見出し画像

向きとか不向きとか

「あのときは、声の出し方間違ってたんだねえ」
そう言われる前の夜、わたしは考えていた。

はじめての20分のライブを迎える、その前日
3曲だとまとめられなくて、4曲にしたけどMCが難しい。
わたしはスタジオで、ストップウォッチを睨んでいた。
そもそも、4曲と決めるまでもすごく時間がかかってしまい、予約した2時間を迎えようとした。

煙草を吸って、もう1時間うたうことにした。
ストップウォッチを見つめながら、わたしは「懐かしい」と思った。

そうだ、30分のライブをひとりで最初にやるときも
こうしてストップウォッチを睨んでいた。
いつしかそれは、睨まずとも感覚がついてくるようになったんだ、と
そんなことを思い出していた。

3時間うたいきったあとも、
受付の女の子に「まつながさんくるときもあくびしてましたね」と言われたのに
笑って答えて、のろのろと煙草を吸って
そうだ、こんなにうたったのに喉が痛くない。と思った。
3時間うたう、その歌い方をわたしはかつて知らなかったのだ。
2時間でしっかりと喉を潰していた。

「すごい進化したね!」と言われたのは、ほんとうにうれしくて
自分でもあった手応えが、外からもわかるようになったというのがほんとうに
諦めずに練習して、曲も作って、素直に教えを乞って、
下手でもとにかくライブをしよう、と突き進み
その過程で、ライブに誘ってくれたみんなには、ほんとうに感謝していて
ここまできてよかったな。

声の出し方を間違えていたあの日々に、
もし、わたしがわたし自身に
「やっぱりうたは向いてない」
「下手だからやめよう」と
レッテルを貼っていたら、今日のわたしには出会えなかった。

30分のライブも最初はうまくできなかった、
はじめての20分のライブも当然難しかった
このあいだの40分のライブも難しいと思った。
でも、20分と40分と比べたら
30分のライブは、自分なりにうまくできるようになった気がする。
なーんていうMCを、したところだったね。

向き不向きなんてかんたんに言うけれど、
不向きと断言できるほとんど、向き合ってみただろうか。

不向きと思っていたうたに、わたしなりに全力でぶつかって
わたしはわたしの速度で、うたとか音楽とかピアノが好きで
そう、好きになることができて
やってきてよかったと思っていて

そういうのを、背中で語れるおとなになりたい。と思っていた。
少しだけでも語れたかな、て思ってる。

全部がうまくいくわけじゃない
人より時間がかかることを、ほんとうは不向きって言うかもしれない。

でも、君が、誰かが、僕の友達が
「やってみたい」というときは
絶対に「やってみな!」て言いたい。人殺しとかじゃなければ…
だいたい最初からうまくいかないよ、
思いっきり転んだら笑って手を差し伸べてやるよ、わたしもそうしてもらったから
すました顔によりよっぽどいいよ、と思うし
無責任に誰かの夢を笑うくらいなら、
無責任に誰かの夢をを励ましてやりたいよ、わたしは。

スタバに行きます。500円以上のサポートで、ご希望の方には郵便でお手紙のお届けも◎