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美味しいお茶の条件:本質香とは?|献上煎茶 「特撰 鳳凰」

<本記事は2024年4月に内容更新しました>


〈受賞速報🏅〉

イギリスの国際食品コンテスト「Great Tastes Awards 2022」にて、「献上煎茶 鳳凰」が、2つ星金賞を受賞しました!

2つ星金賞は、出品総数の上位約10%以内に与えられる賞だそうです

下記の通り、審査コメントをいただきました。「鳳凰」の繊細でさわやかな香りと旨味をしっかりと評価いただけました!

A beautiful size of leaf, traditional, vibrant in colour, reflecting the light steaming. The pale, bright infusion carries marked sweetness. Crisp on the palate, a little short on the finish, but of great quality while it lasts.

審査コメントより

〈作り手について〉

作り手としてお伝えするべきは生産者の皆さんですが、「献上煎茶 鳳凰(ほうおう)」はその商品開発の経緯から、曽祖父の繁田百鑒斎(ひゃっかんさい)を紹介します。

百鑒齋50歳の頃
繁田百鑒斎(1882~1955)

昭和3年(1928年)、百鑒斎(当時46歳)は宮内省より赤坂離宮御苑内にある茶園の管理を任され「鳳苑(ほうえん)」という煎茶を謹製しました。

しかし「鳳苑」は宮内省御用達の特別なお茶。一般のお客様へお届けすることができません。

そこで百鑒斎は、「鳳苑」と同じ製法で自園の茶葉を仕上げ、これを「鳳凰(ほうおう)」と名付けて商品化しました。

製造法_鳳凰パート
当時の製茶風景

ちなみに冒頭の画像は、百鑒斎が当時来日中のチャップリンを茶席に招き、これを撮影したものです。

その頃百鑒斎は、当時の茶の湯の世界について、「礼儀作法を重んじるあまり形式主義に陥っている」と反発していたという記録も。

そして、「もっとシンプルに〈美味しいお茶を飲むこと〉にこだわるべき」という考えのもと「新茶道」を提唱。誰にでも簡単に習得できる茶法やテーブル席でのお茶会など、新しいライフスタイルに合った茶道を唱えました。

繁田園2Fでは、不定期でテーブル茶道教室を開催しています

〈モノづくりについて〉

「献上煎茶 鳳凰」はいわゆる「合組(ごうぐみ)茶」、複数の農家・生産者の茶葉を当店独自にブレンドした商品です。

シングルオリジン(単一品種・単一農園)を打ち出すメーカーが増えている中、「ブレンド」と聞くと「シングルオリジンの方が良いのでは?」と思われる方もいるかもしれません。

しかし私たちは、むしろ合組することによって、さまざまな茶葉のポテンシャルが互いに引き出され、高品質な煎茶を「適価」でお届けすることが可能になると考えています。

ブレンドというと悪いイメージを持つ方が多いようですが、それは質の良くないお茶の葉を混ぜてごまかす意味にとられるからでしょう。しかしそれは違います。

お茶の四大特色は香り、味、水色、形状ですが、この四つがすべてそろっているお茶はまずありません。産地によって香りはいいが味は劣るとか、水色はいいが形は良くないなど、いろいろなケースがあるのです。

各産地の葉を混ぜることで互いに足りない部分の特色を補い合い、その結果おいしいお茶をつくろうというのがブレンドなのです。

『東京繁田園物語』繁田弘蔵

祖父・繁田弘蔵の説明に一言補足をするならば、「香り、味、水色、形状の四つがすべてそろっているお茶は、あったとしても希少で高価」ということです。

実際に当店でも、産地や品種の特徴をお楽しみいただくために、いくつかのシングルオリジン商品(下記)を取り揃えていますが、お茶は私たちの生活の中にあるもの。毎日美味しいお茶を飲むために、合組茶の存在はやはり欠かせません。

合組をする場合でも、「トレーサビリティ」(その茶葉がいつ、どこで、誰によってつくられたのかを把握すること)は大切にしています。

「献上煎茶 鳳凰」の場合は、当店とは3代のお付き合いになる霧島の生産者・西製茶工場さんの手摘みのお茶を中心に、全国茶品評会に出品された優良な茶葉を合組みしています。

▼西製茶工場さんのお茶づくりについて、詳しくはこちら

仕入れを問屋さん任せにせず、全国の茶畑に足を運び、作り手の皆さんと直接コミュニーションをとることで、“生産者の顔の見える良質な茶葉"を仕入れること。シングルオリジンでも、合組茶でも、この考え方は東京繁田園のモノづくりに通底しています。

「献上煎茶 鳳凰」

〈商品について〉

「献上煎茶 鳳凰」の最大の特徴は、百鑒斎が「新茶道」において煎茶の最も重要な構成要素とした「香り」にあります。

百鑒斎は、その香りの中でも特に、「天然優良香における本質香(ほんしつこう)」を重視しました。

ただし、この「本質香」は決して強くインパクトのある香気(こうき)ではありません。

というのも、この「本質香」とは、高品質な茶葉原料だけに元来から備わっている「青く清々しい天然由来の香り」。煎茶の製造過程で意図的に付加される「覆い香や火入香などの人工優良香」と比較すると、繊細かつ微弱な香気なのです。

