温は十分暖かいのに寒いと感じるということは、自分の体調が悪いのではないか」という別の問題が浮上する。
これは、相違に対する欲求が変容したと捉えられる。「室温を上げたい」という欲求では解決しなかった相違が、「薬を飲んで寝たい」という別の欲求に変わることで解決可能になる。
問題は、望まれた事柄(欲求)と認識された事柄の相違によって発生する。
・認識を変える(相違が無いという認識にする)
・欲求を変える(達成可能な欲求を設定しそれを満たす)
ことで相違は解消出来る。
問題を発見するためには事柄に対して感受性を高めることが重要。感受性が高いと、望まれた事柄と認識された事柄の間に相違がある事がわかるようになる。

認識と欲求の相違が生まれる背景には2パターンある

「問題発見とは」に対するこの本の回答は「認識と欲求の相違」です。問題発見力を高めるためには感受性を高めるべしと書いてあります。

ここから先は私の感想ですが、多分、相違には
・感受性を高めれば認識出来る小さな相違
・欲求を高めることで生み出す大きな相違
の2パターンがあって、それぞれの問題発見力を鍛えるには別のアプローチが必要だと思います。

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こんなイメージです。
感受性を高める場合、欲求水準を上げた場合、どちらも認識と欲求に相違が生まれていることがわかります。また、感受性を高めて認識許容幅を縮めるのには限界がある一方、欲求は無限大に高められることもわかります。
0→1を生み出すのは後者で、1を磨いて10や100にしていくには前者、という捉え方もありそうです。

どうやって問題発見能力を鍛えるべきか

前者、すなわち感受性の高め方については、身の回りの事や自分が当事者になっている事に対して、現状の認識とこうなって欲しいという理想を挙げる、という鍛え方があります。例えば、普段使っている椅子が硬いと認識し、クッションが欲しいという欲求を持ちます。しかし、その鍛錬の延長線上でiPhoneを産み出せるか(解決することで社会をガラリと変えるような相違を発見出来るか)と言われると正直難しいです。
後者のような、大きく非連続的な相違を認識するためには、現状をより敏感に認識するだけでなく、欲求水準をグンと引き上げるような訓練が必要だと思います。具体的にどうすれば良いのかはわかりませんが、例えば「社会情勢や技術が進歩したとき、自分の好きな領域は5年後どうなっているのか」という少し先の未来を想定して、その水準に対して自分の好きな領域の現状の認識を比較する、といったところでしょうか。

(余談)ジョブ理論との繋がり

今までは問題をどう見つけるか、という観点からの考察ですが、逆に「この商品はどのような問題を解決しているんだろう」という観点から問題を逆算しても面白そうです。一時期流行った「ジョブ理論」において、ジョブは「特定の状況で顧客が成し遂げたい進歩」とされています。ユーザーが特定の状況で抱くジョブを達成する商品を、企業が提示することで、ユーザーはその商品を雇用します。

    商品=欲求を解消するための解決策
    ジョブ=相違
    特定の状況=認識した状況
と対応させると、1987年に発売された「ライト、ついてますか」で示された概念は2017年に発売された「ジョブ理論」に通じるものがあります。「認識と欲求の相違」から問題を発見するボトムアップ的な発想と「顧客が特定の状況で商品を購入した状態」からジョブを理解するトップダウンな発想の違いはありますが、感受性を高めて認識と欲求の間にある相違を発見するための訓練として、「普段よく売れているあの商品は誰がどんな状況で抱くどのような問題を解決しているんだろう」ということを考えてみるのもいいでしょう。

まとめ

・問題とは、望まれた事柄(欲求)と認識された事柄の間の相違
・感受性を高める事で、認識と欲求の差に敏感になり、相違を見つけやすくなる
・まずは身の回りの事柄を例に相違を見つける訓練をする
・欲求の水準を上げると、大きな相違を発見出来るようになる

終わりに

「本質的な問いに素早く辿り着く」ための方法を理解するために本を読んでまとめるはずが、「問題を発見する」だけでとても長くなってしまいました。
どうすれば認識した相違から本質的な問いに辿り着く事ができるのかは、分割して別の記事にしたいと思います。






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