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フライパン

ときどき、フライパンの中身を覗き込む。

それはわたしの晩ごはんだったり、お弁当のおかずだったりする。
今じゃなくても、いつかわたしが食べていいものが乗せられているわけだから、気になって覗き込む。
今日は、色とりどりの野菜が、きちんと炒められて行儀よく並べられていた。
「夏野菜炒め」とつぶやいたら、「そうだよ」と返ってくる。
ズッキーニから、夏の匂いがした。

しばらく経って、またフライパンを覗き込むと、大きなお肉の塊が、みっつ並んでいた。

さっきまで、夏野菜炒めのフライパンだったのに。
なんだか不思議な感じだった。

フライパンには、いろいろなものが並べられる。
お肉も、お魚も、野菜も
深いフライパンなら、パスタが放り込まれていることもある。

うちにはいくつかフライパンがある。
大きくて深いもの
大きくてふつうのもの
小さいもの
四角いもの
それぞれに役割があるのだろうけれど、わたしにはよくわからない。

大きいフライパンは、なんだかほっとする。
何を入れても大丈夫、のような気がする。
懐の深さを感じる。

お肉も、お魚も、野菜も、パスタも、
みんな受け止めて
炒めても、煮ても、茹でても大丈夫。
お塩もお醤油も、みりんもめんつゆも、
あるときはケチャップとソースだって受け止めて、任務を全うする。
あるときは、カレーだってフライパンの上にいる。

だいたいのものは、フライパンが受け止めてくれる。

そう思ったら、妙にやさしい気持ちになった。
フライパンは、やさしい。

わたしもフライパンみたいになりたい。
どんなものでも、炒めたり煮たりして、美味しくしちゃう。

フライパンみたいな、やさしくて懐の深い人になりたい。と思う。




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