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【東大】ロボット指を培養液に漬けて「生きた皮膚」で覆ってみた

デデンデンデデン、デデンデンデデン。子供の頃、初めて「ターミネーター」を観て、傷ついた肌の下から機械の体が現れた時、その不気味さにゾワゾワが全身を駆け抜けたのを覚えている。この映画は多くの人に「ロボットが人に近づき超えていくこと」に対する恐怖心を植え付けたと思う。

しかしご存知の通り、ターミネーター以降もヒューマノイドに代表される「ロボットを人に近づける」取り組みは盛んに行われている。昨今のアクチュエータの性能向上や人工知能AIの進化によって、豊かな表情と細やかな身振りを交えながら会話を繰り広げるロボットも珍しくなくなってきてるよね。英Engineered Artsが開発した「Ameca」なんかは、ウィル・スミス主演の「アイ,ロボット」(2004)に登場したロボットそのもの。20年前は空想だった「人みたいなロボット」が現実のものになろうとしている。

そんな中、ロボットがさらに人に近づくための新たな一歩が踏み出された。東大の研究チームが、世界で初めて「生きた皮膚で覆われたロボットの指」を開発したはったの!人間の細胞を培養して作られたこの皮膚は、コラーゲンシートを貼るだけで傷口を修復することもできるんやって!

ロボットが人間らしさを手に入れるためには、皮膚の存在は欠かせへん。また柔らかい皮膚は、協働するロボット同士や人間との接触でお互いを守ってくれたり、ロボットに高度な触覚を与えてくれる。実際、韓国科学技術研究所が「なでなで」や「こちょこちょ」など様々な触覚を検出する機能を備えたロボット皮膚を開発してはったりする。

https://www.science.org/doi/10.1126/scirobotics.abm7187

せやけど、柔らかい皮膚は細かな傷を負いやすいから、これまで使われてきたシリコンゴムとかやとメンテナンスに大きなコストがかかってまう。そこで研究チームは修復機能をもつ「生きた皮膚」でロボットを覆うことにしはった。

でも、どうやってロボットのフレームを覆い、そこに定着させるかが問題やった。通常の皮膚移植では、皮膚のシートを上から貼り付けていくんやけど、凹凸の多いロボットの表面に同じ方法で皮膚を貼り付けていくのは骨が折れる。例えば攻殻機動隊などのSFアニメでは、培養液みたいなんに機械の体を漬けて外皮を作っていくシーンを見かけたりする。こんな皮膚の作り方って出来んのかな?!

人間の皮膚は多層構造をしている。一番外側の層は「表皮」といい、内部の水分量を保ち保護するバリアとして働く。また表皮のすぐ下には大部分がコラーゲンでできた「真皮」という層がある。真皮は、生物らしい柔らかさやハリの源であり、毛細血管や汗腺、神経が集まっている。

研究チームはまず内部のワイヤーで関節が曲がるロボット指を作らはった。そして、このロボット指を人間の真皮組織を培養したコラーゲン溶液に浸して、溶液をゲル化することで真皮組織が収縮しロボット指を覆うように定着させはった!続いて、真皮組織の表面全体に表皮細胞を追加・培養することで、表皮組織が表面を定着させはった!このように、培養液に浸けて表皮と真皮をそれぞれ順にロボット指に定着させ、2層構造の生きた皮膚を手に入れることに成功しはった。

(A) 指型ロボットの設計 (B) ロボットを被覆する培養皮膚の形成手法。/ Credit: 東大プレスリリース

開発された皮膚には伸縮性があるから、ロボット指を曲げ伸ばししても傷つかへん。また表皮があるから撥水性ももつ。さらに、2層目の真皮組織は、傷がついても絆創膏のようにコラーゲンシートを貼るだけで修復できる。実験として、メスで傷つけてみたんやけど、コラーゲンシートを7日間貼るだけで傷口がふさがったんやって!

傷ついてもコラーゲンシートを貼るだけで簡単に修復可能/ Credit: M. Kawai, "Living skin on a robot", Matter, 2022

現時点では、この培養皮膚には栄養を絶えず供給する経路が組み込まれてへんから、培養液から取り出した後あんまり長持ちせえへんらしい。今後は人工的な血管や汗腺を導入することで、持続的に稼働可能なロボット指の実現を目指すんやろな。さらに、感覚器官やその信号を伝達する神経回路を組み込めると、いよいよほんもんの指と変わらんくなってきそうね。

ロボットが「人」になる日が刻一刻と近づいてきている。デデンデンデデン♪

https://www.cell.com/matter/fulltext/S2590-2385(22)00239-9


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