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ワクワクとうんざりはセットなのだ。

新しい町で暮らし始めて二ヶ月半、入り口の一坪スペースで小さなギャラリーショップを始めてもうすぐ一ヶ月になります。

基本的にお店部分は無人スペースで、肩幅半分ほど表の戸を開けている状態なので、

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お客さんが入ってくると「ガラガラ…」という音がするか、肩を横にしてそっと入ってくる器用な方もおられて、そんな時は、ふいにお客さん同士の会話がしたり、お一人様の場合は本や古雑貨などを手に取っておられるらしき「カタン、コトッ」という音がしてようやく気づくのだけれど、呼ばれる(声をかけてくださるか、チン!と呼び鈴を押してもらう)まで待つか、3〜5分程しても店を出て行かれない場合に、横の部屋から顔を出して挨拶をするようにしていて、ただその場合「お客さんにゆっくり見てもらえるようそっとしておく」ことと、「お客さんを放ったらかしにして無視するような状態」が紙一重なので、ほどよい塩梅にいつも迷ったりして…

1日の終わりには程よい疲れとともに、「今日はこんなことがあった」「こんなお客さんと、こんな風に会話した」「こんな人と知り合えた」「まさかアレが売れるとは思わなかった」「お客さんからいい情報をもらったなぁ」など、一つ一つの出来事を反芻して、心地よい眠りについたものでした。

でも、そんな状態だったのは二週間ちょっとで、なんだろう、自分の中で早くもワクワク期間はひと段落してしまった感じです。

前回、開店当日に書いたnoteを読み返すと、「お店をすることは自分にとって創作で、発表の舞台でもあるし工房でもあり、仕入れ(ヒントや素材の)の場でもある」と感じていたこと、そして「お店をすることは、まちの(今と未来の)風景をつくること」という視点から、自分も店主というキャラを通して何かや誰かに関わっていきたい」という決意をしていたようで、実際、その直後から「この地域の町並みを守るために、古民家を使ったお店の利用客を増やしたい=訪れる人に寄り道多めの散歩をすることを楽しんで欲しい」と考えて、『お散歩ルートナビ』という仮タイトルのガイドブックを作るべく、クラウドファンディングに挑戦しようと、プロジェクトの記事を作成してきました。

散歩のルートのイメージはこんな感じ。よくある観光マップのようなお店の詳細情報ではなく、「ルート」そのものを大事にしています。

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地図の上か下には「すごろく」のような、こんな図も入れたいです。カメラのマークがある所には、別ページにショップや名所の写真が入ります。

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上の二つの画像では、実際のクラウドファンディングのページに載せる内容から固有名詞を外していますが、まちに猫ともう一種類、動物がいるので、ここが何県何市でどの辺りかを察していただけるかと思います。

今まで、ネット上で引越し先や自分のお店の場所について伏せていたのは大家さんが物件情報サイトに「できれば住居専用で」と書いておられたこともあり、「ネット等で宣伝をしません」と契約時にお約束していたことが理由の一つでしたが、そもそも宣伝する必要を感じなかったのが本音です。

ただ、お店を始めてから写真と近況をお手紙でお送りしたところ、「可愛い店ですね。どんどんインターネットで宣伝して繁盛させてください」という、思いがけずあたたかなお言葉をいただき、ああ、この地域を盛り上げるための記事なら場所を特定させてもいいかなぁ、と。

観光地(の少しはずれ)なので来る方は少なくないのだけれど、この界隈では名所への移動のために「通過する」だけの方が多いようなので、あみだくじや迷路のように行き止まりすら楽しんで欲しいし、その合間にひょっこりお店を見つけて入って欲しくて。なぜ見つけて欲しいかというと、楽しいから。ちょっとワクワクするからってだけなんだけど。この地味な良さを人に伝えたい、ただそれだけの欲求が私を動かしています。

そのためのガイドブックを作るにあたり、周辺の加盟店や地域の方の寄付などでお金を集めて制作するのではなく(協賛店や関係者に気をつかう内容になるか広告っぽくなって自由に作れない可能性がある)、ネット上で一般の方から資金を求めるクラウドファンディングの形をとることで、より自由に公正に制作できるかなと思っていて。撮影や記事を書くのも、この地域のことを知らずまっさらな状態で見てくれる方(旅ブログや、まち歩きの記事を書く方など)に依頼したくて、そのための交通費等を捻出したいと現時点では考えています。

ところで、プロジェクトとして広く資金を集めようとする場合(小額でも)、あるいはガイドブックを作って頒布したりネットで広く公開する場合、上のような地図やイラストとは別に画像等を載せることになる際、掲載の許可と内容の確認が各所に必要になるということで、現在、お寺を含め個別に問い合わせているところです。

途中段階なので地名等を伏せましたが、いずれnoteでもクラウドファンディングを紹介したいので、その時、改めて全体像を見ていただけたらありがたいです。ちなみに、リターンにはこのような「あなただけのお名前カード」10枚、というものも考えています。

