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短歌二十三首 【2023年11月まとめ】


【11月の自選六首】

冬のももいろほころぶ返り花 わたしのなかにふたつの心音

草の穂がささめく空は澄みわたりあなたの名前にこめた秋の香

きざしすらないまま君はいなくなり小さな鍋で食べる湯豆腐

童心のやはきところとしてあらむ ウーパールーパーのましろきはだへ

若冲の白象の目のやさしさできみはカンバスに雲を描けり

どくけしそうばかりが溜まっていくかばん 意外と世界はやさしいと知った


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百歳ももとせを過ぐせし珊瑚の夢に降る花吹雪には母のぬくもり

コンビニで買う昼食にサラダをつけたそれだけで今日はきっと花マル

茱萸ぐみあか わたしが少女だつたころ交はしたはじめての接吻キスの味

抱きしめてもいい? きみがこの毒に耐えられるなら愛してあげる

抱きあえば熱もならされる夜もすがら変温動物の気持ちでいる

ふくふくと蕾の心悸しんき 紫の匂へる薔薇にあこがれてゐる

純白にもどれなくともわたしだけのいろを探して描きつづける

あの子って代打逆転満塁打みたくすべてを手に入れている

三日月の首輪は鋭利 逃れられぬことがわたしの心を充たす

まともじゃないけど生きているていねいに蕾の薄皮剥いでいくごと

親指の切り傷くらいの憎しみがいつまでぼくに取り憑くのだろう

覆水は返らねど慈雨じうはふりそそぐ きみに届けと祈る「ごめんね」

顔よりも大きな葉のお面をかぶり落ち葉を降らせる風の精たち

雨漏りのする屋根を直さないでおく迷子の星の避難所として


  銀杏いちょう散り秋はディミヌエンド
  あたたかな金糸雀カナリア色のマフラーが似合う

  芽キャベツを半分に切る
  かわいくて
  ゆううつな気持ちふっと飛んでく

  おうちまでついてきたね、おつきさま。
  またあしたねー!
  あっ、わらったよ。



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