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ファクトチェックはすげー面倒で、やりきれない

 歴史上の偉人の言葉として流布している名言や金言が、本当は本人が言ってない、ということはよくある。

 例えば、ボルテールは「私はあなたの意見に反対だ。だが君が意見をいう権利は死んでも守る」なんて言ってないし、世阿弥は「守破離」なんて言っていない。

 とまあ、したり顔で言ったところで、巷間、ボルテールの言葉や世阿弥の言葉をしたり顔で語ってる人たちと私も構造的には変わらない。「ないことの証明は、悪魔の証明と言って」とかバカの一つ覚えみたい言いたいのではなく、ボルテールの全書物を読んだわけでもないし、世阿弥に至っては『風姿花伝』すら読んでない。

 ボルテールの言葉の一件に関しては、一応、研究書を原書なんだか忘れたけど英語で読む羽目になったので、よく覚えてる(kindleを漁ったら原書はフランス語だった)。あのときは地獄だった。なので、「まあ、言ってないらしいっすよ。なんか研究者がまとめた言葉らしいっす」ぐらいのテンションでは言える。でも、又聞きでしかないことは間違いない。だって、ボルテール自体はたぶん一冊しか読んでないもの。研究書は計3冊ぐらい読まされたけど。

 あとは世阿弥の件は、レファレンス協働データベースの調査結果しかみていない。完全に又聞き状態。したり顔もできない。
https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000029440

 で、仮にボルテールの全集を読んだところで、本当に「言っていないか」は究極的にはわからないよね。もう亡くなってるし、存命だとしても確認なんかとれない。ま、著作にない、書いていないという話なんで、そこまで言い出したらキリがないし、気になる人は「言ってない」ではなく「書いてない」と言いましょう。

 あと、この話はあんまりしたくないんだけど(面倒な人に絡まれがちだから)、「日本は1965年の日韓請求権協定で賠償金を支払って……」と主張したい人、「賠償金」じゃないから。「協力金」だから。

 ささいなニュアンスの違いじゃなくてね、あなたたちが主張したいように当時の外交担当者たちが、植民地支配って言いたくないから、あくまで同じ国になったんだからって、すごい勢いで韓国と「賠償金じゃなくて協力金に」と交渉したんだから。なのに、最近は保守の政治家まで「賠償金」って言うからね、アホちゃうか、とはさすがに思うわね。

 原文のコビーはどっかにファイリングしてあるけど、まあ、すごい大量の交渉録が開示されてる。もちろん、全部なんか読めない。
http://www.f8.wx301.smilestart.ne.jp/nihonkokai/saisyu.htm

 でね、さっき「アホちゃうか」って書いたけど、本音ではあるけれど、こういう知識のマウント合戦はしないほうがいい。少なくとも、侮蔑しないほうがいい。主張するならきちんと資料に当たれや、とは思うものの、こっちだって絶対、間違えるからね。ここに書いたことだって、それなりに調べたことではあるけど、専門家でもないし、もっと言えば専門家だって間違えるし。人間、間違えるから、人の間違いをバカにすると、自分に跳ね返ってくる。完璧な人間にならなきゃいけなくなる。完璧だなんて、なれませんよ、そりゃ。

 あと、「ウソも百回言えば真実になる」っていうけど、言ってる本人たちはウソとは思ってないんだろうな、とは思っちゃうよね。米大統領選挙だってワクチン論争だって、こっちはバカバカしいなと思ってるけど、あの熱量は本気で言ってるんだろうな、とは感じる。なんの情報見てるかしらないけど。怖くて掘ってない。

 となると、こっちも「一方的な情報」に乗っかってるだけって、またあちらと同じ構造になっちゃう。でも、陰謀論に関しては、個人的にはファクトチェックしたくないんだよな。引っ張られたらイヤだから。

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