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いいだよ、べつに

このあいだ、死んだ祖父が夢に出てきた。
一緒に住んでいた人だけど、わたしが家を出てから亡くなったので、あまり大きな喪失感はないし、でも思い出したりはしないし
でも、確かに好きな人だった。
そんな救急車もすぐこないような田舎で煙草吸い続けたら死ぬよ、と言われて、煙草を吸い続けて死んだ人。
わたしは、煙草に関して両親に叱られたりしなかったけど(もちろん良い顔もされてない)、父に「祖父母の前で吸うな」と言われた約束を、わたしは最後まで守り抜いたので、祖父とは一緒に煙草が吸えなかった。
最後に会ったのは、亡くなる前の夏に実家に帰ったとき。確か21の夏
顔を見せに寄っただけだった。
じゃー帰るから、と言ったわたしにめずらしく「なんだもー帰るだか」と言ってきた。
全然元気だったのに
やさしい人だった?
よくわからない。
あまり血の繋がりを強く感じない人だ、顔も性格もあまり似てないし。
でも、確かに好きだった。

そんな祖父が夢に出てきてわたしにこう言った。
「いーだよ、べつに」
わたしは何故だか父に会いに行かなきゃ、と思ってた。
でも別に行かなくてよい、と確かな静岡弁、祖父の言葉でそう言った。何度も、いーだよ、と。
その言葉がなんだかえらくありがたくて、
でもわたしはなにも言えなくて、
ただ、祖父の背中を叩いた。

ねえ、
別にいーだか、
会いに行かなくても、
いろんなものとの距離の取り方がわからなくなって、雁字搦めになっても、
そんなに気にしなくていーだか
ねえ、別にいいだか

いいだよ、別に
きっとあのひとは、表情を変えずにそう言う。
もう会えない人だから、別にいいじゃないか。祖父はきっとそう言う。と思うことにする。
そしてわたしは、そのことに勝手に救われる。
それでいいだよ、別に

あなたを思い出せてよかった。
いいだよ、別に
そんな風に言ってくれてありがとう。
いつかあなたと一緒に煙草を吸いたい
きっとあなたは、なにも語らないだろうけど

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