見出し画像

サプリの超絶理論、そして挫折

偽ロックスターは健康を求めている。ロックスターなら酒に溺れて死を選ぶべきだと思うが、わたしはロックスターになりてぇと言っているだけの一般人である。妻子あり。

わたしは数年前に画期的な健康法を開発した。人類の進化に着想を得ていて、かなり自信があった。ベースとなる考え方は、人間が進化するには何万年もの壮大な時間を必要とするため、われわれの身体は狩猟採集民であったころと何も進化していないというもの。

よって、われわれは狩猟採集民の生活スタイルをなるべくトレースすることで、人間に本来備わっている健康力を引き出すことができる。その典型的なものはウォーキングだ。昔の人類は1日に2万歩くらいは歩いていたらしいので、2万歩と言わずとも、1万歩以上歩くことは健康にとって非常に有効だ。

わたしは栄養の採り方にも、古代の考え方を取り入れようとした。狩猟採集民は、生きるためにいろいろなものを食べていたと思われる。木の実、果実、きのこ、動物の肉。その日その日で食べれるものを採集するわけだから、何が手に入るかはランダムだし、少量しか手に入らないこともよくあったと思う。想像するに、生きるためには、好き嫌いせず、多種多様なものを少量ずつ摂取していたのではないだろうか。

現代は飽食の時代だから、好きなもの(偏ったもの)をたくさん食べ過ぎる。古代とはまったく逆。古代の栄養摂取法を現代に再現しようとして、わたしが編み出した方法を今から述べる。

それは、マルチビタミン+マルチアミノ酸+その他いろいろが40種類くらい入ったサプリ(具体的には書かないが、薬局に行けば売っている)。これを飲めば、多種多様な栄養素をとれますよねという話になるのだが、もうひと工夫必要。

サプリなので1日3錠とか4錠とか書いてあると思うのだが、それは現代の栄養学にもとづいた数値だ。きっと多すぎる。古代バージョンにするには、もっと少なくていい。わたしは1/3程度を目安にサプリを飲むことにした。

すると、あら不思議。ひと月分の量が3か月分になるわけだから、お値段も1/3。鮮度に少し不安は残るが、コスパ最強の健康法を生み出してしまったように思った。これでお手頃に古代パワーが手に入る。

……効果は、特に感じなかった。これはまあ、量の問題ではなく、サプリにつきものの話ではないかと思う。サプリを飲んで体調が劇的に改善したと感じたことは今まで一度もない。少しずつ改善していると信じるしかないようなところがある。

そんなこんなでオリジナル健康法を続けてきたのだが、結果からいうと挫折する。失敗だと思った。きっかけは小林製薬の紅麹事件だ。この事件のことを深堀する気はまったくなくて、問題は製造者がサプリの成分を検証しきれていないこと。今の科学では無理があるのではないだろうか。

仮に問題の成分が錠剤の形をとってなく、素材に近い状態で消費者がそれを口にしたなら毒性を感じて拒絶したはずだ。だが、サプリレベルにまで加工されてしまうと、人間の本能は機能しない。サプリというのは、けっこう危険なものなのではないかと思う(個人の感想です)。

もし少数の栄養素でもこの状態だとするなら、先の40種類とかリスクが高過ぎる。特に、健康に効いている実感もないのに、漫然と飲み続けるのは、ハイリスク、ノーリターン。というわけで、わたしは戦略の非を認め、編み出した健康法を封印した。
ものすごくシンプルに言うなら、よくわからないものを口に入れるなということだ。

なお、サプリではなく、いろんな食材を少しずつ食べるのは、狩猟採集民の健康法として有効だと思います!

【ご注意】もちろん、サプリの効果を感じているひとはこの記事の限りではありません。特定の栄養素が不足していて不調なことが明らかな場合はサプリは有効だと思います。また、成分分析と品質管理に優れたメーカーさんもたくさんいらっしゃると思います。

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

ぜひサポートをお願いします!良い記事を書くためのモチベーションに使わせていただきます!