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【感想】垂直の記憶 岩と雪の7章

※当noteには一部ネタバレを含みます※

こんにちは、ハンサムです。
仕事の繫忙期が終わり、余裕が出てきたため、やっと積読であった『垂直の記憶 岩と雪の7章(山野井泰史)』を読むことが出来ました。
同時に、映画『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界』を観たため、感想を綴ります。


山野井泰史という人

登山界最高の栄誉と言われるピオレドール生涯功労賞をアジア人で初めて受賞した、日本を代表するクライマー。
まず、登山そしてクライミングというのは非常に危険なスポーツであり、『人生クライマー』『垂直の記憶』の中でも、多くのクライマーの死が紹介されています。
そんなスポーツで、単独登攀をメインとし、また今日まで生き延びたことが、何よりも素晴らしい功績と言えるでしょう。

山に登る理由

山への想い

著書や映画の中で、山野井さんは度々
”山は命懸け。それが面白さでもある。”
”山に登っていないと生きていけない。”
という想いを述べています。

死にたくないなら山なんて登らない方が良い。
それでも登るのは、命を懸けるだけの価値があるからだ。

同じ舞台で話すなんて烏滸がましいですが、私にとっての山も同じです。
疲れるし、朝も早いし、お金もかかるし、日焼けもする。
でも、何故か登ることにハマってしまった。
仕事中何かあっても、次の登山計画を少し考えるだけで、払拭出来るほど。

そういう感覚って、山以外でもありますよね。
所謂「オタク」とか「推し活」とか、そういう何かを追いかける人達って、同じような感覚だと思います。
金銭的な負担、時間的な負担、時には危険を顧みず、いろんなものを懸けてでも追いかけたいもの。

山野井さんにとって、それは山であり、その情熱が人一倍強かったから、ここまで来ることが出来た。

死にたいわけではない

命を脅かすようなチャレンジを重ねる=死にたいわけではない。
でも、死ぬ可能性があることは理解していて、それをどこか受け入れている。

多くのクライマー達が山で死んでいった、
山野井さん本人、そして妻である妙子さんも指を失うほどの窮地に立った、
そんな経験があったからか、山野井さんは度々死を受け入れるような発言をします。

でも、その言い方にけっして安易に死を選んでいるような感覚は覚えず、寧ろ対策を最大限練っているからこそ、その発言が許されるのだと感じます。
山で死んでいった人達を簡単に同情したり、批判したりしていけない、そういう気持ちになっていきました。

命を懸けるもの


皆さんには「命を懸ける価値があるもの」「命を懸けても良いと思えるもの」って、ありますか。

家族だったり、趣味だったり、仕事だったり…

私は「命を懸けられないな」と思ったから、辞めたものがあります。
逆に「命を懸けていいな」と思ったから、続けているものもあります。

「命を懸けられる」何かに出会う。
人生でこれほどの幸せはあるでしょうか。

大学生の時、クソみたいな人生に嫌気がさして、
バイクで日本全国旅をして、最後は海に突っ込んで死んでやろうと思い、二輪免許を取るため教習所に通い出したら…
そのままバイクが面白くなって、大型二輪まで免許を取った時のように。

凪のように穏やかで、本当は幸せでありながら、
変わらない毎日に慣れて、飽きて、うんざりした時に登った乗鞍岳で…
雲の上から見た景色のように。

突然、思わぬところで宝物が手に入ることもあれば、そういった"かけがえのないもの"に出会えないこともあると思うんです。

山野井さんは、小学生の時にとある映画で”山”に出会い、情熱を注ぐことが出来て…
私は、ずっとそういうものに出会いたくて、
でもずっと出会えなくて…

大人になってから、やっと時間が出来て、
『こういう事が好きだったんだ』を知った。

映画の中で山野井さんが「最高の人生」と、
自分の人生を振り返る場面があります。

私も「最高の人生」と言い切るために
出来ることをしていきたい。

幼い頃から続けてきました、とか
何十年も頑張ってきました、とか
そういうものは、もう手に入らない。(命を懸けられないと思って手放したから。)

だからといって諦めて何もしないのではなく…
指を失った後も折れず、出来る範囲で挑戦し続ける山野井さんのように、
今から出来ることに挑戦したい!

山野井さんのように、K2とか、マカルー西壁とか、そういう登山をしたいわけではないけれど…

美しい日本の山々を登って雲の上に行きたい、
いつか海外の山(マッターホルン)に挑戦してみたい、
泊まりがけの長期縦走に挑みたい、
バイクにテントをのっけて、日本百名山を回ってみたい…

死にたいわけではないけど、
山で死んでも許されたい。

山野井さんの綴る気持ちがとても共感出来て…
「私もアレがしたい!コレもしたい!」
という気持ちになる本と映画でした。

最後に

命は大事に。でも懸けるのも、悪くないよね。


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