フライパン
ときどき、フライパンの中身を覗き込む。
それはわたしの晩ごはんだったり、お弁当のおかずだったりする。
今じゃなくても、いつかわたしが食べていいものが乗せられているわけだから、気になって覗き込む。
今日は、色とりどりの野菜が、きちんと炒められて行儀よく並べられていた。
「夏野菜炒め」とつぶやいたら、「そうだよ」と返ってくる。
ズッキーニから、夏の匂いがした。
しばらく経って、またフライパンを覗き込むと、大きなお肉の塊が、みっつ並んでいた。
さっきまで、夏野菜炒めのフライパンだったのに。
なんだか不思議な感じだった。
フライパンには、いろいろなものが並べられる。
お肉も、お魚も、野菜も
深いフライパンなら、パスタが放り込まれていることもある。
*
うちにはいくつかフライパンがある。
大きくて深いもの
大きくてふつうのもの
小さいもの
四角いもの
それぞれに役割があるのだろうけれど、わたしにはよくわからない。
大きいフライパンは、なんだかほっとする。
何を入れても大丈夫、のような気がする。
懐の深さを感じる。
お肉も、お魚も、野菜も、パスタも、
みんな受け止めて
炒めても、煮ても、茹でても大丈夫。
お塩もお醤油も、みりんもめんつゆも、
あるときはケチャップとソースだって受け止めて、任務を全うする。
あるときは、カレーだってフライパンの上にいる。
だいたいのものは、フライパンが受け止めてくれる。
そう思ったら、妙にやさしい気持ちになった。
フライパンは、やさしい。
わたしもフライパンみたいになりたい。
どんなものでも、炒めたり煮たりして、美味しくしちゃう。
フライパンみたいな、やさしくて懐の深い人になりたい。と思う。
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