そんなこと
朝早くから出掛けなければいけない用事があった。
明るいうちの電車は、外がたくさん見えておもしろいな、とぼおっとしていたら、見覚えのある風景が飛び込んできた。
母校だ。
4年間通った大学。
懐かしいと感じた刹那、
あの道を通っていたときのことを思い出そうとした。
ぜんぜん思い出せなかった。
確かに、もう大学を出てから10年ほど経つし、思い出す回数も減ってきた。
ずいぶん遠くへ来た。
なにも変わっていない気もするのに。
すべては気の迷いかもしれない、
まあそんなもんか、
いやそれにしても薄情過ぎるだろう、なにも思い出せないなんて、と考えてすぐ気がついた。
そうだ!
わたしは在学中に二度引っ越しをして、あの道を通ったのは最初の1年だけだったのだ。
2.3年の頃は反対側の道を歩いて踏切を越え、
4年になったらあちら側のセブンイレブンの前を通って正門に直通だった。
なあんだ、そうか
そうだよなあ…
自分がそれほど薄情ではなかったことに、
いたくほっとし、なんだかにやついてしまった。
ああそうだ、そうだった。
そんなこともあった
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