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大人の自由研究(てしごと日本地図)。

過労で仕事を休むことになり、とはいえ旅に出ることはできず、だるいからと家でぼんやりだらだら過ごすのも手持ち無沙汰なので(本当は断捨離とか掃除などやることは山ほどあるのに...)、休みの間に少し子供の頃の自由研究みたいなことでもしようかと、「てしごと日本地図」を作りました(一部量産品もあり)。

次の旅の行き先か将来の移住先を検討できたら...という目的もあって。


手しごとMAP(スペースの関係上載せられなかったものも多数あり)


日本全国、郷土玩具や伝統工芸品、またそれらに認定や分類されずとも素敵なものはたくさんあり、地図にすべて載せることはできないので、自分が実際目にしたものや興味あるものを中心に載せました(食品は除く)。

だるまや張り子の犬、天神さん(いずれも広い地域で玩具になっている人気のモチーフ)や熊本県八代市の「板相撲」などは「いせ辰」のおもちゃ屋柄の絵葉書にも描かれていますが、他にも今回地図に載せなかった玩具がたくさんあるのが分かります。(伝統)工芸品はさらに、言わずもがな...

日本地図のベースは小学生の学習教材【ちびむすドリル】のものを参考にしました。(イラストでは本州、四国、九州を拡大)

今回各地の産品を載せるにあたり、スペースが狭くて海に大きくはみ出したのが関東と関西でした。今さらだけど、こんなにも都道府県によって面積に差があるとは....東京と大阪、小さいっ。

仕事で文具や雑貨用に、郷土玩具や縁起物を描くことがたまにあり、資料として書籍等は保有していたものの、私個人は郷土玩具そのものを熱心に集めているわけでもなく、自ら買い求めたものはわずか。縁起物や干支人形なども含め、キーホルダーや人形、置物をなぜかいただくことが多く、ほとんどを仕切りつきの収納ケースに保管しています。

ただ、2007年頃、鳥取県へ旅をした時に倉吉の民芸店で「北條土人形(れんべえ人形)」(画像左)と「柳屋さんのしょろしょろ狐」(中央)を何気なく購入して、その数年後にまた倉吉へ出かけたところ駅舎が改装され、駅前も雰囲気が変わり民芸店が閉店していたことで、「もっと他の作品も見ておけばよかった..」という思いが募り、それから個人的に関心を持つに至りました。世の中的にも、中川政七商店と海洋堂さんのコラボ「まめ郷土玩具」の発売やこけしブームなど、郷土玩具人気が高まったことも重なり...

例えばこんなチラシを出先で見つけると他府県でも「あ、見に行かなきゃ」と血が騒ぐというか...

イラストレーターの安西水丸さん(鳥取の郷土玩具や民芸がお好きだとか、江ノ島のお土産店で素朴な置物を買われたり、というのをテレビや雑誌、展覧会などで知って)のコレクションや作品に「おおっ」と身を乗り出したり、染織家・デザイナーで収集家でもあった芹沢銈介さんの作品のモチーフに郷土玩具や沖縄の工芸品を見つけて「おわ〜」と興奮したり。

郷土玩具に限らず、散歩中に縁起物や魔除けの品などを見つけると足を止めたり。(写真は上から田中瓦店さんと、町家の小屋根の小さすぎて一瞬見つけられない鍾馗さん、日本各地の土人形の元になった伏見人形の窯元・丹嘉さん

さて。地図から一部をご紹介。

北海道、網走市のニポポ。記憶の限りはじめてお土産でもらった郷土玩具。手のひらサイズで「願いを叶えてくれるお守り」との説明が書かれていたので、時折握ってみたり、特に可愛いわけではないけれど何か神聖な面持ちなので今も手元にある品。底面に「網走刑務所」の焼印あり。

滋賀県、信楽のたぬきの置物。散歩すると鍾馗さんより多く目にする身近な存在。信楽の里では気が遠くなるほど並ぶ光景(写真は2001年)に圧倒された記憶あり。ちなみに地図に入れなかったけれど滋賀といえば、「大津絵」(鍾馗さんや鬼の念仏など)も味わい深い。

