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「牛乳がほんのりぬくもっています」

 施設の朝食がパン食の時には、いつも必ず牛乳が出る。
 しかし数年前から持病の過敏性腸症候群の影響で、冷たい牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなる体質になってしまったので、私だけ牛乳を温めて出してもらっている。

 「今日の朝食はプルコギマヨパンと、アルミカップに入ったヨーグルトと、牛乳がほんのりぬくもっています」
 この言葉が出てきたのは、いつものように厨房のスタッフさんから説明を受けて朝食を受け取った時のことだった。
 施設の修繕工事の影響で、現在厨房が使えないため、牛乳は湯せんで温めているそうだ。だからそのような言葉が出たのだろう。

 「牛乳がほんのりぬくもっています」
 テーブルについて、思わずその言葉をこっそりと一人呟いていた。
 なんて良い響きなのだろう。
 特に「ほんのり」というのがみそである。ただの暖かい牛乳が、「ほんのりと」という言葉が入るだけで、こんなにも神秘的で美しいもののように感じてしまったのは私だけだろうか。
 朝から詩的な表現に触れられて何だかとても嬉しかった。
 ちなみにその牛乳は、確かにほんのりとぬくもっていた。丁度良い暖かさだった。

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