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【京大】バイオディーゼル作った時の「廃棄物」から生分解性プラスチックを作れた!

脱炭素社会に実現に向けて、ヨーロッパを中心に世界各地で植物油などから「バイオディーゼル(BDF)」が製造されている。日本国内でも京都市などでは、廃食用油を回収してバイオディーゼルを生産しており、市バスやゴミ収集車の燃料として用いられている。例えば京都市の方式では、廃食用油とメタノールをアルカリ触媒によるエステル交換反応により脂肪酸メチルエステルとグリセロールに変換する手法でBDFが生産されている。

しかし、この京都市のBDF製造では、高pHかつ不純物を多く含む廃グリセロールが副生してまうことが課題となっている(グリセロールが45%、メタノールが13%、油分とそのほかの不純物が25%で、pH9.3のアルカリ性)。廃グリセロールを利活用するためには、脱脂や中和などの前処理が必要となり、コストがかかり過ぎるんだとか。

そこで、京都大学は水で希釈した廃グリセロールと大気窒素を栄養源として窒素の固定を行う細菌(Azotobacter vinelandii)を用いて、有用なバイオポリマーを作り出す方法を開発しはった!

研究ではまず、この細菌がpH9以上のアルカリ性でも生きられることを確認しはった。そして、水道水で希釈した廃グリセロール溶液内でも生きられることが確かめられた。生育条件の検討を行った結果、最終的には、希釈率が256倍、温度が30℃、振盪(しんとう)速度(サンプルを揺らす速度)が120strokes/minの生育条件で、1000倍以上に増殖し、廃グリセロール中のグリセロールを完全に消費したらしい。また生育3日目から、ワカメのネバネバ成分で、血圧の上昇を抑制する効果やコレステロール値を下げる効果をもち、手術糸としても用いられる、有用なバイオポリマーの1つであるアルギン酸が細胞外に分泌生産されていることも確認された!

この細菌はアルギン酸に加えて生分解性プラスチック素材となるポリヒドロキシ酪酸(PHB)を細胞内に生産することが知られている。そこで、廃グリセロールからPHBが作られたかを電子顕微鏡で定性的に評価したところ、廃グリセロール培地で細胞内に油滴状のPHB顆粒が作られていることが判明した!

廃グリセロールと大気窒素からの有用なバイオポリマーを生産する / Credit: 京大プレスリリース

また、アルギン酸とPHB生産は競合するため、アルギン酸合成を遮断することにより、PHB生産が向上することが知られている。そこで、アルギン酸合成欠損株を用いてアルギン酸合成経路を遮断する生産方法を試してみたところ、PHBの生産性が培養液あたりで約10倍に増大させることに成功した。

今回の研究によって、生育に窒素源を要しない環境調和型・低コスト型の新たな発酵生産システムが開発されたことになる!これによって、BDF 製造から 生じる廃棄物の「リデュース」、廃グリセロールの「リユース」、廃食用油の「リサイクル」の3Rを強力に推進することができるようになるはず!この大気窒素を活用した微生物発酵モデルの確立は「化学的窒素固定」から「生物学的窒素固定」へステージを進めるきっかけになって、持続可能な循環型社会の形成に貢献するやろな。

今後はアルギン酸やPHBだけでなく、アミノ酸や有機酸の生産にもチャレンジするらしい。この次世代の微生物発酵技術が確立されれば、日本の各種発酵産業とも連携することで、窒素循環型社会を支える「新たな産業分野」が誕生するかもしれん!

ゴミと呼ばれていたモノを価値ある商品に変身させる「アップサイクル」の気持ち良い研究例やね~♪


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