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春夏秋冬、それぞれの季節に摘まれた茶葉の<青み>を重ねる|番茶「青柳」

<番茶とは>

そもそも「番茶」とは、どのようなお茶を指すのでしょうか。
実は、番茶の語源や定義は明確ではありません。

語源の一説は、毎春に摘採される一番茶に対して、その後の芽で作られたお茶を二番茶・三番茶と呼ぶため、これらの総称を「番(晩)茶」とするもの。
あるいは「番」という言葉に含まれる「日常的な」「普段の」という意味を語源とする説。
また「定番茶」とは異なる「番外茶」という呼称が変化した、という説も。

そして、その定義も千差万別です。
当店にも「番茶はありますか」と来店され、関東でいう「ほうじ茶」をお探しのお客様も多いです。
私もお客様が番茶をお求めになる場合、まず「緑茶の番茶ですか。それとも、ほうじ番茶をお探しですか」と伺います。
実際に、京都の京番茶・徳島の阿波番茶・岡山の美作(みまさか)番茶など、地域によって製法や味わいが全く異なる番茶が飲まれています。

庶民の生活のなかで引き継がれる「阿波番茶」
徳島観光情報サイトより

その土地土地によって番茶の製法や飲み方が異なるのは、国内だけではありません。
昨年訪れた「茶の生まれ故郷」とされる中国・雲南省の南端地域でも同様でした。
現地には「番茶」という呼称はありませんが、今でも複数の少数民族は、それぞれの村ならではのお茶を日常的に楽しんでいます。

発酵茶が中心ですが、
その発酵程度・製法は地域・村によって異なります

語源や定義が曖昧な「番茶」

産地をまわっても、来店されるお客様と会話をしても、文献を調べても、その解釈に多種多様な違いがあることが、このお茶の魅力ともいえます。

それでも私自身の経験から、あえて「番茶」の共通点をあげれば次のとおりです。

番茶は上等な嗜好品ではなく、それぞれの地域の生活に根差した茶である。
そのため各地域において、多種多様な番茶が現存している。

<モノづくりについて>

当店の番茶「青柳」の特徴は何か。

それは、4月に収穫される芽番茶を主原料とし、春らしい柔らかな青みを基本とすること。
そして、夏時期まで成長した茶葉からは力強い青々しさを。更には秋冬に摘採される茶葉から、井草を思わせるどこか懐かしい青さも付加すること。

大切にしているのは、それぞれの季節に収穫される茶葉が備える<青み>を重ねる番茶づくりです。

芽番茶に加えて、二番茶・三番茶をブレンド
成長した茶葉は「柳の葉」のような形状
番茶を「青柳」と呼ぶ由来です

芽番茶の収穫は、新芽を摘採して1週間~10日後の4月末から5月上旬。
新芽を摘んだ後、伸びてきた葉と根元部分を摘採します。
このことから芽番茶を専門的に一茶番(いっちゃばん)と呼びます。

新芽は葉の先端(黄緑色の部分)です
新芽を摘採後、
残った葉と茎の部分が芽番です

二枚目の写真は、私が実際に新芽を手摘みした後のもの。
手摘みした後に残った葉と茎の部分(芽番)は、一枚目の葉の先端にある新芽部分と比較すると、太陽の光をより長く浴びるため光合成が進み、やや濃い緑色になります。

一次加工後の芽番茶
一番茶とも見間違う整った外観です

手摘みした新芽でお作りした新茶はこちらです。

二番茶は、一番茶が摘採されてから45日ほど経過した後(6月下旬〜7月頃)に収穫。

そして三番茶・四番茶(秋冬番茶)は、枝葉を成長させ、それぞれ夏から秋口にかけて収穫します。


全ての時期にいえることですが、なるべく茶葉を成長させて刈り取った方が収量は増えます。
でも効率だけ追っても、品質の良い原料は作れないですからね。

当店とは親子三世代のお付き合いの茶生産者 西利実氏
鹿児島県霧島市で国内最高品質の有機栽培茶づくりに励んでいます。
今年は現地で番茶づくりへの想いを伺いました。

一般的には廉価品とされる番茶。
そのため番茶づくりには、生産効率に重きが置かれ、その原料はニ番茶以降、特により大きく茶樹を成長させた秋冬番茶が主として採用されます。

