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お気に入りのピザのこと

「どうしようかなあ」とけっこう大きな声で言っていたので、
「どうしたの?」と尋ねてみた。
わたしはけっこう、親切な奴なのだ。

「友達が来るから、喫茶店的なところに行きたいんだけど」
「じゃあ、駅前のカフェは? ピザのところ」
「ピザぁ??」とまぬけな声が返ってきたので、丁寧に説明してあげた。
わたしが一度買ってきたピザ。
あなたと一度買いに行った喫茶店の、あのピザのこと。
おいしいって言っていたじゃないか。

「ああ、あそこね」と頷いた。
「ついでに、ピザでも買ってきておくれよ」

近所のカフェは、2年前にオープンしていたらしい。
ぜんぜん知らなかった。
家とは逆側で、平日2日間がお休みで、たったそれだけの理由で、2年間もエンカウントせずに過ごしてきちゃったらしい。
最近の散歩で開拓をして、
何度かお店の前で観察したあと、3度めくらいに中に入った。
それからコーヒーを飲んで、パニーニを食べた。

2度めに行ったときにはお土産のピザを買い、
春には桜を見ながら、一緒にピザを食べた。

チェーン店のピザも
スーパーのパンみたいなピザも
大好きだけれど

あのカフェのピザは、少し特別。
特別なときにだけ
ちょっと嬉しいときにだけ
遠回りして寄って、コーヒーを飲んで
機嫌がよかったら、家族の分もお土産にして

そんな少し特別や
ちょっとのお気に入りを、増やして生きていけたらいい。と思っている。

お気に入りの花屋で買う一輪の花とか
絶対に外さないアイスとか
店内をぐるりとまわるだけでしあわせになれる雑貨屋とか
部屋に飾った一枚のポストカードとか

お気に入りを増やして
少しずつ囲まれて

そういうふうに生きていけたらいいんじゃないか。
と、思っている。





※この街のケーキ屋のこと

※この街の花屋のこと


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