謎の白杖集団京都に現る~京都旅行記1日目~

10月15日から16日にかけて、スカイプ仲間のMちゃんとTさんとSさんの4人で京都旅行に行ってきた。今回はその1日目の記録である。

午前6時半起床。こんなに早く起きたのは久しぶりかもしれない。早く起きなきゃと思うあまり、4時半前にトイレに起きてからほとんど眠れなかった。遠足前夜の子供じゃないんだから。

午前8時に家を出る。浜松駅までは車で母に送ってもらった。丁度良い時間に駅に着くバスが無かったのでとても助かった。予備の白杖を、先日買ったばかりの大きなリュックに入れ忘れたことに気づいたのは家を出てからだった。まあいいや、京都での移動はほとんどタクシーだし、単独で歩くこともそんなにはないだろうからたぶんだいじょうぶだろう。

8時半頃浜松駅に到着。バスでも車でもいつもは50分ぐらいかかるのが、この日は朝早い時間で道路も空いていたからか30分ほどで着いた。
 新幹線の改札に向かうにはまだ少し早いだろうと思い、トイカに1万円入金することにした。しかし何度試しても5000円しか入らない。どうやらトイカには2万円までしか入金できないことを、恥ずかしながらこの時初めて知った。

母と新幹線の改札前で別れたのは9時前だった。駅の方に誘導をおねがいしてそのまま駅の待合室へ。修理から戻ってきたばかりのブレイルメモスマート(点字ディスプレイ)で宮崎智之さんの『平熱のまま、この世界に熱狂したい』を読みながらその時を待つ。

9時31分浜松発のひかりで京都へ。新幹線に乗った直後からスカイプのグループ通話に上がる。少し寝ようと思ったが眠れず。
 最近は駅名を告げる英語のアナウンスで、「レディース&ジェントルマン」って言わないんだね。これも時代の流れなのだろうか。

一足先に京都入りしていたTさんが、ホテルのフロントに荷物を預けがてら私たちのチェックインについて伝えた際、私の本名の下の名前の読み方を間違えていたことに気づくも、新幹線の中なので指摘できず。ちなみにその後聞いた話では、Sさんの名字の正しい読みにも自信が無かったとのこと。もともとオンラインで知り合った仲間なので、普段の会話でもハンドルネームで呼ぶのがほとんどだから、正しい本名の読み方を忘れてしまうどころか、人によっては本名すら知らない場合だってある。これぞまさにオンライン仲間あるあるかもしれない。

10時39分京都駅に到着。待ち合わせ場所の在来線の西口改札まで、新幹線の駅員さんにどうにか連れてきてもらえた。これで無事みんなに会うことができてほっと一安心。
 意外にもSさんとTさんはリアルで会うのはこの日が初めてだと言う。もう2年近くほぼ毎晩のようにスカイプで話しているので、二人が初めましてだなんて全く思わなかった。これもオンライン仲間あるあるだろう。

その後タクシー乗り場に向かう。朝の浜松は肌寒かったので、上に薄手のコートを羽織ってきたのだが、ここではその必要はなかった。そのぐらいこの二日間の京都は暑かった。
 週末だからなのか、タクシー乗り場は混んでいた。それでも何とかタクシーに乗ることができた。一同は紅茶クラブへ。

紅茶クラブに着いたのは11時過ぎだった。ここはmちゃん行きつけの店で、私がここに来たのは5月の終わり以来2回目である。
 ランチョンマットは点字毎日の再利用紙だし、点字のメニュー表もある。きっとこの店の店主は視覚障碍者と何らかの繋がりがあるのだろう。次に来た時にはぜひそのことを店主に聞いてみようと思っていたのだが、結局今回も聞けなかった。

紅茶クラブでは、ランチに鶏肉のバジルパスタ、さらにデザートにはオレンジとレモンのジャムを添えたスコーン、チョコのパウンドケーキ、栗のタルトなど、豪華な2段重ねのセットをお腹いっぱい堪能した。

紅茶クラブを出たのは13時頃だった。そこから再びタクシーに乗りホテルに向かう。土曜日の午後だからか、道路は渋滞している様子だった。

チェックイン予定の15字よりも1時間早くホテルに着いてしまった。Tさんを除く3人がそれぞれチェックインの手続きを済ませた後、大きな荷物をフロントに預けて近くのコンビニに買い出しに行くことにした。
 白杖を持った4人が、縦1列になって京都の街中を闊歩する。はたから見たら異様な光景だろう。謎の白杖集団現る!そんな感じだろうか。

