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そこらへんの幸せ

 ディーンアンドデルーカの塩パンが、すごく美味しかった。

 友達が、今日の晩ごはんはディーンアンドデルーカで買って帰ろうと言い、わたしはパンを選ぶ担当になった。
 どれも美味しそうで、そこから選べと言われると「決めるのが大変だからもう食べなくていいです…」と気弱になってしまうタイプだから、ひるんでしまった。
「塩パンとか、いいんじゃない?」と言われて、丸くて大きくて、過不足なくて、本当に素晴らしく良い意味で「これでいいじゃん」と思った。

 塩パンは、思ったよりもずっしりしていて、しっとりしていた。溶けるよう、というのは少し違うのだけれど、もくもくと、いくらでも食べられそうな味と、質感だった。
 食べている、という感じがした。
 エネルギーになる、という感じだと思う。
 ずっしりとしっかりと、生きてゆけるような。

 他に買ったチーズのパンとか、きのこのパンもすごく美味しくて、そもそもディーンアンドデルーカのパンそのものが美味しいということも大きな学びだったのだけれど、飾り気のない塩パンが、やっぱりいちばん美味しかった。


 愛はコンビニでも買えると思う。
 久し振りに食べたファミマのメロンパンはやっぱり美味しくて、半分だけのつもりが、ぜんぶ飲み込んでしまった。ふわふわと軽く、しつこくない。

 いつも同じ味のものが、同じ値段で、いくつかの場所で買える。ということに、わたしは安堵する。
 深夜の牛丼、コンビニの梅おにぎり、ファミマのメロンパン、そして、ディーンアンドデルーカの塩パンが仲間入りした。

 さびしいときに、思い出す。
 数百円で、さびしさと空腹を埋める方法がある。
 そこらへんに幸せはある、必ず。
 安堵して、勇ましくなる。

 これからわたしは、ディーンアンドデルーカの白い看板を見つけるたび、あたたかく胸をなでおろすのだろう。





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松永ねる
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