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お名前やニックネームをこのように「かな」か「カナ」で表現するものです。「ありがとう」などや、ご贔屓の宝塚スターさんのお名前(愛称でも)やジャニーズの推しさんなどでも喜んでレイアウトします。おうちプリントではなくちゃんとオンデマンド印刷します。

他に、自作のポストカード(二枚組)などもリターンに設定しています。

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さて、表題の「ワクワクとうんざり」の件。

クラウドファンディングのことを熱心に書いている一方でこんな話もどうかと思うのですが、今までお店の開店前にあちこち散歩をしてルートを考えてイラストや記事にして、というところまでは乗り気だったのに、各方面への画像使用の問い合わせやリンク等のお願いをする段階になって、もう心が折れそうになっていて…なんで私、一銭にもならないのにこんなことしているんだろうって。なんで私、誰のためにこうして人にお願いしたり説明したりしているんだろうって。ふと、我にかえるというか。

お店も、自分の本棚にあった古本が少しずつ売れたり、noteのヘッダーに載せている画像をポストカードにしたもの(今回のオレンジのものもポストカードに加えます)が売れたり、不用品だったものを喜んで買ってくださる方がいてよかったと思ったりする時期を過ぎて、今は…

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これまで、無人展示にもかかわらず無断で持ち去られることもなく、むしろ皆さん、隙間をわざと開けているのに帰るときに礼儀作法というか習慣で表の戸をきっちり閉めて行かれることに苦笑するほど「いいお客さん」が多いなぁ、と思っていたある日。

「私の作品もここで置いて(売って)もらえたりしますか?」という方が来られたのです。「ちゃんと綺麗に袋に入れてきますので」と…

その方は、一度お店に来られたことのあるお客さんのお連れとしてみえて、お店をざっと見渡して、おもむろに作品を出されて。個展の案内状をくださり、明日までなのでよかったら見に来てもらえたら、とも。

それで私はというと、つい「ああ、いいですよ。明日ちょうどお店を休むので展覧会にも行きますね」って、安請け合いしてしまったのです。

その方の作品が魅力的だったとしても、その方が感じよくて「誰かに作品を見て欲しくて」という願いを叶えてあげたいと思ったとしても、だけど自分の作品と自分のセレクトした古雑貨、古本で構成された一坪の空間に、たまたまやってきた方の思いつきで「私のも」と言われるのは、それで一緒に「作品」として置くのは、それはあまりにも自分にとって切ないのです。

なんのために何箇所も物件探しをして、なんのために遠方の大家さんに家賃交渉をするために新幹線で会いに行って、なんのために釘一本も打たずに展示を工夫したのだろうか、という思いが募ってしまって。

その方に、他のお店(委託販売をしている雑貨店など)には売り込んだのかやんわり聞いたところ、そんな(ちゃんとした店にお願いするなんて)ことは思いもつかないようで、私の店がガラクタだらけ(私の中では厳選しているつもり)なので、「ここなら置いてもらえるだろう」と思ったのだろうなと。私が気弱でお人好しに見えるというのもあるかもしれませんが…

その件があって、「はぁ、なんだかお店って面倒くさいな」と思い、何より冷静に「無理なんですよぉ、ごめんなさいね〜」とさらっと対処できない自分に一番苛立ちました。知り合いに「ちょっと手の空いたときにロゴデザインをお願いしていいですか?」と言われた時の自分の態度に腹をたてるのにも似ていて。

セールスには対処できても、そういった売り込みというかお願い系を予想していなかったので、今後はこの空間についての自分の考え、哲学をしっかり持たねば、と思いました。

そんな自分が、後日、自作のZINEを書店に置いてもらえるか、審査してもらうために見本誌を預けに行った時、お店の方が、まぁもう、無表情の中に何パーセントか絶妙に「迷惑!」という表情をブレンドされた様子で、「一旦お預かりはします」とおっしゃるものの、それ以上はなんの言葉もなく。その応対を見た時に、私はがっかりするよりもまず、「ああ、よほど売り込みが多いんだな。なるほど、売り込みやお願い系には、この顔と態度が正解なんだな」と学ぶことができました。私は無邪気な人の押しには弱いが、自分自身は打たれ強いのかも。

収穫だったのは、モヤっとした後には必ず創作意欲が湧いてきて、この一連の話を漫画にしたくて早速ワクワクすることでした。やっぱりお店、いろんな人に出会えて面白いかも!

ワクワクの後にはうんざりがあって、その後にはまたニューワクワクがある法則を実感したところで、苦手な交渉などをなんとかやり抜いてクラウドファンディングを成功させて(失敗したら自腹でやるしかない)単純に愉快な『お散歩ルートナビ』を完成させたいです。

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どなた様も良いお年を〜