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これだから漢字はめんどくさい

 「1行目と2行目の『きく』は、『聞』の方じゃなくて『聴』の方です」
 「21行目『夢追い人』の送り仮名『い』はいらないです」
 文字起しの授業の課題をフィードバックしてもらう時、そのようなことを指摘される度に、正直よくそう思ってしまう。

 未熟児網膜症による生まれつき全盲の視覚障害者の私は、幼い頃からずっと点字を使ってきた。それが画面音声読み上げソフトが普及してきた中学・高校の頃ぐらいから、目が見えないからそんなに覚えなくてもいいだろうと思っていた漢字のスキルを要求されるようになった。今現在もそうしているように、画面音声読み上げソフトやアプリを駆使しながら、点字だけではなく普通の文字も書けるようになってきたからだ。
 点字は普通の文字とは違いひらがなしかない。そのため例えば冒頭で書いた「きく」も、点字だったらただ「きく」とひらがなで一言書けばそれだけでよかった。幼い頃から文字に関してはずっとそのような感覚で育ってきているので、なぜ「きく」という文字に対して、変換を使い分けなければならないのかと今だに混乱してしまう。
 さらに点字には送り仮名というものもない。恥ずかしい話、この施設で文字起しの授業を受けるようになってからその存在を知ったようなものである。

 そういえば以前からここnoteやSNSなどの投稿に対しても、読みにくさや誤字脱字を指摘されることがよくある。
 もちろんやんわりと指摘してくださるのはとてもありがたいと思っている。しかし中にはそれきっかけで否定的なことを言ってくる方もたまにいらっしゃるので、そういう時にもこれだから漢字はめんどくさいんだよなあと憂鬱になる。
 「それならテキストじゃなくて音声配信で作品を朗読してみたら?音声だったら誤字脱字とか気にする必要ないし」
 以前友人からそのような提案をされたことがあった。なるほど、確かにその手もあるなあと思った。しかし音声配信も嫌いではないのだが、自分が書いた物を自分の声で朗読するのは恥ずかしいのであまり続けられなさそうかもと思った。
 やはり投稿を続けるなら、音声配信よりもテキストの方が自分的にはやりやすいのかもしれない。
 同音異義語や送り仮名など、点字にはないような漢字特有のめんどくささはあるにせよ、それでもなんだかんだいって私は書くことが好きなんだなあと思う。

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