鳥取県、倉吉市の白壁土蔵群にある「はこた人形工房」前にある巨大「はーこさん」。上に載せた鳥取の人形たちと共に、私に強烈なインパクトを与えたお人形。

鎌倉に住んでいた頃、喫茶店で総織部の器で和菓子が運ばれてきて、なんと素敵な...と思ったのが最初の出会い。値段もお手頃なので(1枚五百円〜)、小皿などたくさん買ってしまうがあまりに好きでよく使いよく割る品。地図上の産地は岐阜になります。

青森県・八戸市の八幡馬。宮城県・仙台市の木ノ下駒や福島・三春駒と共に日本三駒と呼ばれる。馬にゆかりのある京都・伏見区深草の藤森神社境内の宝物殿にある「馬の博物館」コーナーで日本各地や世界の置物と共に飾られ、その中でも一際目立つ存在。神社にあるのは小型犬ほどの赤と黒の八幡馬で、胸元に向かい鶴の紋入りで周囲にも華やかな模様が描かれ、立派なたてがみと尾がシャキーンとつき、堂々としている。

先日大阪の喫茶店で、裃姿の小さな猫が3つ、右手をあげたり左手をあげたりしてキャビネットの上に並んでいるのが可愛いので話を聞くと、住吉大社で毎月(偶数月は右手、奇数月は左手をあげている)一体五百円で授かり、それが48体(初辰の日に参拝すると良い。48辰=始終発達)揃うと中猫に交換、さらに子猫48+中猫2体で大猫に交換(12年かかる)、左右の大猫を揃えるには24年要するとか。猫の姿良し、左右の違い良し、小中大の変遷良し、満願までの手間もまた良し。でも毎月お参りする根性と48体飾る場所が私にはない...

埼玉県・岩槻市の岩槻人形。人形店「東久」さんにお邪魔した時、古い人形の修復作業を少し見学させてもらえた。併設の「お人形歴史館」には年代もののお雛様がひしめき、それぞれの人形の背後にはるかな時代の人たちの営みが見えるようで圧巻。近々さいたま市の計画で立派な人形博物館ができるらしいですが...身近に人形を見学できる機会も残して欲しいなぁ。

和歌山県の棕櫚箒。ネットで評判を知り目星をつけていたものの、一度実物を確認してから買いたくてデパートの家庭用品売り場で尋ねると「は、箒ですか?...箒のお取り扱いはございません」とのこと。別のデパートでも諦めムードで「あのぉ、棕櫚の箒なんて、こちらには置いておられませんよねぇ?」と尋ねてみると、家庭用品売り場にはなく、ただ「全館で一度確認してみるのでお時間を下さい」と店員さん。10分後くらいに連絡があり「現在、期間限定で出店しているアパレルのセレクトショップに置いております!」と。売り場では棕櫚の箒は北欧雑貨やゆるいアフロ犬イラストのバッグなどと共に実用品というよりインテリア雑貨として展示されていたのでした。

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郷土玩具や伝統工芸品は近頃、ネットショップや都市部のアンテナショップ、セレクトショップなどで目にしたり入手することが比較的容易になり、今回のように産地を地図にしてみたところで、実際に「箒を探しに和歌山へ」、「織部を探しに岐阜へ行こうか」..とはなかなかならないものです。

そんなことを考えていたある日、愛媛県松山市の親戚から、夏みかんやご当地の銘菓ポエムなどが送られてきて、そこに「松山百店会会報誌」なるフリーペーパーが添えられていました。正直なところ、ポエムや一六タルトなど人気の菓子は物産展へ行かずとも百貨店に常設の「ふるさと銘菓」コーナーや最近では近所のスーパーでも結構頻繁に地方の食品を売っていたりするので、「わー懐かしい、松山のだ」とはならず、先日も名古屋の親戚が「海老せん「ゆかり」をお土産に持って来たけど、着いてすぐに京都駅の伊勢丹でも売っているのを見て焦った、ごめん、いつでも買えるものを持ってきて..」と恐縮していて、確かに「その土地でしか買えないモノ」って今の時代、なかなか難しいなと。

