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わかりやすい!中医学の基礎 Vo.20〜気血津液のトラブル その1 『気虚』〜

気血津液については、以前ご紹介いたしました。

今回は、気血津液の過不足で起こりやすいトラブルとそのバランスを整える代表的な生薬・漢方薬についてご紹介いたします。


実際に、漢方薬を選ぶときには、『気血津液のトラブル』が『五臓のうちどの臓に起こっているのか』を訴えの内容や四診から推測し、漢方薬を選んでいきます。

ただ、大まかに『気』『血』『津液』のトラブルがどのような症状として出てくるのかを知っておくと、どの臓に起こっているのかまで特定できなくてもある程度漢方薬を選ぶことができます。



気のトラブル


『気』のトラブルは大きく、気が不足した『気虚』と気のめぐりが悪くなった状態である『気滞』に分けられます。

気虚とその症状



気虚は、生命エネルギーが不足している状態です。

気には、さまざまな生理作用がありますが、主に血液の循環を助けたり、新陳代謝を促したりするため、からだ全体を活動的にしたり、めぐららせる力が低下している状態が主に現れます。


倦怠感や、意欲低下などのからだや精神的な症状に加えて、心・肝・脾・肺・腎の五臓にも様々な機能低下が見られる病態です。

気虚には、持ち上げる力が不足した「気虚下陥」という状態もあり、この場合には胃下垂などの内臓下垂が見られることがあります。子宮脱や、脱肛なども気虚下陥の状態です。


*気虚の人では、血液検査でも特定の項目が低いというわけではありませんが、検査値に基準値以下の項目があれば気虚があると言えるでしょう。
*体の代謝が落ちるため、何らかの検査値への影響があることも多いのが特徴です。
*特に、LDLコレステロールが極端に低ければ、気虚であると言えます。
LDLコレステロールは、『悪玉コレステロール』と呼ばれていますが実際には各組織での細胞合成に必要であったり、ホルモン合成に必要な成分です。

『気虚』の具体的な症状と関連する臓

気虚の症状と気虚が起こる五臓と関係


『気』を補う代表生薬

人参(にんじん)

人参は、健康食品やサプリメントでも販売されている滋養強壮の王様です。
野菜の人参とは植物の科が異なり、全く別物です。
人参の有効成分は、人参特有のサポニンの一種『ジンセノサイド』と呼ばれるもので、その生理的なはたらきが注目されています。

からだをパワーを補いからだをリラックスさせる成分と、からだを活動的に元気にする成分の両方がバランスよく含まれることが特徴です。

特に6年根と呼ばれる、6年かけて育った人参には『ジンセノサイド』が豊富に含まれています。

人参

黄耆(おうぎ)

黄耆も人参と並ぶ代表的な『気』を補う生薬です。
内側から補う人参に対し、黄耆はどちらかというと外側の『気』と補い、体内の『気』が外に漏れ出さないようにする役割を持っています。

黄耆が入っている漢方薬を見ると、ほとんどが人参とセットになっています。

黄耆

白朮(びゃくじゅつ)

白朮の他に蒼朮(そうじゅつ)というのもあり、日本では使い分けがされておらず、漢方薬によって白朮が使われているものと蒼朮が使われているものが販売されています。

中医学的には、蒼朮は体内の余分な水分を除くはたらきが強く、白朮は気を補うはたらきが強いという明確な違いがあります。



白朮

『気』を補う代表的な漢方薬


補中益気(ほちゅうえっきとう)



胃腸が弱く、エネルギーを作る力が弱いために起こる疲れ(脾気虚といいます)に対する代表的な漢方薬です。

手足のだるさや疲れがあり、胃腸が弱く食が細いためにエネルギーが十分に作られず、さらに疲れが起こっている場合に良いでしょう。

高齢者の慢性的な倦怠感や病後の回復期・大病中の体力アップなどにも使われます。

肺の防衛機能も強化するので風邪をひきやすい方にも適しています。

まとめ


気虚
気虚の全身症状
肺気虚
脾気虚・心気虚


腎虚



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