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#6 ある小説家からの版権の山(Remaster)

バンドメンバーのタコ山さんが、行方不明になった。
彼は、見てのとおり、どう見てもドラマーだ。

左:タコ山氏(Dr)、右:イカ次氏(Gt)

そして、小説家の一面もあったのだ。
誰も俺を認めない、俺にはもう小説は書けない、ほむほむ、と言い残し、やけになったタコ山さんは、わたしに大量のテキストと著作権を残していった。

タコ山さんは、小説なんて書いたこともないのに、ある日とり憑かれたように、小説を完成させたのだという。

その勢いのまま、大きな公募賞に応募した。すると、知らない電話番号から着信が。「ぜひ出版させてください」。そんなことがあるのか? だが、出版は叶わなかった。出版社で打ち合わせまでしたにもかかわらず、担当者からの連絡が途絶えた。そして、出版社のホームページにて。タコ山さんではなく、業界人が受賞していた。
そのときのタコ山さんの気持ちは……、その悲しみは想像することもできない。
その後、悲しみに暮れたタコ山さんは、悔しさ、それから今回の件で得てしまった「俺は作家なんだ」のプライドとともに突き進んだ。しかし、そもそもが実力不足。魂を削った作品たちが認められることはなかった。
だから冒頭の「誰も俺を認めない、俺にはもう小説は書けない、ほむほむ」の台詞に行き着くわけだ。

痛ましい話ではあるが、それはそれとして、編集者として作品を客観的に評価しなければならない。

…………。

さっと目を通すに、なんというか、冗長すぎるのではないだろうか。
内容の良しあしは、よくわからない。
だが、わたしは友のため、リライトマシーンと化して、ときどき投稿してあげることを誓った。わたしはいろいろ転職しすぎて職業不詳だが、優秀な編集者でもあるのだ。

原稿の束を野生の本能で物色する。
会社員が自席で誰にも気づかれずにバンド練習をする話、三途の川でネコとリラックスについて修行する話なんかが良さそうな気がしている。発想だけがひとり暴れしている。編集者の力量が試される作品だ。

が――、
まずは、魔法少女まどかマギカを下敷きにしたという「魔法少女はメタルを聴く」が良いのではないか。

何を下敷きにしているか、きっと説明しないとわからない。
これもタコ山さんの悪いところだ。
魔法少女まどかマギカのアニメーションと同じく、全12話で仕上げられている。これも言わないと、絶対に気づかれない。
絶対に気づかれないから最初から言っておくと、鹿目まどか(主人公)、巴マミ、暁美ほむらが主な登場人物だ。美樹さやかもどこかで登場する。

近々、まどマギの新作映画が公開されるらしいから、便乗して話題になるとよいのだが。なんというか、編集者の勘はただの浅知恵だった。

さようなら、タコ山さん。
ほむほむ。

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