Tさんがチェックイン時にホテルの人から聞いた話では、ホテルを出て少し行ったところにセブンイレブンがあるとのこと。
 白杖を持った人4人が縦1列になって歩くには狭い道だった。人や自転車が次々に通り過ぎていく。おまけに歩いても歩いてもコンビニらしき場所がなかなか見つからない。Mちゃんが通り過ぎていく女子の集団に聞いてみようとしたけれど、話し声を聞く限り彼女たちは日本人ではなさそうだったので断念しかけたところでコンビニの入り口らしきスロープを発見。
 果たしてそこはコンビニだった。

それからは各自店員さんにおねがいして買い物をした。私は夕食に食べるおにぎり二つ(梅と鮭)と、朝食に食べる予定のアンパン、さらに麦茶を買った。麦茶を買う時に言われた「ファミマオリジナルの」という店員さんの言葉で、そのコンビニがセブンイレブンではなくファミリーマートだったことを知る。

道が狭いので帰りは縦1列には繋がらずに単独で歩いた。こういう時に頼りになるのが互いの白杖の音である。
 と、こんどはホテルの入り口が分からなくなった。ここだろうと思って曲がったところが地下、あるいは駅に繋がっていると思われる階段だったり…。
「おーい、ここここー!」
 私たちが迷っていると、1番前を歩いていたMちゃんが教えてくれた。どうやら曲がるところを行き過ぎていたらしい。

ホテルに戻ったのは14時40分頃だった。部屋に入れるのは15時からなので、まだ20分近く時間があった。
 私たちはロビーの椅子に座って、さきほどのタクシー代の精算をしたり、この後の予定をどうするかについて話し合ったりして時間を潰した。

15時になってからエレベーターでそれぞれの部屋へ。
 部屋に入ると、ホテルの人に中にある物の位置や、シャワーの使い方などを教えてもらう。全盲社同氏でホテルに泊まる時にはいつもそうしている。
 朝4時半からほとんど眠れていないのと、ここまでの旅の疲れが出たのかとても眠かった。早速ホテルの心地良いベッドで寝ようとしたのだが、外の音や上の階の物音が気になってここでも眠れず。いったい私はいつになったら寝られるのだろうか。

17時ぐらいから皆がぽつぽつと私の部屋に集まってきた。
 ここ1カ月左側の首が痛いという私の話から、突如大マッサージ大会が行われた。
 現役マッサージ師のSさん、元マッサージ師だったTさん、さらに盲学校でマッサージ師の免許を取る勉強をしていた時期があったmちゃんと、私以外の3人は多かれ少なかれマッサージに携わる経験をしていた。
 現役マッサージ師のSさんも、元マッサージ師だったTさんも、安定感があって気持ち良い施術だったけれど、二人とも男性だからか力が強すぎると感じることも多々あった。その点免許は持っていないが女子のmちゃんのマッサージが1番気持ち良かった。彼女がマッサージ師だったらきっと常連になっていただろう。彼女が通っていた盲学校はもったいないことをしたと思う。

大マッサージ大会終了後、こんどはお土産交換会が始まった。ごっさまやバームクーヘンやパウンドケーキの詰め合わせなど様々な物をもらった。そして私はmちゃんとSさんにはウナギパイを、Tさんにはコッコを渡した。

19時頃夕食タイムになった。お昼に紅茶クラブでたらふく食べたので、皆それほどお腹は空いていなかったけれど、それでも何かおつまみやデザートが欲しいよねえという話になった。
「じゃあうち買ってくるわー」
 そう言ってmちゃんは部屋を出て行った。もちろん買ってきてくれるのはありがたいのだけれど、果たして全盲女子を一人で夜の町を歩かせてしまうのは防犯上だいじょうぶなのだろうか。酔っ払いにでも絡まれたりしたらと思うと不安だった。

間もなくしてmちゃんからフェイスタイムがかかってきた。無事コンビニまでたどり着けたようだ。私たちはフェイスタイム越しに欲しい物を伝えて買ってきてもらった。彼女の積極的な行動力と度胸は私も見習わなければである。

皆がそれぞれの部屋に戻って行ったのは21時頃だった。旅の疲れに加え、女子にはお馴染みの月1恒例イベントが近づいて来ている影響でいろいろとしんどかったので、その日はシャワーを浴びて早めに寝ることにした。
 ※二日目に続く

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