煎茶道_千代の香パート
昭和26年7月7日『茶の聲』に百鑒斎が寄稿した
「香気の考え方と分類について」

一般的に、煎茶は蒸し具合によっても分類されます。

本商品は「本質香」を最大限に引き出すために浅蒸しの製法を採用しているため、水色(すいしょく)は、薄く澄んだ黄金色に抽出されます。

画像5
百鑒斎が興した雲仙焼の湯呑み(自作)
に注いだ「献上煎茶 鳳凰」

浅蒸しの煎茶にあまり馴染みがないという方は、まずその水色に驚かれるかもしれません。

それもそのはず、私たちが普段目にする「緑」茶のほとんどは、深蒸し茶といって、蒸し時間を長くすることで色や味わいを強く引き出したものだからです。

一方、浅蒸し煎茶の緑茶生産量全体に占める割合は10%未満であり、その割合は年々減り続けているとも言われています。

深蒸し茶も美味しいですし、「熱いお湯でも水出しでも手軽に淹れられる」「しっかりとした味わいのお茶をリーズナブルに楽しめる」といったメリットもあります。(当店の販売量No.1商品も、深蒸し茶「濃いみどり」です)

しかし、東京繁田園に引き継がれる「美味しいお茶とは何か?」という問いへのひとつの答えは「味や色よりもまず香り」、とりわけ「天然由来の香りを大切にし、味わいとの絶妙な調和を生み出したお茶」だと言えます。

「献上煎茶 鳳凰」は、この考え方を最も強く反映した商品です。

〈販売ページのご案内〉

「献上煎茶 鳳凰」100gの単品商品はこちら

少量ずついろんな煎茶を試してみたい方には、こちらの30g×3種セットがおすすめです。送料無料・ポスト投函でお届けします。

「日常生活で美味しいお茶を楽しむため」の煎茶セット。「献上煎茶 鳳凰」の一煎パックが2個付きます。

〈淹れ方&楽しみ方〉

一般的な煎茶と比較すると「茶葉は多く」(多すぎないようご注意ください)、「湯量は少なく」という贅沢な淹れ方がおすすめです。

〈淹れ方①〉温かいお茶の淹れ方
【お一人用】
 茶葉の量:6g
 湯量:100ml
 湯温:60-70℃
 抽出時間:60秒

【お二人~三人用】
 茶葉の量:9g
 湯量:150ml
 湯温:60-70℃
 抽出時間:60秒


【湯温の調整方法】
①沸騰したお湯を湯呑みに移して湯量をはかり、その後、湯冷ましへ
②再び湯呑みへ移した後、急須へゆっくり注いでいただきますと、70℃前後になります。
※湯呑みや湯冷ましが持てない程熱いと感じる場合は、さらにお湯を移し替えて冷ましてください。
※急須へお湯を注ぐ際は、お湯を茶葉に直接当てず、急須の内側を滑らせるように注いでください(そこでも湯温が下がります)
※湯冷ましがない場合はマグカップ等でも問題ありません

【美味しく淹れるポイント】
・湯呑みにお茶を注ぐときは、一気に注ぐのではなく、3回程度に分けて注いでいただくことで、急須の中の茶葉が適度に揺られ、旨味が抽出されます
・最後の一滴は、茶葉の旨味が凝縮された「ゴールデンドロップ」です。急須の中にお茶を残さず、最後の一滴まで湯呑みに注ぎきってください
・2煎目は1煎目より少し熱め(80℃前後)のお湯で、10秒程度サッと抽出してお淹れください

浅蒸し煎茶をよく飲まれるという場合は、やや小ぶりな急須や平急須を1つ持っておくと重宝します。最適な湯量で淹れられますし、芸術的な急須とともに楽しむお茶の時間は、いっそう特別なものになります。

また、浅蒸し煎茶は氷水出しにすることで、旨味がぎゅっと凝縮されたエキスのような煎茶を楽しむことができます。

氷だけで抽出する氷出し
氷が溶けるのをじっくりと待つ、風流な楽しみ方です

〈淹れ方②〉急須を使った氷水出し
 茶葉の量:6-8g
 湯量:100ml
 湯温:10-20℃(氷水)
 抽出時間:8-10分


〈淹れ方③〉急須を使った氷出し
 茶葉の量:8g
 湯量:急須に入るだけの氷
 湯温:0℃(氷のみ)
 抽出時間:室温で約1-2時間(氷が8割程溶けるまで)

「楽しみ方」のご参考に、百鑒斎本人が書き残した「お茶の味わい方」のフレーズを転記します。

「茶汁を舌の上に乗せる様にふくみ、静かに呑み下し鼻より来る嗅覚と融合して味わふのである」(原文)

お菓子やごはんとのペアリングは日本茶の楽しみの1つですが、「献上煎茶 鳳凰」は、「茶葉の持つ天然の優良香を味わっていただきたい」という百鑒斎の想いを受け継ぐ商品。ぜひ、まずはお茶だけで、その香りをじっくりお楽しみいただけますと幸いです。

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皆様の日常の「一服」のお役に立てるよう、作り手の方の想いやおすすめの淹れ方をお伝えしてまいります。

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