でも、フリーペーパーからは新鮮な「今現在のご当地の空気」を感じることができて、実際に旅してみたくなったのです。(画像は冊子の表紙と、空襲を逃れた三津浜地区に残る江戸期、明治、大正時代の建物をリノベーションしてショップやギャラリーに有効活用している事例を紹介する特集ページの一部)

「やっぱり、モノだけじゃないんだなぁ」と、改めて気づかされました。現地にしかないものは、その街の建物、人、空、湿度、歴史、物語など、箱に入れて持ち運べない何か。

京都、伏見人形。京都に住んでいると、普段「生八つ橋」や「京料理」を食べないようなものというか、ことさら京人形だとか清水焼など特に意識して買うことはないのですが、それでも通りを歩いていて京焼の店や人形店をふらっと覗くと、思いがけず手頃な値段で素朴で愛らしいものに出会うことがあります。

(画像は伏見人形の窯元・丹嘉さん)

三条木屋町付近の「京人形 小刀屋」さんでは祇園祭のミニチュア鉾や季節感ある置物が店頭に並び、四条通りの田中彌さんでは大人買いしたくなるお雛様なども展示されたり、一度は小箱に乗った猿の木彫りからくり人形に心惹かれ真剣に迷った(当時の家賃一月分ほどの価格)ことがありましたが、どちらの店も千円未満のものからあります。

また、いただき物の今年の干支・戌の土鈴は、清水焼団地町の「人形の藤原」さんの作品で、上記の「小刀屋」さんや清水焼の郷会館などで一部製品は取り扱いがあるかも...

今回の作業の参考資料&オススメ博物館:

・日本玩具博物館(姫路市)(館長:井上重義氏の著書『ふるさと玩具図鑑』も)

・鳥取民藝美術館(鳥取市)、たくみ工芸館(鳥取民藝美術館の隣)

・河井寛次郎記念館(京都市)

・木戸孝允旧邸・達磨堂(京都市)(木戸忠太郎氏の達磨コレクション)

・静岡県立芹沢銈介美術館(静岡市)

・国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)(2018年7月〜9月には『ニッポンおみやげ博物誌』という企画展が予定され、鮭咥え熊や赤ベコなどが登場するようです)

日本の伝統工芸品については、日本の伝統産業を応援する求人サイト「四季の美」日本全国の伝統工芸品一覧を参考にしました。

〈おまけ〉京都の老舗人形工房で制作していただいた箸置き。非売品で飲食店(「旬ダイニング すいば」さん)用ですが、デザインを一部担当している関係でサンプルをいただきました。土の産地は信楽だったかもしれませんが、一連の制作工程から、これも京人形の系譜になるかと...

(画像はお店の公式サイトからお借りしました)

私が提出した簡単な指示書に対して、腿の膨らみやトサカの形状を何度か試作を経て「ゆるく」「ちゃんとしすぎない具合」に原型を作っていただいた加減が絶妙です。最後の着彩に至るまで「てしごと」の結晶がここに。工房の制作風景に思いをはせ、お借りした画像を載せました。ありがとうございます。

さて、自由研究第一弾を終えた現時点での心境。次の移住地は未定ですが、取り急ぎ旅をしたいのは千葉、岐阜、その前に、奈良の一刀彫りについてはあまりモノを買わない私が久々に購入を視野に工房見学を予定しています。

長々と失礼しました。どなたかにとって何かしら気晴らしや旅のきっかけになりましたら幸いです。

【追記】てしごと日本地図を作った時、crafsとなっていて、craftsに変更しないまま、ブックカバー やポストカードにしてお店やイベントで売っていましたが、2020年ごろにしおりを作って、その時はcraftsにしました。沖縄は裏面にあります〜