尊敬している人は
Mr.childrenが5月十日でデビュー30周年を迎えるそうだ。
言う間でもないが、ミスチルには名曲がたくさんある。彼らの楽曲に励まされたり、涙したりしたことがある人も多いはず。私もその一人だ。
ミスチルに関して、私には今でも忘れられない素敵なエピソードと、今でも思い出すともやっとするようなエピソードがある。
まずは素敵なエピソードについて書いてみたいと思う。
それは地元の盲学校の中学部2年の頃、寄宿舎の談話室でよく話すようになったT先輩を好きになってしまった。
丁度バレンタインデイが近かったこともあり、これはチャンスだと自らT先輩にアタックしてみようと思ったのだ。
チョコレートと一緒に手紙を渡すことにした。いわゆるラブレターってやつだ。
しかしt先輩と話すようになってからまだ日が浅いので、いきなり「好きです」と書くのもどうなんだろうかと少し躊躇した。
そこで最終的に「友達になってください」と書いた手紙を、バレンタインの日にチョコレートと共に渡した。
それから1カ月後のホワイトデイ、T先輩からお返しをもらった。
その中にはお礼の手紙と飴玉が三つ、そしてcdが1枚入っていた。それが『終わりなき旅』のシングルcdだったのだ。
♪高ければ高い壁の方が上った時気持ちいいもんな♪
特にこのフレーズが、勉強のことや進路について悩んでいた中学2年の私の心に深く刺さった。
音楽に励まされて涙が出たのはこの時が初めてだったと思う。
音楽には心を動かす力があることを教えてくれたのは、T先輩、そしてMr.childrenだったのかもしれない。
その後結局T先輩とおつきあいすることはできなかった。そしてなぜあの時T先輩が私に『終わりなき旅』のシングルcdをくれたのかは今だに謎である。
次に今回の本題でもあるもやっとするエピソードについて書きたいと思う。
それはさきほどの話から数か月後の中学3年生の時だった。
高校受験に向けて、勉強はもちろんいろいろと準備を進めていく中で、面接の練習をすることになった。
練習に際して、面接で聞かれそうな質問をまとめたチェックリストを渡され、まずはこれの答えを書いてくるようにと言われた。
50問近くある質問の中に、「あなたが尊敬している人は?」という問があった。
その頃の私には尊敬するような人なんていなかった。というより尊敬とはどのようなことなのかが分かっていなかったんだと思う。でも「居ない」と書くわけにはいかない
どうしようかと考えていた時、朝の芸能ニュースでミスチルの桜井さんのインタビューを聞いた。小脳梗塞から復帰されて、当時の最新曲『ヒーロー』について語っていた。
そのインタビューを聞いて、これだ!と閃いた。
「尊敬している人は、Mr.childrenの桜井和寿さんです。
小脳梗塞という大きな病気をされても、生きることを諦めずに音楽を作り続ける情熱がすごいと思うからです。」
と、そんなようなことを書いて提出したと思う。
今思うとそれは尊敬というよりも憧れである。でもその当時の私は、憧れと尊敬の区別がついていなかったのだ。
当然これではだめだと先生から注意を受けた。
さきほども書いたように、尊敬するような人が特に居なかった私は、仕方なくその欄に「ヘレンケラー」と無難な答えを書いて再提出した。するとそれはあっさり通ったのだ。
なぜ桜井和寿はだめで、ヘレンケラーは良いのだろうか。当時の私はそのことがどうしても納得がいかなかった。
そりゃあ確かにヘレンケラーだって、3重苦を抱えながらも一所懸命勉強して、福祉の礎を気づいた功績はすごいと思う。でも当時の私はそれよりも、生きる力を与えてくれるような言葉や音楽を届けてくれる桜井さんの方がよほどすごいと思っていたのだ(ヘレンケラーには申し訳ないが)。
そんな私の思いを簡単に否定できるような先生の思考には今だに納得がいかない。
中学時代には尊敬するような人が居なかった私だが、今では本当の意味でそう思える人が居る。
それはずばり母である。高校卒業後、本格的に親元を離れた生活を始めたことで、母の大切さや偉大さに気づけたのだ。
そういえば明日は母の日らしい。改めて母に日ごろの感謝を伝えなくちゃなあ。
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