もちろん生活に根差した番茶である以上、手の届きやすい価格でお届けするのは大事なこと。

けれど日常的に楽しむお茶だからこそ、安心安全にこだわりたい。
そして、自分たちの考えうる高品質な番茶づくりを残していきたい。

たかが番茶、されど番茶。

当店の番茶「青柳」は、市場には出回らない有機栽培の芽番茶(一茶番)を主原料にし、春夏秋冬それぞれの季節に摘まれた茶葉の<青み>を重ねるようにお作りしています。

是非、皆様にも一度お試しいただけますと幸いです。

<プロダクトについて>

さっぱりとした軽い口当たり嫌味でないが爽やかな渋み
そして、何より自然由来の青々しい香りと味わいを一杯の番茶をとおして感じることができます。

口に含むと、なぜか懐かしい印象を持たれる方も多いのではないでしょうか。

一方、旨味が足りないと感じる方もいらっしゃると思います。
ただ、飲みやすいスッキリとした口当たりだからこそ、軽めの朝茶お食事の脇役として。
また、おかきやお団子など、肩肘はらない和菓子との相性もピッタリです。

水色は緑色よりも黄色に近く
見た目もスッキリとした色合いです

最後に、忘れてはならない番茶の大事な特性を。

番茶に多く含まれるカテキンには、血中コレステロールの低下、体脂肪低下作用、殺菌・抗菌作用などの効果があると言われています。

また、聞き慣れない「ポリサッカライド」という成分も番茶に多く含まれることが近年の研究で分かっています。
この成分は多糖類の一種で、インスリンと同じような働きをして血糖値の上昇を抑える効果があるそうです。

ポリサッカライドは水に溶けやすく、熱に弱いので、水出しで飲むのが効果的とのこと。

皆様にも、美味しく、健康によい、番茶のある毎日の生活をお楽しみいただけますと幸いです。

<販売ページのご案内>

2ヶ月ごとに30g×2種類の日本茶が届く、繁田園の定期便「季節のお茶便り」4月回にて「番茶|青柳」(30g)を、4月下旬頃よりお届け予定です。
送料無料・ポスト投函でお届け、1年間の全6回コースと半年間の全3回コースの2種類をご用意しております。

単品販売はこちらです。

<淹れ方&楽しみ方>

番茶は「熱いお湯で淹れても美味しい」というのが最大の特徴です。
また、フィルターインボトルでの水出しにも最適な茶葉です。

〈淹れ方①〉温かいお茶の淹れ方
【お一人用】
 茶葉の量:5g
 湯量:150ml
 湯温:85℃
 抽出時間:30秒

【お二人~三人用】
 茶葉の量:6~8g
 湯量:200ml
 湯温:85℃
 抽出時間:30秒


【湯温の調整方法】
・沸騰したお湯を湯呑みに移して湯量をはかり、急須へ
・氷を1-2個急須に入れ、氷に当てるようにしてお湯を注ぐことで、湯呑みを使わず直接お湯を注ぐことも可能です

【美味しく淹れるポイント】
・湯呑みにお茶を注ぐときは、一気に注ぐのではなく、3回程度に分けて注いでいただくことで、急須の中の茶葉が適度に揺られ、旨味が抽出されます
・2煎目は、10秒程度サッと抽出してお淹れください。3煎程度お楽しみ頂けます

〈淹れ方②〉ボトルによる水出し煎茶
 茶葉の量:10g~15g(大さじ2杯)
 湯量:750ml
 湯温:常温
 抽出時間:冷蔵庫で3時間以上

最短3時間で抽出可能ですが、ご就寝前や出勤前に冷蔵庫に仕込んでいただき、じっくり長時間抽出していただくことで、より深い味わいになります。
お茶が減ってきたら、上から水を継ぎ足していただくことで、2煎目までお楽しみいただけます。
冷蔵庫で保管し、仕込みから2日間を目安に飲み切るようにしてください。

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