小学1年生の4月にクラスで読み聞かせをする魅力
先日講師参加した「ましゅまろラーニング」
ご視聴いただいた小学1年生の担任小林捺哉先生(@natsuyasumi728)に、クラスで実践した感想をいただきました。
今回は、メインで学校司書って何をやっているのか?ということを中心にお話させていただいたのですが、BOOKLUCK PARTYの実践のあと、絵本専門士として『学級開きにおすすめの絵本』の紹介をしてほしいというご希望に沿って、数冊紹介させていただきました。
『まめうしくんとこんにちは』をご紹介
そのうちの1冊が『まめうしくんとこんにちは』(PHP研究所 2008)です。
この絵本は、まめうしくんと一緒に声を出して、色々なご挨拶をやってみようという絵本です。「こんにちは」「ありがとう」「いただきます」「さようなら」などの挨拶を、時には嬉しそうに、時には心のこもらない言い方で、時には怒ってなど、バリエーション豊かに表現しています。
・挨拶は大切 ・言い方で感じ方が変わる
ということはもちろんですが、
みんなに交じって声を出すことで、慣れない場所(クラス)で表現する練習にもなります。全員でやるから、怖くないのですね。
それでも、一回声を出して、表現をできたということは、自然と自信につながります。スモールステップですが。
そういったことで、今回特に低学年におススメをしました。
本来、読み聞かせだと、通して読むのが当たり前ですが、これに関しては、コミュニケーションの学習教材という認識で、必ず全て目を通したうえで、学級に適当な順番、言葉を選択してみるといいということもお伝えしました。
例えば、限られた時間の読み聞かせの導入なら「こんにちは」だけやります。それも「うれしそうに」の表現を最後に持ってきて、気持ちよく次の本に入れるようにします。
また、支援級の1年生で挨拶も表現もまだ難しいようなら、ポジティブな表現の色々な挨拶をいくつかやってみます。
小学1年生の担任の先生からのご感想
小学1年生の担任 小林捺哉先生(@natsuyasumi728)から、読み聞かせを行った学級の様子についてお知らせいただくことができました。
(以下、引用)
『学級運営上、まだ椅子を動かす机を動かすことができなかったので書画カメラで映しながら読み聞かせを行いました。最後のページの悲しくバイバイのところは割愛しました。 まず、子どもたちがすごく声を出していてびっくりました。これまで2年生以上にしか読み聞かせをしたことがなかったのでここまでのうねりのようなものを見たことがなかったので驚きました。これまで絵本のことを子どものものと言っている人やそう思っている人たちに対して子どもだけのものではない、大人だって読んで良いって思っていたし声に出してきました。しかし読み聞かせに入り込んだ時の没入感は子どもにしか生み出せないと思いました。ある種の俯瞰することや雑念みたいなものから脱していて、応答する、大人になったら本当に好きなアーティストのライブで見られるようなこと(それでもできない人はいるような)が見られました。たくさん読み聞かせをしてあげようと思いましたし、この時間は有限だと思いました。 素敵な本を紹介していただきありがとうございました。』
このような嬉しい感想をいただきました。
きっと小林先生と児童の間に良い時間が流れたのではないでしょうか。ご連絡いただき、非常にポジティブな気持ちが伝わってきました。
1年生の4月に読み聞かせをする魅力
小学1年生の4月といえば、先月までは幼稚園。
もしかしたら、数日前まで保育園に通っていた子もいるはずです。
幼稚園や保育園では、読み聞かせはスタンダード。
「読み聞かせをしてもらう」ことに慣れているのです。保育士さんたちのおかげで絵本を楽しむ姿勢が出来ています。ここでいう「姿勢」は、背筋を伸ばして、静かに…みたいなことではなくて、物語に飛び込んで、絵本の中で笑って、泣いて、楽しむという気持ちです。4月の段階では、まだこの感覚をきちんと残して学校にやってきます。
また一方、慣れない学校に不安を抱えつつ頑張っている1年生にとっては、〇〇ちゃ~んなんて呼んでくれない、抱っこも、ナデナデもしてくれない先生は「今までと違うもの」であって、ちょっと緊張があるのです。
でも「絵本を読んでくれる」先生は、どこか既視感があり、ちょっと安心できるのだと思います。
このころ(幼稚園~1年生)の子どもたちは、構えなく絵本に飛び込んできます。この絵本の言いたいことは何なのか?何を学ぶべきなのか?など、特に考えることもありません。
これが年齢が上がってくると、また色々考え始めるのですね。だから、ご感想で頂いたように、この時期の「没入感」は、もう少し大きくなると得られないと思います。
あと、集団心理的なものあります。集団で聴いているから、みんなで声を出すから、という感情のうねりです。盛り上がりです。これも、ある程度大きくなると、ちょっとやそっとでは感じられなくなります。
1年生のはじめにクラスで読み聞かせをすることは、児童にとっても先生にとっても、とてもよい効果があるのではないかと思います。
この頃の気持ちを持続するために
構えなく飛び込んで、絵本に没入するこの時期の気持ちを、どうにかして年齢が上がっても持続することができないでしょうか?
「没入感」は、私が普段ワークショップをしていても大切にしていることです。没入することにより、本に書いてあることが「体験」としてより強く感じられると思うからです。
同じ方法ではまず無理です。人は成長していきます。気持ちも変わります。
では、どのような方法で、この没入を体験するか。
それは「ひとりで読書ができるようになること」です。
本の世界を自分の中で作り上げることができれば、全ての読書が体験として身になります。
ただ、これは、最終形態です。
様々なアプローチでここまで持っていくのが、親、教員、学校司書だったりするのだと思います。
読書で本の世界を体感することは、素晴らしい経験になります。みなさんの傍らに本がありますように。