今日もわたしは、カーテンを開ける。
「晴れた日の朝、カーテンを開けるみたいにスッキリするかもしれないよ」
と、言われたことは、今でもハッキリと覚えている。
恋人と別れるべきか、悩んでいるときに掛けられた言葉だった。
わたしは離れるべきなのか、離れたいのか、よくわからなくて、ずっともやもやしていて……今思えば、そんな不安をひとりで抱えていたのだから、もう恋は終わっていたのだと思う。あったのは見栄だけで。いや、それこそを恋と呼ぶのだろうか。もうわからないけれど。
カーテンを開けて、日差しがさあっとひるがえすのを想像した。
何にでもなれるような、晴れやかな光だった。
その恋人とは結局別れて、思い通りの晴れやかさなんて全然手に入らなかった……という話はさておき、実は、「起きたらカーテンを開ける」という暮らしをしたことがなかった。
一人暮らしの1Kを想像すれば、なんとなく部屋の最奥にカーテンがあって、そこを開けるだろう。と思うのだけれど、そんなふうに暮らしていなかったと記憶している。大学の頃の記憶は曖昧だけれど、それ以降の20代は、眠るために帰っていて、家にはあまりいなかった。
30代になってからは1階に住んでいることが多かったり、日中は仕事でいなかったり……朝一度カーテンを開けて、家を出るときに閉めなきゃいけないの? 大変じゃない?
37歳、秋。
いま、ようやくカーテンを開けている。
夏は日差しがキツくて、全然ダメだった。カーテンで日差しを遮らないと、部屋は地獄のように暑い。
いまは朝、サアッとカーテンを開けて、外をぼおっと見て、そのまま出かけたりしている。そしてときどき、あのときの言葉を思い出す。
スッキリしないことも、予定通りにならないことも多いけれど
あのときは、隣で笑ってくれてありがとう。
おかげで、カーテンを開けるだけで、ちょっとだけ元気になれる。
あの日の情けなさを乗り越えて、今日もわたしは、カーテンを開ける。
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