見出し画像

ミステリーハンターに憧れて

子供のころから日本各地、世界各国の映像を見ることが好きだった。
息をのむほどの絶景
地域の文化や歴史
そこに息づく人々の暮らしぶり
島国の、これまた離島に暮らしていた少女には
ブラウン管の中に映るそういった映像全てが興味の対象だった。

いまでは放送終了となってしまった数々の番組も
毎週心待ちにしていたのをよく覚えている。

世界ウルルン滞在記
週末のシンデレラ 世界!弾丸トラベラー
恋愛バラエティ あいのり
ラブワゴンに乗っている人たちの恋愛模様よりも
世界中の景色にくぎづけになっていたことを思い出す。

そんな中でも、彼女たちみたいになれたら
どんなに素晴らしいだろうかと憧れたのが
日立 世界・ふしぎ発見!の「ミステリハンター」だった。
彼女たちのように世界を飛び回って
たくさんの景色をこの目で見たい!
たくさんの人と出会い、多くのことを経験してみたい。
射手座らしい冒険味あふれる夢である。
けれど結局、ミステリハンターとして活躍している人たちは、
どこかの芸能事務所に所属している方がほとんどだということを知って夢途絶えた。
それ以降、就職氷河期を乗り越えて
日々の生活に忙殺されていた私の耳には
ミステリーハンターの一般公募があったという情報は届かぬものとなっていた。

長い時が流れて、ミステリーハンターに憧れていたことも
いつの間にか忘れていた2024年3月。
日立 世界・ふしぎ発見!は惜しまれながらもレギュラー放送が終了した。

奇しくも時を同じくして、私はミステリハンターの夢を違う形で叶えることとなった。
それがツアーコンダクターという仕事。
40歳にして踏み込んだその仕事は、基本的には旅程の管理を行う仕事。
それに加え、ツアー客の旅行が豊かになるように工夫するのも大切な仕事のひとつ。
訪れる場所の情報を調べ上げ、豆知識なるものも披露する。
そして、ツアー客が参加できるクイズを出題するのが私のスタイルだ。
「それではここでクエスチョンです!」
クイズを出題するときの私の決まり文句。
言いたかった。何十年もこの言葉に憧れたのだ。
初めてこのセリフを口にした時の興奮を私は生涯忘れないと思う。

大丈夫よ、本家から許可をもらっているのだから。
この番組のレギュラー放送最終回ラテ欄をL字に読むと
「38年間ありがとう 今後は皆さんがミステリーハンターだ」
となっている。
ほら、全人類に向けて本家が許可を出している。

ミステリーハンターに憧れて数十年。
偶然にも叶えることができたその夢は
私の毎日に彩りを与え、多くの体験をする幸せを教えてくれた。
憧れが現実になることを身をもって経験した40代のはじまりを
いま私は、ブラウン管の前に座っていた少女の好奇心と共に過ごしている。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?