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セットリストの組み方

ライブのセットリストを組む場合に、自分が気をつけていることです。

  1. 飽きさせないこと(振れ幅を大きく)

  2. 曲の知名度に注意する

飽きさせないこと(振れ幅を大きく)

似たような曲ばっかりだと、飽きる。
これはセッションでもそうだし、ライブならなおさら。
自分の手持ちのレパートリーを飽きないように配置しましょう。
緩急っていうじゃないですか。速いテンポの曲とゆっくりの曲は適度にバラして配置した方が飽きません。速い曲も二曲続くと案外慣れるものです。

  • テンポ:速い・遅い

  • 調:長調(メジャー)・短調(マイナー)

  • リズムパターン: 4beat、スウィング、ボサ、ラテン、アフロ、ファンクなど

これらの属性が、同じ要素が続かないよう、可能な範囲で配慮しましょう。

曲の知名度に注意をはらう

TPOによってマーケティングは変わります。
「知らないやつが知らない曲を演奏している」は、演奏が相当良質ではない限り、見向きもされません。

私は聴き手視点で「知ってる」「知らない」とプレイヤー視点「よく演奏する」「まれ」の2軸で、四つに分類して考えています。

曲の知名度について

第一象限(右上)

誰でも知ってる「スーパースタンダード」。
(これも年代によってかなり差はありますが)ジャズの定番曲。
特にアウェイでは、一曲でも入れとくと「知らないやつが知らない曲をやってる」状況をかえやすい。
ただ、ジャズ愛好家からすれば「媚びてんな」と思われがち。
ジャズのライブハウスで「玄人筋」のリスナーにこの手の曲ばっかりは興醒めされるかも。できれば、アレンジしたり一手間「仕事」を施すことをオススメします。

第二象限(左上)

プレイヤーの常識、世間の非常識。
セッションばかりしていてジャズプレイヤー界にどっぷり浸かっているとプレイヤー視点に陥りがち。
世間の「ジャズ」のイメージには、セッションではやらない曲も結構ある。
Take Fiveがよい例です。
セッションの定番ではないけど、BGM演奏の場で時々リクエストされたりします。バドパウエルの「Cleopatraの夢」も一般には知られており黒本にも載ってますが、演奏したことないですね。
他にも、Round Midnight、Stardust、Jumpin' At the Woodsideとか…。

ジャズ研3年生以上の中級者は、セッション定番曲の次は昔の(寺島靖国さんとか)ジャズ本を読んで、リスナー視点を取り入れておきましょう。
またジャズからも離れて、他ジャンルの有名曲をジャズで演奏する。これは当代のプロもチャレンジしているところです。Herbie Hancockの "New Standard"は、全編がそういうコンセプトです。

第三象限(左下)

いわゆる「ジャズオリジナル」。オリジナルの自曲もここに含まれる。
バンドや自分の個性を最も出しやすい反面、この象限を主軸にライブをする場合「知ってる曲」のアドバンテージがなく演奏の質だけで勝負する覚悟が必要です。
「玄人受け」ですが、正直集客は難しい。
ちなみに、Tadd Dameron、Cedar Walton、Gigi Griceの3人は「激シブ御三家」だと勝手に思っています。

第四象限(右下)

プレイヤーの常識、世間の非常識(二度言うた)。
プレイヤーとしてだけで活動していると、曲の知名度は偏るものです。
例えば "I'll Close my Eyes"。セッションではヘビロテ曲ですが、曲そのものはあまり有名でもなく、名盤はBlue Mitchelくらい(80年代以降は除く)。
当たり前にやってる曲、ほんとうに、聴き手が知ってる曲?という疑問を常に持っておきましょう。
また、この象限の曲は「セッションの延長か?」と思われがちです。僕はライブでは避けがちにしています。やるにしても、アレンジやリハモでセッションとの差別化をはかった方がいい。

シチュエーションによってブレンドの比率を変える

セットリストの中の4分類のブレンド比をTPOに従って変えましょう。
「ジャズに詳しい人が聞いているのか」(玄人率)
「聞き手の中にはプレイヤーはどれくらいいるのか」(プレイヤー率)
が、気にするポイントです。

例えば地方の「なんとかジャズストリート」みたいなやつで、野外で通りすがりの人にも聴いてもらうなら、第一象限・第二象限を多めに。
ジャズのライブハウスならむしろ第一象限は少なめに。
ジャズ研の定期演奏会、聴き手同士の交流が主体の複数大学参加ジャズフェスなら第三象限を多めに、他ジャンル混在の対バンライブなら第二象限を多めに。ファーストセットがライブ、セカンドがセッションみたいなライブなら、ライブパートでは第四象限は少なめに。といった風に。

まとめ:

いろいろ書きましたが、大事なのは、
「聞き手のことをきちんと考える」です。
曲決めの段階でターゲット=想定リスナー層をきちんと考えましょう。
マーケティングの基本です。

ただこれって所詮は、今ある食材を綺麗に盛り付けるコツにすぎなくて、演奏の質そのものを改善するわけではない。

結局は演奏のクオリティ。小細工を無視して実力でねじ伏せる。
全然アリだと思います。
全曲オリジナルでも、目ん玉ひんむくような演奏すれば、関係ない。
プロはむしろそっちのベクトルで頑張った方がいいのかも。

二流の食材をちまちま料理して小皿に盛り付けるのも料理ですが、いい肉を塩振って焼いてどーんと「食べてみな!」が一番感動する。

ただ、それってかなり難しくて、相当いい肉じゃないといかんのよ。

「第三象限」で勝負することは、「膨大な過去のアーカイブを掘り起こす」というジャズのあり方ではなく、新たな地平を切り開くことを意味します。
チャレンジする意義は大きい。しかしこれ一本で活動を持続させるのは正直なかなか難しい。
ポイントは「知らない奴が知らない曲」の前半、つまり知らない奴を知ってる奴に変えること。個人に興味を持ってもらう、例えば、ある種のキャラ化であったり。

凡人はオトナの知恵で盛り付けにも注意を払いましょう。


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